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世界を渡る羽

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春真っ只中。しがない物書きの青年が一年ぶりに立ち寄った村では祝祭の準備が行われていた。そこにある一人の若い女ジプシーが訪れ、村人に占いをしてあげると言い出した。未完の作品である『… もっと読む
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『世界を渡る羽』断章弐 切り取り痕

『世界を渡る羽』断章弐 切り取り痕

 四月三十日。厚い雲が所々に散らばり、太陽が見え隠れしている朝。青年は起きて、洗面と朝食を軽く済ますと、宿を出て一目散に貸本屋へ向かった。そこには去年この村を訪れた際に置いてきた、自作の本があるはずだ。それが今どんな状態になっているのかを知るために調べに来たのだ。
 貸本屋の店主が言うには状態はかなり悪くなっているそうだ。「それも歴史の一頁、と思ってまだ置いてるんだが……」と店主の声。それだけ多く

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『世界を渡る羽』断章壱 占いの手ほどき

『世界を渡る羽』断章壱 占いの手ほどき

「おいで。占いの手ほどきをしてやろうじゃないか」そう言って、ファインはいつもの即席のテントの前で村の子ども達に占い道具を見せた。絵の書かれたカードの束、いろんな色をした綺麗に磨かれた石が十三個。それに大きな二重円の中に五芒星が描かれたマットが一枚。それだけである。子ども達は綺麗な石を見て、いいなぁほしいなぁと口々に言う。カードの束はどうやらただの紙切れに見えるそうで、あまり興味がないらしい。そうや

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『世界を渡る羽』第一章

『世界を渡る羽』第一章

 遊びをせんとや生まれけむ。どこかの国の本に書かれてあった言葉を、ふと思い出したのは、近くで子ども達が遊んでいたからだ。
 時は四月も終わり頃、二十九日の夕方のことである。
 青年は次の廃墟へ向かう道中で、とある村に立ち寄った。村の名前はチルノークと言い、村の中心には広い十字路があり、それに隣接するように広場や商店、宿屋などが集まっている。そしてそれらを囲うようにして、東西南北に向かって牧草地と畑

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