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②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(2)VCMの方法論を探る

では前回の続き!
自然由来、技術由来や、排出削減、炭素除去など、温室効果ガスを減らすための方法は色々ある。
しかし、それぞれの方法は一律ではなく、同じ削減量(CO2-ton)でもクレジットの価値は大きく異なる。

<カーボンクレジット編>
②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(1)クレジット市場の概要
②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(2)VCMの方法論を探る
②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(3)VCM主要プレイヤーを知ろう

カーボンクレジット市場というと、どのプロジェクトでも取引されるクレジットの単価は同じように思うが、実際はプロジェクトにより10-100倍以上の違いがある。
なぜ、この違いが生まれるか?はこの記事の最後で説明する。

まずは、前回の「炭素回避・削減(Carbon Avoidance/Reduction)」「炭素除去・吸収(Carbon Removal)」×「自然ベース」・「技術ベース」に分けてそれぞれ紹介する。

(再掲)経済産業省「カーボン・クレジット・レポートの概要」より

説明のしやすさから、「自然ベース」の「排出削減」「炭素除去」を紹介し、その後に「技術ベース」について紹介する。

①自然ベース×排出削減の方法

REDD+

代表格は「REDD+」と呼ばれる森林減少や森林の劣化の回避の取り組みだ。
途上国が森林保全に取り組むことができる資金を先進国がサポートする国際的メカニズムである。

REDD+は、途上国における森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって温室効果ガス排出量を削減あるいは吸収量を増大させる努力にインセンティブを与える気候変動対策です。
森林減少・劣化が予想される途上国においてREDD+を実施し、排出削減・吸収増大を達成すれば、その成果(排出削減量・吸収増大量)はREDD+実施者の貢献分として評価されます。

JICAのREDD+紹介ページ

上記のJICAのページを要約すると、
REDD+の検討は、2005年に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)において、パプアニューギニアとコスタリカの共同提案をきっかけに検討が開始された。
両国の提案が多くの国で受け入れられ、2007年に気候変動対策の一つとして位置づけられる。
しかし、実際のルール作りが始まると議論は難航。それでも、2011年、COP16で枠組みの方向性が決まり、2013年のCOP19で基本的な枠組みが決まった。
一方、規制市場とは別に、ボランタリー市場でも最大手のVCS(Verra)などが推進。2011 年、ケニアのREDD+プロジェクトが世界で初めてVCS認証を受ける。

REDD+のプロジェクトは森林地帯に多い。例えばブラジルのアマゾンでも、水源が近く植生が豊かなところが対象となる。

REDD+含め、森林資源由来のクレジット(Forest Carbon)の大きなリスクは山火事(リバーサルリスクと呼ぶ)である。せっかく投資して森林を保全しても、山火事がおこればせっかく貯留したCO2は一気に排出されてしまう。
森林火災のリスクがあるため、プロジェクトではバッファープールを設けることになる。

しかし、このバッファープールが本当に適切なのか?疑問が呈されている。
たとえは、こちらのロイターの記事

上記の記事では、カリフォルニアでの分析結果をもとに、世界中の森林保全プロジェクトのカーボンクレジットについて見直しを求めるよう提言している。

元々、クレジットの一部は山火事、病気、害虫、または破産などのリスクを織り込んで作られている(上記のバッファープール)。そのバッファは少なくとも100年間の炭素貯蔵を元に作られている。
しかし記事によると、最近の山火事などにより、10年足らずでそのバッファの五分の一近くを使ったと指摘されている。

また、もう一つのポイントは、Leakage(リーケージ)である。
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②自然ベース×炭素除去の方法

自然ベースで、森林関係の方法は、排出削減に分類されるREDD+に加えて、以下の炭素除去に分類される、植林・再植林(ARR)、適切な森林管理(IFM)の3つが代表格だ。

植林・再植林(ARR)

ARRは、Afforestation, Reforestation, and Revegetationの略。それぞれ、植林、再植林、緑化を表す。

上記のREDD+は、既存の森林を保全する活動に対して、ARRは森林ではない場所に森林を作ったり、森としての機能を著しく失った土地の植生を大きく回復させる活動だ。そのため、新たにCO2吸収の機会を作ることから「炭素除去」に位置づけられる。

