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③AUD:USCPA学習アドバイス (追加コンテンツ:まとめ表)

こんにちは。べえたです。

前回の記事では、USCPA(米国公認会計士)の科目のうち、FARに関する学習上のアドバイスを書きました。

今回は、AUDの学習法について、お話ししたいと思います。


AUDの特徴

試験制度の概要説明記事で書いた通り、AUDは理論系の科目であり、英語力が問われる科目です。

AUDでは、企業が作成した財務諸表の内容の正確性を検証する、監査・証明業務を学習します。

試験範囲はFARよりも狭く、学習時間も短いとされていますが、日本の受験生の方にとっては、最も合格率が低く、最難関の科目と言われることも多い科目です。
他の科目は1回で合格する受験生の方であっても、AUDだけは何度も受験するというケース珍しくありません。
このため、適切な学習戦略を立てることが非常に重要です。

AUDが難関科目とされる理由

ではなぜ、日本の受験生にとってAUDが最難関とされる科目なのでしょうか。

私が考える理由は、以下の3つです。

(1)FARよりも受験者層のレベルが高い

FARとAUDの合格率を比較すると、以下の表のようになります。

【2022年 USCPA各科目合格率】

これを見ると、2つの科目の合格率は大差なく、むしろFARの方が合格率が低く出ています。

しかしながら、FARは1科目目に受験することが多く、AUDは2科目目以降の受験生が多いとされています。

このため、母集団の中のFAR合格者が占める割合が高く、同水準の合格率であっても、合格の難易度が上がっている可能性があります。

ネット上のAUDの受験後の感想には、「手ごたえは悪くなかったが、不合格になってしまった」との声も多いですが、これは母集団のレベルが高く、合格点までに求められる正答率が高くなっていることが背景ではないでしょうか。

このため、FARと比較しても学習の完成度を高め、高い正答率を得ることが必要と考えられます。

(2)数値での検証ができない

FARとAUDの大きな違いとして、解答が数値化されていないことが挙げられます。

FARでMCを解く際には、自分の計算結果と選択肢の数値を照合し、答えの検証をすることができましたが、AUDでは、選択肢が文章であることが多いため、自分の解答を検証することが困難です。
この点は、受験生の大半を占める英語ネイティブとの比較でも、日本の受験生にとって、大きなデメリットとなります。

このため、学習を通じて、監査業務の判断基準を自分の中で持つことを心掛けることが重要です。

(3)勉強量だけでカバーするのが難しい

上記(1)・(2)とも関連するのですが、AUDは勉強量だけでスコアを伸ばすことが極めて難しい科目です。

AUDは、FARの論点に基づいて作成された財務諸表の信頼性を検証する、監査・証明業務を学ぶ科目であり、FARとは求められる力が異なることを意識する必要があります。

前回のFARの記事で、FARの学習イメージについて、
「真っ白の壁に何度も薄くペンキを塗り重ね、最終的に全体に色を塗る作業を行う形」
とお話ししました。

これと対比する形でAUDの学習イメージについてお話しすると、
「ペンキが塗られた壁を見て、塗り漏れ・塗り残しの部分を指摘する形」というイメージが近いと思います。

このため、全体の構造や各論点の内容に関する理解があやふやな部分を残していると、いくら学習量を増やしても、必要な知識が身についていないリスクが生じます。

AUDに関しては、何度も不合格になった際、演習量を増やすために洋書での学習を追加する受験生もいますが、まずは与えられたテキストの理解を深めることが重要です。


以上が、AUDが難関科目とされる理由です。
次に、AUDを学習する上での具体的な対策法について、お話しします。

論点を分類する

まず、AUD学習上のポイントとしてお伝えしたいのは、AUDは論点が2種類に分類されるということです。

AUDは理論系の科目と言いましたが、全ての論点が理論系というわけではなく、暗記系と理論系の論点が存在しています。各論点には特徴があり、その特徴に応じた勉強法を意識する必要があります。

(1)暗記系の論点

AUDの中の暗記系の論点は、以下のようなものがあります。

  • レポートの報告形式

  • 会計士の職業的責任

  • 監査に関わるIT

  • サンプリング

これらの論点は、知識を知ってさえいれば答えられる問題が多く、暗記に力を入れることで、スコアに繋がりやすい論点です。
そのため、これらの論点については、得点源にしたいところです。

