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何にでもなれる...、望むなら虫けらにでも

『THE LOBSTER』を観た。

デストピアな国のお話だ。

「独身は罪である」という思想の国家がある。市民は素直にそれに従っている。パートナーがいる人はごく普通に生活ができるが、独身者は犯罪者のごとく扱われる。
パートナーがいたとしても離婚したらその時点で独身者としての扱いになり、強制的に『ホテル』という名の施設に強制的に入れられる。
45日間、そこのルールに従って逃げ出すこともできずに生活しなければならない。そしてその45日間の間にその中でパートナーを見つけなければならないのだ。

もし見つけることができなければ…

動物に変えられ、その動物として生きていかなければならない。

主人公のデヴィッドは妻と離婚してこの施設に入所することになる。連れている犬も一緒だ。この犬は元々は兄である。兄もここに入所していたがパートナーが見つからず犬に変えられてしまった。その後デヴィッドが兄を飼っている。

入所する時に聞かれる。
「パートナーが見つからない場合、何の動物を希望しますか?」
主人公のデヴィッドは「ロブスター」と答える。

この物語は、喜劇なのか悲劇なのか…
ギリシャ神話には人間が動物に変わる話がよくある。それをモチーフにしてあるのかもしれないが、あまりにも自分がなさ過ぎる。独身者であることを悪いことと理解し、その果てに動物に変えられても仕方ないと認識している。まるで万引きのような軽犯罪で刑務所にやってきた囚人のようだ。

こんなこと間違っていると誰も言わない。

まぁ、自分の住む世界と比べること自体が間違っているのかもしれない。この日本だって世界から見れば変なところがたくさんあるのだろう。それを私たち日本人は当たり前のようにやってのけている。この映画は「あらっ、変な世界」と笑いながら見るのがちょうどいいのかもしれない。

自分だったらと思いながら観てもおもしろい。主人公のデビットはロブスターを希望するが、私なら何だろう...?本編の中では犬を希望する人が多いというセリフが出てくるが、やっぱり犬は人間に可愛がられているイメージがあるのだろうか。私はその反対に人間と関わりのない動物がいいなと思う。考えてみたがなかなか思いつかない。それだけ人間は動物をかなりの割合で支配しているということだろう。案外デビッドの言う「ロブスター」がそういう意味ではいいのかもしれないなと思う。

独身者は罪...そんな世界ならまだ虫けらにでもなった方がマシだ。

そう思って笑おう。




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