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私の自由を守りたい

幼い頃、将来は国家公務員か銀行員になるようにと言われるたびに、私はデザイナーになるのと答えていた。

デザイナーとはどんな仕事なのかも知らずに。

ただ、チラシの裏に絵を描きながら、きっとそれは私のアイディアや描きたいことを表現できる自由な世界のような気がしていた。


北海道の片隅にある町では、当時東京のことなんて外国のことと同じと捉えている人も多く、東京の大学に入ることよりも地元の有名進学高校に入ることの方が信用があり、その方が大人たちのプライドを満足させた。
そしてそこからそのまま地元で銀行に入るか、国家公務員として省庁に入ればそこではエリートだった。でも私はその高校を卒業後去った。

そんなことは遥か遥か昔の話。

あれから数十年。
紆余曲折し過ぎて、茨の道を血だらけで進む日々もあれば、足枷に大きな鉄球つけて進む日々もあれば、のたうちまわりながら進む日々もあったし、泥の中を這うように進む日々もあった。
羽根のように風に乗ってふんわりスイスイ進む日々は来なかった。

でも結局どんな形でも進んできた結果、今は極めて穏やかな凪のような日々を過ごしている。

そして結果的に、5歳の私が予言した通り今はデザイナー的仕事をしている。
たくさん世の中を見て、色々な仕事もして、色々経験して選択肢も増えたはずなのに。
もしやり直せるとしたなら、国家公務員への道を選んだだろうか。
その道にもまた違う苦労がたくさんあるだろう。まずなれるかどうかからも。
でもその道に入れば、安定した収入と保証、それなりの権威もある。

それでもやっぱり、というか絶対、私はそちらへは行かなかっただろうな。

賢い選択は私には似合わない。
面白いことを、バカみたいなことを仕事化できたら。
絶対必要じゃないとしても、あったら心豊かになれるようなものを作れたら。
そしてそれで喜んでもらえたら。

それが私の幸せであり、それを仕事として成り立たせていきたいのだ。

役職も権力も羨望もいらない。
ただ私の自由を守りたい。

世のためじゃない、そんなわがままな理由で生ききりたい。


#エッセイ #私の仕事 #自由

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