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【映画】 月の満ち欠け

1年前だろうか、私は知人から勧めで偶然この佐藤正午さんの「月の満ち欠け」の原作本を読ませていただいていた。
「不思議な物語だなぁ」という感想を持ちながら読み終えたのだが、
その後そのことに触れることもなく、読書感想文を書くこともなく、私の中ではそこで終わっていたのだが、また別の知人から「おもしろい映画があるけど観てみたら」と勧められたのが、偶然にもあの時の小説が映画化されたこの「月の満ち欠け」だった。
この二つの偶然は何か意味があるのか、それとも単なる偶然が続いただけのことなのか、深く考えないまま映画を見始めたのだが…
ラストシーンでは、涙が自然に出る。その涙は悲しい涙なのか嬉しい涙なのかわからない不思議な涙であった。

あらすじは…
仕事も家庭も順調だった⼩⼭内堅(⼤泉洋)の⽇常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃との絵に描いたような幸せな生活だった。だが娘の瑠璃が7歳の時に原因不明の病になる。その病はすぐに回復するのだが、その後の瑠璃は少し変な言動をするようになる。大人しか知らないようなことを知っていたり、英語の歌を歌い出したり、ひとりで電車に乗って遠い街に出かけたりする。心配する母親をよそに瑠璃は順調に育っていくのだが、母親と瑠璃の乗る車が交通事故に巻き込まれて二人とも亡くなってしまう。愛する家族を一気に失ったことで小山内堅の生活は⼀変する。 実家の青森県八戸に戻った⼩⼭内のもとに、三⾓哲彦と名乗る男(⽬⿊蓮)が訪ねてくる。三角哲彦は、小山内の妻と娘が事故に遭ったその時、娘の瑠璃が面識のないはずの自分のところに会いに来ようとしていたことを小山内に告げた。
小山内は何のことかわからず動揺するが、三角哲彦は小山内の娘とは違う別の瑠璃という女性のことを語り始める。
そして、そこから長い長い時空を超えた愛の物語が始まる。

この物語には、3人の瑠璃という女性が登場する。
小山内の娘、瑠璃、大学生と不倫をしている女性、瑠璃、そして最後に登場するのが小山内の娘の瑠璃の高校生時代の親友であるユイの子供の瑠璃。
時代も年齢も設定もまったく違うのだが、彼女らに共通するものは…
3人の瑠璃の中に流れるその何か。
その何かは強い想いを持って切ない人生を歩いていく。


最後まで見ればその関係性はわかるが、人間は強い、けど弱い、そして切ない生き物だと思うだろう。
それがわかっていながらも人間はその道を歩いていくしかないのだ。
映画を見ながら私は思った。
私と繋がっているかもしれない前世の私と来世の私が、どこかで今ここにいる私をハラハラドキドキしながら見つめているかもしれない。
人間は皆誰かの生まれ変わり...なのだそうだ。

小山内瑠璃が親友ユイに高校の美術部の部室で、自分の心境を語る場面がある。そこで語られた言葉は…

人は命を繰り返すの。月が一度欠けてもまた満ちるように、また生まれ変わるの。ただ、ほとんどの人がそれを覚えていないだけ。満たされなかった強い思いを引きずっている人だけがそれ覚えているの。私みたいに。だからもしまた生まれ変わって、私が今の話を覚えていたら、その時はユイにサインを送るから受け止めて欲しい。

本編より一部抜粋

月は生まれて満月を迎え、また徐々に消えていく。
それは月が死んでしまうのではなく、また新月として新しく生まれる時でもある。
人間の人生、本当にそうだったら素敵なのに…ね。

私はこの世に文字一つ、爪の先1ミリも残さず死んでいきたいと常々思っていたのだが、この映画を観て少し変わった。
何か物語を残してやりたい。
それは自分のためということではなく、来世を生きる私のためにだ。


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