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入院中の食事…病人食と空腹

前に「フルーツバイキング」でも少し書いたけれど、入院中の食事は、

辛かった。


最初に見た時、冗談かと思った。

ご飯、味噌汁、野菜の煮物ほんの少し、小さな魚の切り身、フルーツ少し。

野菜の煮物も魚の切り身もふた口で食べてしまいそうな量しかない。それで520キロカロリーくらい✖️3

なぜ野菜までほんの少しなのか?

これで次の食事まで、どうしろと?

一般病棟に移って初日は我慢できた。何しろ3日以上口から食べてないのだから、お腹に何か入っただけで満足できた。


翌日から…空腹感との闘いが始まった。

ご飯は、そこそこ食べ応えのある量。

フルーツは「半量」オレンジ半分、バナナも半分。

それは我慢できたけど、おかずの量が、悲し過ぎる。

もともと、ご飯よりもおかずが好きなたちで。野菜は普段からたっぷり食べていたから、油を減らすのはわかるけど、肉より魚もわかるけど、全く満腹感の得られない食事に、参ってしまった。

味付けはごく標準的だったので、おかずが足りなくて、味噌汁にご飯を入れてふやかしたりもした。

あまりにお腹いっぱいにならなくて、茶碗の縁にこびりついた米粒も剥がして食べた。

食事の間に、お茶をたくさん飲んだ。(茶腹も一時ってこのこと!)

ゆっくり噛んで、少しずつ食べるのも試した。


どんなにゆっくり食べようとしても、会話のない一人の食事は15分かからない。

それに空腹で堪らないから、やはり食べ初めはガツガツしてしまう。

次の食事時間が待ち遠しくて待ち遠しくて、時計ばかり見ているくせに、食事を見るとガッカリし、食事が終わった直後から次の食事のことを考えていた。


妹が「ガムとかおしゃぶり昆布もダメなの?」と知恵をつけてくれたので、ドクターに聞いたけど

「ほんのわずかでも糖分は入っています。最近は糖質ゼロの飲み物なんかも出てるけど、そういうものに頼らない食生活を身につけて欲しいんです」

主治医はとてもソフトで紳士的なイケメンだったけど、ダメなものはダメだった。ついでにいろいろ質問したら

・のど飴は医学的にはあまり意味がないんですよ。喉が荒れてるなら少しずつ水分を摂った方がいい。

(でもコンサートホールで咳しそうな時はどうすれば…)

・糖尿病は長く長く付き合う病気だから、退院してからが本番です。一回カロリーオーバーしたからといって急に具合が悪くなる訳ではないけれど、継続して食事に気をつけて運動もしてコントロールしていきます。

(これから一生この「仏前のお供え」みたいな食事??)

・病院に居る間は、薬の効き具合を確認しながら調節してるので、出てくる食事以外は口にしないでくださいね。

(ソフトな口調だけど、ダメの念押し…)

毎日、水とお茶とコーヒーを買いに売店へ通うたび、棚のお菓子やゼリーやパンが「おいでおいで」してるようで、いつも何も見ないようにまっすぐレジへ向かった。


18:20夕食 21時消灯。

次の朝食まで13時間。

早く寝てしまうから、昼間うとうとしてしまうから、それだけでなく、空腹で目が覚めてお茶や水を飲んでしまうから、寝てもすぐに目が覚めてトイレも近くなる。

朝が遠かった。

体は治ろうとするために睡眠を必要としていたようで。だから消灯でストンと寝てしまうけれど、何度も何度も目が覚める。

食後のウォーキングを始めたら、ドンドン体調が良くなってきて、それは良いことだけど、いっそうお腹が空いた。


そんな生活が10日も続いた頃になって、胃が小さくなってきたのだろうか…いずれにせよ空腹はすぐにやってくるのだけど、食事ごとに満腹感は感じるようになっていた。


主治医がやってきて、唐突に「明後日退院できますよ」

えっと、3回目に変えた飲み薬の効き具合がイマイチだって2〜3日前に話してなかったっけ?それでまだまだ退院できないんだと思ってた。

その2〜3日の間に症状が安定していたらしい。

…まあ、いいことなんだろうな。唐突過ぎて家族が迎えに来られるかわからないけど。

それに、わたしが空腹と闘っていたにせよ、寝て起きてご飯食べてまた寝る、という安穏な生活を送ってた間に、世の中は新型コロナウイルスの蔓延で大騒ぎになっていた。怖かった。

毎食後30分のウォーキングも、家に帰れば毎食後は歩けないだろう。病人食を自分で再現して暮らすのは、相当な困難だろう。

突然、不満だらけの生活が親しいものに感じられ、外の荒波に漕ぎ出していく不安に駆られた。

慣れ、とは恐ろしいもの。


でもその夜、空腹でやはり目覚めた時

「退院しよう!」

と決めた。







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