REDD+(森林保全)と異なり、土地が荒廃している地域が対象となる。アフリカ地域などに多い。

適切な森林管理(IFM)

IFMは、Improved Forest Management(改善された森林管理)の略。森の回復力を超えた過度な伐採を控えたり、保護林へ転換するなどして、適切な森林管理を行う活動だ。

上記のREDD+との違いは、REDD+が天然林の保護をするのに対し、IFMは既に産業用途の森林を保護する違いがある。

泥炭地・湿地修復(WRC)

WRCはwetland restoration and conservation(泥炭地・湿地の保全)の略。
湿地帯はそれ自体が、水資源、魚類や野生動物の生息地として、生物多様性の文脈からも非常に重要な役割を果たしているが、気候変動(温室効果ガスの削減)からも重要な役割を果たしている。

泥炭湿地と植物に覆われた沿岸湿地は、大きな炭素吸収源である。塩性湿地は毎年数百万~数千万トンもの炭素を固定する。泥炭地は陸地面積のわずか3%しか占めていないが、世界中の森林の2倍に匹敵する炭素を貯えている

一方で、淡水湿地は温室効果ガスであるメタンの最大の自然発生源であり、特に管理が不十分だと多くのメタンを排出する。(メタンの温室効果は二酸化炭素の28倍)

WRCはこの湿地の保護を行うプロジェクトだ。WRCのプロジェクトの特徴は、単位面積当たりの温室効果ガスの除去量が多いことだ。つまり、面積あたりのクレジット創出量が多い。

湿地帯の重要性については、ラムサールの2018年世界湿地概況(Global Wetland Outlook)が日本語訳もあり分かりやすい。

※ブルーカーボン

関連して、近年注目されている「ブルーカーボン」についても述べたい。
「ブルーカーボン」とは、海藻が作る藻場や湿地・干潟、マングローブ林のような海洋の沿岸生態系が吸収・貯留・隔離する炭素を意味する。海洋が吸収する炭素について、陸上の森林等が吸収、固定する炭素を意味するグリーンカーボンと区別する意味で、「ブルー」と呼ばれる。
特にマングローブ林は地球上でもっとも炭素濃度が高い生態系の一つである。

ブルーカーボンが注目される理由は、

  • 海洋は陸域よりも吸収量が多い。

  • 植物によって海底泥に貯留される炭素の量は、海洋全体が年間に貯留する量の8割近いとされる。

ブルーカーボンの取り組みでは、昨年3月に、商船三井はブルーカーボンのプロジェクトに参画している。

農地・耕作地管理(ALM)

最後は農地に関するもの。Agricultural Land Management(農地管理)の略。
世界の温室効果ガスの約10%が農業分野から排出されている。これには家畜業の排せつ物(糞尿など)から出るメタン排出に加え、水田からのメタン、土壌からの二酸化炭素や一酸化二窒素の排出が含まれる。

適切に土壌を管理することで、水田からのメタン抑制、不耕起栽培による土壌内の炭素量の増加、一酸化二窒素の排出低減などを行うプロジェクトがALMに該当する。

自然ベースの方法論の課題

技術ベースの方論に行く前に、自然ベースの方法論の課題について見ていきたい。
近年、自然由来のカーボンクレジットは各方法で。、過剰発行リスクがあるとの指摘が繰り返されている。カーボンクレジットの品質(Integrity)に疑問が呈されている。
そのため、各方法ともに、クレジット算定の方法論の見直しが起きている。

上で紹介した方法論の中からいくつか紹介したい。

■REDD+

REDD+はプロジェクト数も多く、大規模なプロジェクトが大きいため、批判の的になりやすい。
上記で上げた森林保全に対するカリフォルニア州の分析もその一つだ。

昨年、ガーディアン紙が「熱帯雨林起因のカーボンクレジットの90%以上は価値がない」という記事を出し衝撃を与えた。その後、あまりに極論だと反論も多いが、過大評価のリスクは指摘されている。

