見出し画像

マイノリティ中のマジョリティ

話題になっている本は話題になってるだけあってやっぱり面白いですね。昨日買ったばかりの本のうち2冊夢中になって一気読みしてしまいました。そのうち1冊が今回の記事のテーマ、朝井リョウ『正欲』。

ここ数年『多様性』なんて言葉が気持ちよくSNSでも有名なドラマでもバラエティ番組でも使われていますが、本作はそこに痛烈な皮肉を投げ掛けます。
あらやだ、どこにでもある言葉しか思い浮かばない…

さて、ここでちょっと自分の話をします。長くなるので注意。

私は過保護かつ過干渉で自分の都合良いように動かなければヒステリックに怒鳴り散らす両親に育てられました。暴力を振るわれたわけではないけれど、毎日何かしら怒鳴られていたせいで大きな音は苦手だし人から叱られると萎縮して頭が真っ白になるし、今現在もとにかく生きづらくって仕方ない。一人暮らしなのに時々何かのきっかけで実家にいた頃のことが夢に出てくるし、頭の中をぐるぐるして時々腕をわざと机にぶつけてどうにか気持ちを落ち着けようと発散することもありました。

文にしている今この瞬間もちょっと動悸がするし、決して今自分のこの状況を受け入れられているわけじゃないけれど昔よりかはまとまって頭を整理できるようになった気がします。まだ冷静に話ができる父親の方とはたまに連絡を取り合い、上っ面とはいえそこそこ仲良く接していますが、母の方とは顔を合わせることもできずにいます。母のことが怖いというよりかは過去の怒りをぶつけてうっかり暴力を振るってしまわないか怖いからです。

最近この手の話題を匿名で投稿して発散することが時々ありますが大抵「苦労されましたね」とか「一度カウンセリングを受けられてみては」等の労りの言葉を貰います。家族と仲が悪かった時期なんて一度もなくて私のこの感情が全く理解できない人もいるのかもしれませんが、身近な心を許せる人何人かに打ち明けてみると似た悩みを持つ人は結構多いことに気が付きました。

以上のことを踏まえると私のこの過去のトラウマは「あなたの気持ちはわかるよ」「実は私も一緒だよ」と世間の全員ではないにしても受け入れてもらえるコンプレックスということになります。つまりは本作で言うところの「マイノリティ中のマジョリティ」
受け入れてもらえるから解決できるのか、と言われれば勿論そうではないですが理解しようと手を差し伸べくれる誰かがいることは私にとって拠り所にはなっています。

マイノリティをテーマにしたドラマやYouTube動画、SNSでの投稿はここ数年絶賛され、いわば『多様性ブーム』と言える状況となっています。私もこのブームに乗っかって『毒親育ちで上手く社会を生きられない弱者』を演じているだけなんじゃないか、と時々思うことはあります。
正直に言ってしまうとSNSで『多様性』って言葉が溢れ出してから、自分のこのコンプレックスを人に打ち明けるようになったのも事実です。

『多様性』ってなんて気持ちの良い言葉なんでしょう。自分のことを受け入れられてもらうためには人のことも受け入れよう。トランスジェンダー、メンズメイク、自分はどんなものだって受け入れる。最近のSNSの影響で盛り上がったそんな浅はかな考えを「くそくらえ」と本作からぶつけられます。
恐らく異質なものとして見られる憤りと自身が蔑視してきた何かからの攻撃、そのどちらも受けてしまったのでしょう。

ぐだぐだ駄文を書き連ねたけれど、そもそもこの作品のテーマは‘性欲’なので論点はずれているのかもしれない。でも自分に当てはめて本作を捉えた時、同性愛者のくせに彼氏が1度たりともできたことがない事より、そもそも人間不信の原因になった家庭環境のことでした。

『多様性』への価値観が変わったところで私ができることって特になんにもないし、相変わらず周りの同情に縋ってだらだら日常を送るのかもしれない。でもせめて「私は何もかも受け入れます。だから私のことも受け入れて」なんて偉ぶらず一つ一つ物事をちょっとでも慎重に捉えられるようになれたらいいのかな、と思いました。

話を大きくして結局小さなところにまとまってしまったな…。
また買ったばかりの他の本の感想も記事にしていこうと思います。それでは、また。

追記:今までで1番長く、そして感情の赴くまま書き連ねちゃったから誤字は多いわ文おかしいわで公開後に編集しまくってます…。なんでちゃんと整理してから公開する癖がつかないんだろう(泣)

この記事が参加している募集

読書感想文

わたしの本棚

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?