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長谷川晶一「詰むや、詰まざるや」を読んだ。そして、思い出した野球部の時の話。

さっと読めました。

2020年発行


本の内容

1992年と1993年の、ヤクルトスワローズ対西武ライオンズの日本シリーズを、出場した選手、首脳陣へのインタビューと共に回顧した本。

1992年は西武が4勝、ヤクルトが3勝で西武が日本一に輝いた。
1993年は、逆にヤクルトが4勝、西武が3勝。ヤクルトが雪辱を果たし日本一に。

西武の主力は、投手陣が郭泰源、石井丈、工藤、渡辺久、鹿取、杉山、潮崎など。打線は秋山・清原が中心。周りを固めるのは、石毛、平野謙、辻、それに92年はデストラーデがいた。そして、不動のキャッチャー伊東勤。

監督は、森祗晶。巨人の正捕手としてV9を支え、指導者となってからも日本シリーズ経験が豊富で、なんと日本シリーズを制した回数は20回(!)

対するヤクルトは、成熟期を迎えていた西武との比較では、若いチームだった。
主力としては、投手陣は岡林、川崎憲次郎、荒木、西村、伊東、そして高津。打線は、広沢・池山が中心。周りを固めたのが、ハウエル、荒井、飯田、橋上など。そして、キャッチャー・古田は、打線の中核でもあった。

そして監督はID野球をヤクルトに叩き込みチームを改革した名将・野村克也。

西武の森、ヤクルトの野村、共に選手時代は名捕手だったため、両チームの不動のキャッチャー、西武・伊東、ヤクルト・古田の「代理戦争」とも報じられたという。

本の構成は、まず、1992年と1993年のスコアボード付きの結果が冒頭に掲載されている。つづいて、1992年のシリーズ前の様子、そして、第1戦から第7戦まで順に、選手やコーチ・監督の回顧の言葉を挿みながら熱戦の模様が再現されていく。
1993年も、順に第1戦から同じ形で再現されていく。

そして、最後には、選手、コーチ・監督に対するインタビューが掲載されており、2020年から振り返っての二年間の熱戦についてのそれぞれの想いが語られる。
この部分で、筆者が問いかける、「ヤクルトと西武、どっちが強かったのか、決着はついたのでしょうか?」という質問に対する回答が、各人各様で興味深かった。


印象深かった部分

つい最近、野村監督の本(「オレと、O・N」)を読んだばかりということもあるが、野村さんの洞察力が伝わってきたエピソードが印象深かった。

ひとつは、1993年の第4戦の試合前、野村監督がセンターからホームに吹き付ける強風に気付き、キャッチャーの古田に対し、「フォローの風のときは、ボール一個分高めに構えろ。」と指示する場面。
先発の川崎憲次郎の球威、そして強風という要素を足し合わせれば、打った球はフライとなり、オーバーフェンスはないだろう、という読みだった。

試合の結果は、1対0でヤクルトが川崎と高津の完封リレーで勝利。

この試合、両チームとも本塁打は出なかった。
キャッチャー出身で、それに加えて視野の広い野村監督の凄みを感じた。

また、続く第6戦、西武・秋山に先制の満塁本塁打を打たれたシーン。
野村監督が「完全にバッテリーのミスだよ。」と総括する言葉にも、なるほど、と膝を打った。引用すると、

「完全にバッテリーのミスだよ。1球目の失投が何も生かされていない。一流の投手ならば、”どうして真ん中にいったのだろう?”と考えてステップや腕の振りなどを修正するものなのに、西村は何も考えていなかった。古田もしっかりとアウトコースのボールゾーンに構えてサインを出すべきだった。ピッチャーに対する親切心が足りなかった。打たれるべくして打たれたホームランですよ。」

274pより引用


西武のエースだった渡辺久信は、のちにヤクルトにも在籍した。森祗晶、野村克也両監督の元でプレーしており、野村監督について、「しっかりと言葉で納得させてくれる監督でした。」と語っている。

確かに、野村さんの本を読んでも、非常に理解しやすい言葉で書かれていると思った。野球を深く理解しているのはもちろんだが、伝える相手のレベルに合わせて、相手が理解できる言葉を使うことができる人なのだろう。

人間を深く理解し、また、言葉の名手でもあるのだろう、と思った。


自分は1992-1993年当時は、巨人ファンでした。

それでもこの本は面白かった。ヤクルトファン、西武ファンにはより楽しめる本なのでは?


ふと思い出した、野球部の時の話。

この本を読んだあと、ふと思い出したのですが、自分は小学校から中学校まで少年野球をやっていたのですが、中学一年までは真面目に野球に取り組んでいました。

ただ、中学二年になったときに、指導者(野球部の顧問)が変わったというか、いなくなってしまいました。

正確には、新しい顧問の先生はいたのですが、まったく野球のことが分からなかったようで、練習は部員の主体性に任されました。

その結果、練習に緊張感がなくなり、かなりだれてしまったことを覚えています。(まあ、しょせん弱小野球部なので、当時は「楽になった。」ぐらいに考えていました・・。)

プロ野球と弱小野球部を比較してもしょうがないのですが、指導者って大事だよな・・と当たり前のことを思いました・・。


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