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過去10年の中国315特番で報道された外資企業たち(マニア向けかも)

昨日は2021年の中国中央テレビ局調査報道「315特番」について紹介しました。日本企業では日産がバッシングされていました。

実はほぼ毎年の特番で一つ以上の外国企業が取り上げられてきました。北京にいる身としては、中国企業についての調査報道も印象的なものが多いですが、中国に進出している海外企業は規模が大きい企業が多くインパクトが大きいです。

今日は315特番が過去10年間に報道した海外企業とその批判内容についてまとめたいと思います。まずは年度毎に取り上げられた企業を順々に紹介します。

■2020年、バーガーキングのハンバーガーが基準量より少ない食材使用をしてることや、賞味期限の塗り替えが報道されました。
■2019年、Siemensの保証修理で、トラブルの厳重度を水増やしたり、問題のない家電製品に架空の修理や高価な部品交換で修理代を稼いだと報道されました。
■2018年、フォルクスワーゲンのSUV車のギアボックスが不良設計により水が溜まる問題が、4S店ではお客さんの使用ミスとされていることが報道されました。
■2017年、ナイキがとあるスニーカーの宣伝でZoomAir付きと主張しましたが、実際にはZoomAirがないことが判明。中国の管理基準によって嘘の宣伝には3倍の賠償金を支払わなければならないですが、権利主張する消費者に対して、文章のミスで全額返金か割引券を渡すかしか対応してくれなかったと報道されました。
さらに、日本の食品の産地偽装も取り上げられました。2011年の震災から首都圏を含めいくつかの地域が福島原発の件で中国政府に輸入禁止の食品製造地域に指定されました。だがカルビーをはじめ、イオンや無印良品で取り扱っている食品の包装には、産地ではなく、販売元である東京などが表示され、違法輸入か産地偽造なのかに該当し問題と指摘されました。
■2016年には外資系はなかったです。
■2015年、日産、フォルクスワーゲン、ベンツなどの4S店舗で必要以上の修理や架空の修理が行われたと報道されました。また、ランドローバーの問題でバックギアの機能喪失が利用者のミスにされたことや、D&G、H&M、ZARA、ARMANIの製品から許可値以上のホルムアルデヒドが検出されたと報道されました。
■2014年、NikonのD600で撮った写真に黒い点がついていて、繰り返し修理に出しても解決できない。Nikonは空気汚染のせいにしましたが、アメリカでの対応は全く異なり、D600の問題機種は無償でD610に交換できると報道されました。
■2013年、アップルが中国で行う保証サービスが、アメリカなどでの基準とはダブルスタンダードで差別の疑惑があると報道されました。(中国の法律では保証期間中の故障で新品に交換した場合は保証期間がリセットされ再スタートするのでアップルの交換対応では理論的には保証期間が終わらない)。アップルは故障端末の裏側カバーだけを流用し交換ではなく修理扱いとしていたが、これが海外と比べ不公平と非難された。
■2012年、マクドナルドのある店では賞味保存期限が過ぎた食材の販売や、日付の塗り替え、床に落ちたミートを処理せずに使っていたことなどが報道されました。
■2011年には、外資系はなかったです。
■2010年には、LG、東芝、ソニーの液晶テレビの保証期間が中国の規定では大幅に短いこと。特に東芝のある機種が、液晶に重大問題が発生したにも関わらず、きちんと保証しないことがめちゃくちゃ叩かれました。

この東芝の件は相当叩かれて、日本のマスコミでも多く報道されていたと記憶しています。

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改めて当時の報道を調べてみましたが、2年ほど使えば画面にこのような線が出るケースが多発したようですね。中国の規定では3年間の保証が必要ですが、東芝は当時全体的に1年間の保証(メインパーツの3年間保証)を約束しましたが、液晶部分はメインパーツではなく修理には自腹になるという信じられない酷さ。テレビって液晶部分がメインでなかったら一体...

さらに、当時9980元前後で販売されていたテレビですが、修理するには9480元がかかるという理不尽さ。この件の影響で市場の東芝への不信感が急上昇し、業界関係者が「7〜8%だった市場シェアが5%未満になった」と分析しています。

中国に来てから何回もこの特番を見たことがあります。とにかく取材力がすごいです。強いて言えば盗撮にはなりますが、よくこんな映像とりましたね!というほどの内容がかなり入ってます。特に中国企業の部分については大手だけではなく、中小だと結構やばいところの映像もあったりしますので取材してる努力はリスペクトです。

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ちょうど昨日、この特番の潜入調査を担当した記者が顔伏せで取材を受けて、またその内容がWeiboのトレンド上位に上がりました。

中古車販売ウェブサービスの企業に潜入調査に行って、営業として入社したのですが、肝心の情報や撮りたいシーンがなかなか実現できなかったため、踏ん張って管理層までに出世し、十数人のチームを管理するようになったと。この展開、そして本職よりあまりにも給料が良かったということから、本業のリーダーから「もしかしてそのまま転職しちゃって戻って来ないかも...」と心配されたエピソードがありました。もはや常軌を逸してる力の入れようですね。

中国の視聴者が毎年期待してる番組ですが、中央テレビ局という中国で最も広告収入の高いテレビ局として、古株の広告主への忖度があるのではないかとの議論はずっとあります。

また、社会的には、この日だけのために動くではなく日常的に消費者の権利を守るために動いてもらいたいという声もありました。

賄賂や忖度により取材先や内容を変えているのではという噂や事実でないことも言っているなどの賛否はありますが、志を持って取材されている記者の方の頑張りはすごいと思います。また、普段闇に葬られている不正がジャスティスされることは社会にとって良いことだし、ここで報道されることは中国の社会問題を表していたりするので、時代と社会を見つめ直す素晴らしい機会だと思っています。

(参考資料)

https://baike.baidu.com/item/%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E5%B9%BF%E6%92%AD%E7%94%B5%E8%A7%86%E6%80%BB%E5%8F%B03%C2%B715%E6%99%9A%E4%BC%9A?fromtitle=3%C2%B715%E6%99%9A%E4%BC%9A&fromid=2432267


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