例えば、レポートの報告形式について言えば、まず、非上場会社の無修正意見(Unmodified opinion)のレポートについて、各段落の大まかな内容とキーワードを暗記します。
その上で、他の形式のレポート(Qualified opinion、Adverse opinionなど)の場合は、どのポイントがどのように書き換えられるのかを添削できるようになるまで、知識を抑えるというのが、暗記系の論点の学習のイメージです。

また、他の科目にも言えることですが、暗記系の論点は、受験直前期により時間を手厚く確保する方が効率良く学習ができます。
理論系の論点は、一度理解してしまえば忘れにくいですが、暗記系の論点は、記憶が抜けないうちに受験することが重要であるため、直前期は暗記系の論点のMCを追加で回転することもおすすめです。

(2)理論系の論点

AUDの理論系の論点については、以下のようなものがあります。

  • 内部統制

  • 実証性テスト

これらの論点は、AUDの主たる試験範囲であり、出題に占める割合も高くなっています。
これらの論点を抑える上で必要となるのは、問題を複数のステップに分けて解くという点です。

具体的には、

①問題で問われている内容が、監査手続きのどの工程に位置するかを確認
②その工程で検証が必要なポイントと問題文の情報を照らし合わせる
③各選択肢を読み込み、選択肢間の優劣を判断する

と言ったプロセスを踏んで解答を選択することになります。

キーワードがあったとしても、それに飛びつかず、必ず問題文と選択肢を全て読み込み、思い込みが無いかをチェックすることが重要です。

こういったプロセスで問題を解くため、理論系の問題で稼いだ時間を理論系の問題に充当するというのが、AUD受験の戦略となります。

暗記で戦える範囲を広げる

上記のように論点を整理すると、やはりスコアが安定して伸ばしやすいのは、暗記系の論点であるということが、ご理解いただけるかと思います。

そこで、暗記系の学習法で戦える論点の範囲を増やすことが、受験戦略上非常に有効です。

そのために活用できるのが、AUDの論点を複合的に整理したまとめ表です。
まとめ表を作ることで、AUDの各論点を構造化することができ、暗記系の論点として学習できる範囲を広げられます

これにより、スコアが安定しやすくなり、AUDの合格の可能性を高めることができます。

ただ、これを一から作るのは、かなりの労力がかかりますので、希望される方向けに、私が作成したまとめ表を記事の最後で紹介しています。
ご興味のある方はぜひ最後までご覧いただけると幸いです。

「不正解の理由」を説明する力を身につける

前述のとおり、AUDでは、数値で選択肢を検証することができません。

このため、問題集の正答率は上がってきても、初めて解くRQの正答率が上がりづらいと感じる受験生もいらっしゃるようです。

AUDでは、Most likelyな選択肢を選べという問題が出題されることがあります。
このような問題では、どの選択肢を選んでも、「何もしないよりは良い」と言えてしまうため、結果的に解答に迷うケースがあります。

このような問題が出題されるAUDは「正解の選択肢を見つける力」よりも、「不正解の選択肢を見つける力」の方が再現性が高いということを意識する必要があります。

普段の勉強でも、正解した問題であっても、解答解説を必ず参照し、正解の選択肢以外を外した理由が解説を一致しているかを必ず確認するようにしてください。

こういった質の高い学習を行うことで、自分の中に監査の基準を持つことが、合格への近道になります。

まとめ

今回は、AUDの勉強法についてお話ししました。
USCPAで最難関と言われる科目であり、新制度への移行後はさらに論点が増え、難易度が上昇しています。
しかしながら、適切な学習法を知り、量よりも質に重点を置いた学習を行うことで、効率的に合格を目指せる科目でもありますので、この記事を参考に、学習を続けていただけると幸いです。

次回は、暗記系の科目であるREGについてご説明したいと思います。

【追加コンテンツ】AUDまとめ表

AUDの合格率を高める戦略として、以下の2点をお話ししました。

  • 全体の中での論点の位置づけを構造化する

  • 暗記で戦える範囲を広げる

これらの点を同時に実現するツールとして、まとめ表を活用するのが、AUD攻略のポイントとなります。

以下の部分で、私が受験生時代に作ったまとめ表を提供しますので、ご興味のある方は、ぜひご利用いただけると幸いです。

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