REDD+など森林保全の方法論のポイントは、「プロジェクトエリア自体が適切に保全されているか」「対象となるベースラインは妥当なのか」となる。

まさに現在、大きな方法論に大きな見直しが入っており、2025年には今とは大きく違った方法論になるのではとも言われている。

■IFM(適切な森林管理)
IFMも指摘が上がっている。例えば、今年の3月にFrontiersは現在のIFMプロジェクトは過大評価しているとの分析結果を公表した。

IFMの場合、プロジェクトが実施されなかった場合の伐採が進み森林が荒廃するシナリオなどをベースラインとするが、その伐採の根拠が、他よりも伐採が進んでいる一部の地域を元に見積もられるなど、アグレッシブなシナリオを用いているなどの批判がある。

■ALM(農地管理)
農地についても見直しが行われている。
先日、その一つがより信頼性の高い方法論としてVM0042が発表された。土壌中の炭素量のベースライン設定の測定に関する見直し。リスク評価の見直しなどが述べられている。

二酸化炭素は計測・定量化しやすいものとはいえ、自然を相手に、全世界の環境も状況も異なる場所の活動を公平に比較させる方法論を作るのは本当に難しい作業だと痛感する。
二酸化炭素でさえこれなので、近年話題になる「生物多様性クレジット(Biodiversity Credit)」の難しさは想像を絶する。

長くなってきたので、そろそろ技術ベースの方法に移ろう。

③技術ベース×排出削減の方法

再生可能エネルギー

技術ベースで排出削減の代表格は「再生可能エネルギー」のプロジェクトへのクレジットだ。

再エネは以前は規模も大きく、クレジットの量も多かったが、前回の記事で上げたように、近年は激減している。

では、なぜ再エネにクレジットがつかなくなっているのだろうか。
まず温室効果ガスの排出量を減らす全てのクレジットが得られるかというとそうではない。重要な原則に「追加性」の考えがある。

追加性とは、「クレジット収益が無ければ、プロジェクトの実施・継続が困難である場合に限りクレジット発行が認められる。」というものだ。つまり、通常の営利活動で成立する場合、普通にやっても収益が得られるならクレジットは得られない。

そもそもカーボンクレジットの生まれた背景には、現在の資本主義の枠組みでは、経済活動が優先され、温室効果ガスの削減が疎かになる。金銭的な支援をいれて、温室効果ガス削減に活動を支援するためのものだ。

昔は再エネプロジェクトもクレジットのような補助がなければ経済的に成り立たない時代もあった。しかし、近年、風力発電所や太陽光発電所のような大規模な再生可能エネルギープロジェクトの中には、炭素クレジットの販売による収益がなくても、生産的で収益性の高い運営が可能になっている。

つまり、上記の「追加性」を満たしておらず、クレジット収益はプロジェクト所有者のほぼ純粋な利益になるケースが増えてきた。

この環境変化を受けて、大手規格・標準化団体のVCS(Verra)やGS(Gold Standard)などは再エネプロジェクトへのクレジット発行を制限するようになった。
後発途上国(LDC)や紛争地帯、貧困層向けの再エネプロジェクトなど、限定的なプロジェクトのみに支援が行くように変更されている。

前回の記事より

こちらの記事にある通り、ボランタリークレジット市場の主要な基準機関のVerraのVerified Carbon Standard(VCS)とGold Standardは、2019年後半にほとんどの再生可能エネルギープロジェクトを禁止している。(例外は後発途上国(LDC)や紛争地帯、貧困層向けの再エネプロジェクトなど)

クックストーブ

途上国の生活で馴染みのあるプロジェクトは、調理用のクックストーブだろう。伝統的で非効率かつ大気汚染がもたらす竈(かまど)を、よりクリーンで効率的なストーブに置き換えるものだ。

前回の記事で、ブリケットの話をした。似たような文脈で、適切なかまどを使うことで、薪や木炭の利用効率を上げられる。二酸化炭素を減らすだけでなく、一酸化炭素中毒の被害も防げる。

調理用の炭(ブリケット)との違い
バイオ炭とブリケットの大きな違いは、バイオ炭は燃やさずに土壌に貯留することに対し、ブリケットは燃焼用に活用することだ。
ここ10年、アフリカではブリケットが大きな注目を浴びてきた。
アフリカ地域では、現在でも多くの過程で、木炭や薪が調理用の主要熱源となっている。特に、都市部の低所得者居住区では、電気を引いたり、ガスを購入するお金がなく、都市部のため薪も手に入らない人たちが、木炭を使っている。
農業残渣・食品残渣から作るブリケットは、森林資源を伐採して作る薪の代替になるだけでなく、燃焼時の二酸化炭素などの有害物質を抑える事ができるため、注目されてきた。

