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酵母(イースト)について【ビール用語辞典】麦汁をビールにしてくれる!クラフトビールがより楽しくなるコアな知識

今回は酵母(イースト)について!!

前回までモルトについてお話していきました。今回はそのモルトからできた麦汁をビールに変えてくれる”酵母(イースト)”についてのお話しです!
モルトについては過去記事をどうぞ!

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発酵の仕組み

発酵とは麦汁の糖分が酵母により二酸化炭素とエチルアルコールに分解される生科学反応のことです。酵母は糖分しか利用できないため麦汁のデンプンをアミラーゼ(酵素)により糖に分解する必要があります。
発酵をもたらす酵母にはエール酵母(上面発酵酵母)とラガー酵母(下面発酵酵母)があります。

・エール酵母(上面発酵酵母)・・・エールビールを作るときに使う酵母。18℃~24℃という高い温度でアルコール発酵を行い、発酵が収まると麦汁の液面に集まる性質があります。

・ラガー酵母(下面発酵酵母)・・・アルコール発酵に適した温度は10℃以下と低く0℃付近の低温でもゆっくりと発酵を続けることができ、発酵が収まると麦汁の底の方に集まる性質があります。

”酵母”と”酵素”って何が違うの?

酵母・・・生物で餌を食べ、呼吸も行い、排泄もすれば分裂して増殖、生殖も行うことができます。

酵素・・・生物ではなく人間を含む生き物が、体内で作ることができる物。食べ物の消化や栄養の吸収、代謝を良くする等、生き物が生きるうえでとても大事なものです。

ドライイーストの使用方法

①開封するハサミとイーストが入ってる袋のアルコール消毒したうえで開封
②麦汁の液面全体に振りかける
 ↳・なるべく塊をほぐしてから入れる
  ・イースト同士が重ならないようにすべてのイーストが液面に触れているのが理想
③発酵タンクの触れた部分全てをアルコール消毒をし閉める

ドライイーストの保管方法

・空気に触れると先に活性してしまうため急激に活性が低下してしまいます。
・開封後は真空後4℃以下(冷凍庫)での乾燥した場所で保管します。

酵母の再利用

一度使った酵母でも汚染されていないなどの条件が整えば複数回(3~4回目が活性が高い)にわたって再利用することが可能です。
8回目程度で破棄するのが理想です。
※ただし、糖度は比重1.070まで。それ以上は酵母にストレスがかかるとされている。

・ドライホップ無し
 ・Cold Crash
  ・24~72時間の間に回収→72時間以降は酵母にストレスがかかる。

・ドライホップ有り
 ・ドライホップ前に(ソフトクラッシュ)14~15℃程度まで下げて24時間後に回収する。

・CO2で加圧されるので容器ギリギリまで酵母を詰めない。

加水活性って必要なの?

・加水活性とは麦汁投入前に酵母を乾燥状から液状に戻す工程酵母のことで酵母細胞膜が、ゲルから液晶層に復元されます。

ドライイーストは、イーストが乾燥しているため高比重の麦汁にそのまま投入するとストレス(浸透圧)が多く掛かってしまいます。

ウォート(ビールになる前の液体)には糖分が豊富に溶けていて、イーストの細胞内にある液体よりも比重が大きいため細胞膜がイーストの周りを覆っていないと細胞膜にストレスが掛かりすぎてしまいます。きちんとした細胞膜ができていないと、イーストによってビールに悪影響を及ぼします。


加水活性はこの工程をまずイーストを比重の大きいウォートに入れる前に少量で行ったほうがストレスが掛からないということです。

メリットとして
・復水することで酵母を液状に戻すシンプルな工程です。
・酵母への浸透圧ストレスを軽減できます。

しかしながら比重1.070以下のビールに関しては上記したようなストレスが掛かりにくいため加水活性を行う必要はありません。
むしろ加水活性の際に汚染などのリスクが非常に高いため多くのドライイースト製造会社は加水活性をしないことを推奨しています。
ただし上記した高比重ビールに加え、
・ラガー酵母
・ボトルコンディション(瓶内二次発酵)
の場合は加水活性は有効です。
※イースト製造会社によってかわります。

デメリットとして

エアレーション

投入されたイーストはまず細胞膜を強固にする動きを見せます。ステロールなどを作るのですがそこに必要なのが【酸素】です。そのためウォートに酵母を投入する前に酸素を溶け込ませる作業を行うことが多いです。このことをエアレーションと言います。
ただし近年のドライイーストにはドライイースト自体に豊富な栄養素と必要な酸素となる成分が含まれているため必須ではないといわれています。
むしろ新鮮ではない酸素を投入するのは発酵不良や麦汁の汚染につながるので基本的には実施しないのが無難です。
※イースト製造会社によって扱いは異なります。

酵母由来のフレーバー

ビールを口の中に入れたときに感じる香りや味わいのことをフレーバーと呼ばれます。
フレーバーの良し悪しはビアスタイルによって変わってきます。

・アセトアルデヒド・・・未熟りんご、刈草、アボカドなどに似た臭いを持ちます。脱炭酸酵素によってピルビン酸から作られ、一部はエタノールの生成に使われるが酵素の外にも排出されます。発酵タンクの圧力が高すぎると酵母の外に排出される量が多くなります。古くなった酵母や不健康な酵母も酵母の外に大量に排出されます。

・ダイアセチル・・・バターやバタースコッチの様な臭いを特徴とします。ピルビン酸とアセトアルデヒドが酵素によって合体しα‐アセトラクテートができます。α‐アセトラクテートは新しい細胞組織の材料となるバリンの生成に用いられますがその余りは酵母の外に排出され、発酵液のpH4.5以下で14℃以上の時に酸化(水素と二酸化炭素)してダイアセチルとなります。

・エステル・・・ビールに含まれるエステルは100種以上検出されており甘味があり、バナナのような香り、フルーティーなフレーバー。

・高級アルコール類・・・果実香、芳香、花のような香り。酵母が発酵中に生成する。酵母のアミノ酸代謝(ロイシン)と関係し発酵温度が高い場合に多く生産するよう改変された酵母があります。

主な酵母の種類

・ケルシュ・・・ビアスタイルとしては【ケルシュ】に多く使われ、アロマは高温度帯発酵の場合だとフルーツ様エステルが強まり、低温度発酵の場合だとニュートラルに仕上がります。

・セゾン・・・ビアスタイルとしては【セゾン】に使われることが多く、シトラスやペッパーのようなアロマ、高温発酵に適しておりフルーツやスパイス、爽やかさが感じられます。
※クロスコンタミネーションを避けるため適切、確実なタンク洗浄を行ってください。

・ウィートエール・・・ビアスタイルとして【ヴァイツェン・ホワイト】に使われることが多いです。酵母投入量や発酵温度等の醸造工程、発酵条件の調整によってビールへのエステルやスパイス香の付与を加減することができます。

・アメリカンエール・・・ビアスタイルとしては、アメリカンエールだけではなくHazyIPAまで様々なビールに使用できます。適度に穏やかなエステルの上位香、トロピカルでフルーティーなアロマが感じられます。

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