前回の記事

ただ、クックストーブは近年批判も多い。以下はインドの事例だ。
例えば、4割の人がロティなどの料理を作る際に、新しいストーブではなく、従来のストーブを使い続けたという。「Stove Stacking」と呼ばれる現象があったと紹介されている。

以下がクックストーブに関する主な課題である。

  • 使用方法: 新しいストーブが提供されたからと言って、意図したとおりに使用されたかは分からない。上記のロティの例のように、受給者が従来のストーブを使い続けた場合(その方が好きだから、あるいは新しいストーブが壊れたから等)には、予測される炭素削減量は実現されないリスクがある。

  • ストーブの寿命: 当初想定の期間が使われずに壊れてしまうものもある。

  • 需要過多:実施地域でストーブが普及し、正しく使用されていたとして、例えば、その地域の薪の需要が高い場合には、別の用途で薪が使用される可能性がある。そうなると、ストーブが普及しても薪は消費され続ける。

  • 測定と検証: 調理器具として一般家庭で使われるため、排出削減量を正確に測定することは非常に困難だ。使用する燃料の種類、使用量、ストーブの使用方法などで大きなばらつきがある。

記事で指摘されるように、研究室で理想的な環境、理想的な使い方をすれば温室効果ガスの大きな削減につながるが、各家庭で適切な使い方をするとは限らない。(料理がしやすい使い方と、温室効果ガス削減のための使い方は必ずしも一致しない。。)

④技術ベース×炭素除去の方法

バイオ炭もこの分類の入るのだが、より主流なのは、新しい技術を使い、大気中や空気中から二酸化炭素を除去する方法だ。
以下は代表例3つを紹介する。

CCUS(Carbon Capture, Utilization, and Storage)


この分野で最もよく聞かれるのがCCSやCCUSと呼ばれる方法だ。
最初の2文字(Carbon Capture)は二酸化炭素の回収を表し、後ろのつく2文字は、回収した炭素を、貯留(Storage)するか、活用(Ulitization)するかで呼び方が変わる。

Carbon Captureとは、発電所や工業プロセスから排出される高濃度の二酸化炭素を回収し、大気中に放出しないようにする技術だ。。

以下で示す大気中から回収するDACと比較して、石炭火力発電所の排ガスなど、既に高濃度な状態から二酸化炭素を回収するため、技術的なハードルもずっと低く、コストも低い。

BECCS(Bioenergy with Carbon Capture and Storage)

BECCSはCCUSの亜流だ。
大気中のCO2を吸収するバイオマス(植物や藻類)を育て、それを燃焼させてエネルギー(電気、熱、バイオ燃料)を作り、その際に排出されるCO2を回収・貯留する。

DAC(Direct Air Capture)

最も難易度が高いのがこちら。CCS/CCUSのように特定の排出源から回収するのではなく、周囲の空気から直接CO2を回収する技術だ。

CCUSでは、例えば、石炭火力発電所などでは、15%を超える高濃度な二酸化炭素が排出される。15%を超える排ガスからCO2を回収し高濃度に圧縮する。
一方、DACは大気中なので、0.04%(400pppm)程度とずっと低濃度な環境からCO2を回収することになる。当然、低濃度の成分を取得するには技術的なハードルが高まる。

※なぜDACが求められるのか?

ここで一つの疑問が湧く。
DACと比べCCUSは、技術的なハードルも低く、コストもずっと安い。なぜ、DACが求められているのだろうか?

いか、3つの理由を上げる。

  • CCUSは、発電所や工場など、高濃度なCO2を排出する施設でしか使えない場所の制限がある。一方DACはその性質上、一般の大気から低濃度かつ広範囲な排出源からもCO2を取り出すことができるので、地球上のどこでも利用可能だ。

  • 輸送の面も同じことが言える。DACでは、地中貯留地の近くなど、最も便利で費用対効果の高い場所に設置することが可能だ。一方、CCUS施設は、排出源の近くに設置する必要がある。

  • 最後に、CCUSは大気中のCO2濃度を直接低減するのではない。あくまでも、発電や工場で出てきた二酸化炭素の追加的な排出を防止するものである。一方、DACは大気のCO2を直接低減する技術だ。

これまで紹介してきた方法もそうだが、どれか一つの技術や方法で温室効果ガスを減らすのは難しい。色々な技術に投資して、どの方法も試しながら、その地域や特性に合った方法を選ぶことが大事になる。

さて、この3つの方法には、共通した課題がある。取り除いたCO2の扱い。つまりU(活用)とS(貯留)だ。

回収された二酸化炭素は、CCS/CCUS、BECCS、DACのどの方法でも基本的には同じだ。Utilization(活用)の例としては、石油の回収率向上や燃料、化学物質、建設資材の生産であり、Storage(貯留)は文字通り、地層に貯蔵したりする。

Utilization(活用)の課題は、需要が限られている点だ。
回収したCO2の使い道は限られている。確かに回収したCO2は、合成燃料、化学物質、建築材料の製造や石油増進回収など、さまざまなプロセスに利用することができると言われている。しかし、気候変動に影響を与えるほどの需要はない。

日本のCCUSは欧州やアメリカと比べて遅れたと言われている。欧米でCCUSの技術が発展した理由は、日本と違い使い道があったからだ。回収した高濃度のCO2を油田プラントに用いて、より多くの石油を回収する使い道が開発された。回収したCO2自体に使い道(需要)があったので、進んだと言われている。
一方、日本には油田はないので、使い道は限定されている。

次にStorage(貯留)については、3つ。

  • 一つの費用の問題。貯留地を作るには費用がかかる。

  • 次に場所の制限。すべての場所がCO2の地下貯留に適しているわけではない。CO2を安全かつ永続的に貯蔵できるには、特定の地質学的特徴が必要となる。

  • 最後に、貯蔵されたCO2が時間とともに大気中に漏れ出すリスクも懸念されている。

CCS/CCUSに比べてDACが不利な点はここにもある。
回収した二酸化炭素の使い道や貯留方法が豊富にあるならば問題ないが、現在需要は限られている。その中で、CCS/CCUSで回収できる二酸化炭素だけでも供給過多になる可能性がある。
CCS/CCUSと比べて、DACの技術的ハードルも高く、回収コストも高いとなると、DACが広く普及するには、二酸化炭素自体の需要(利用でも貯留でも)が増える必要がある。

バイオ炭

さて、前回から紹介しているバイオ炭も、この技術ベースの炭素貯留の分類に含まれる。
バイオ炭のカーボンクレジットについては、別途記事を書こうと思う。

方法によってクレジット価格の相場はバラバラ

色々な方法を紹介してきたが、これらのクレジット価格(一トンあたりの炭素価格)は、方法により全く違う。
例えば、バイオ炭は、現在、1トンあたり150-250ドル程度で売買されている。ただ、プロジェクトにより幅があり、長期契約では100ドル強。高いものでは500ドルを超えるものもある。

一方で、REDD+(森林保全)系は、5-20ドル程度だ。10-30倍もの違いがある。

以下、Abatableが2022年9月に出した記事のプロジェクト別の1CO2トンあたりの価格だ。

Carbon credits prices in the voluntary carbon market

なぜ、同じカーボンにも関らず、こんなに大きな開きがあるのか。
本記事も8000字を越えてきたので、その説明は次回の記事に譲りたい。

次回は、カーボンクレジットの値段の違いから入り、クレジット取引に関わるステークホルダーたちを紹介していきたい。

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シリーズ記事一覧
<バイオ炭について>
前編:①「バイオ炭」の可能性に迫る-前編(社会課題編)
中編:①「バイオ炭」の可能性に迫るー中編(農業と大気汚染編)
後編:①「バイオ炭」の可能性に迫るー後編(気候変動編)
<カーボンクレジット編>
②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(1)クレジット市場の概要
②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(2)VCMの方法論を探る
②バイオ炭の未来を握るカーボンクレジット-(3)VCM主要プレイヤーを知ろう





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