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”二番煎じ”だからと諦めていませんか?~無名の後発が世界を変える

※誤って記事が削除されたため、2020年9月18日の記事を再掲致します。

ウガンダで事業しているからか、
『こんなサービス・製品があったら売れますよね~!』

と言われることが多い。
特にアフリカへの渡航経験が少ない、滞在が短い外国人(日本人含む)がアフリカに来ると色々と気づくことがあるのだろう。

アフリカ大陸は他地域と比べて社会課題も多く(目立ち)、インフラも未熟で、先進国や他地域に当たり前に存在するサービスや製品が見当たらない事も多い。

こういう思い付きのアイデアの多くは、現地の事情を理解すると、イマイチだな~となるのだが、中にはニーズがあり収益を出せそうなアイデアもある。

ただ、これまで何千人が同じアイデアを口にしてきたのだろうか。
口に出しただけでなく、実際にトライした人は1%もいるのだろうか。
その勇気ある1%の開拓者だけでも、数十人はいるかもしれない。

『こんなサービス・製品があったら売れますよね~!』と言われた時、

『あ、それ面白いアイデアですね!既にxxxという似たようなサービスがあるんですよー!』と伝えると、
『あー、既にやっているところがいるんですねー。じゃあ、ダメですね~』という反応が返ってくる。

そうか、既に世に出ているアイデアだから、後追いだから難しい。と思っているのだろうか。

アイデアを実際に行動したとしても、適切なスキル、能力、資金を備えていなければ、カタチにはならない。
カタチになっても、試行錯誤を繰り返し、継続していなければ、世に浸透していない。

圧倒的な強者がいなければ、まだまだ諦める必要はないように思う。


では、既に圧倒的な強者がいて、既に巨人が独占、支配しているような状況では諦める方が無難なのか?

”パイオニアが圧倒的に有利”
”二番煎じが巻き返すのは困難”

という声をよく聞くが、そうなのだろうか?


これまで世界を変革した発明(イノベーション)の事例を集めてみると、
単純に開拓者(パイオニア)が優位を保って成功した事例は意外と少ない。

大きな変革であればあるほど、及ぼす影響が大きければ大きいほど、開拓者の優位性は黎明期に限られる。

後発のしかも、全く業界に存在しなかった弱者たちが主役に躍り出る話は多い。

コンテナが世界を変える

最近、『コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だった』という本を読んだ。

僕はウガンダで小さな宅配便の会社を起ち上げ経営している。
宅配会社の端くれとして、世界の物流の未来に思いをはせる事がある。
物流の未来を描くためには、過去の歴史から学ぼうと手に取った。

簡単に本書の紹介をしたい。

”コンテナ”という箱が、海上運送、陸上運送に限らず、世界中のサプライチェーン、製造業界、国家間の経済地理学、地政学まで塗り替えてしまった、壮大なノンフィクション物語である。

発明からたった60年で、世界の業界構造、地政学を大幅に変えてしまったコンテナ。

物流に携わらない人達にとって、日常的に目にする事もない。
なんてことはない、ただの大きな箱である。

その箱が、どうやって世界を激変させたのか?が描かれている。

本書はビルゲイツが2013年のベスト書籍の一つとして選んだ。


「20世紀後半、あるイノベーションが誕生し、全世界でビジネスのやり方を変えた。ソフトウェア産業の話ではない。それが起きたのは、海運業だ。おそらく大方の人があまり考えたことのないようなそのイノベーションは、あの輸送用のコンテナである。コンテナは、この夏私が読んだ最高におもしろい本『コンテナ物語』の主役を務めている。コンテナが世界を変えていく物語はじつに魅力的で、それだけでもこの本を読む十分な理由になる。そのうえこの本は、それと気づかないうちに、事業経営やイノベーションの役割についての固定観念に活を入れてくれるのである。」
ビルゲイツの推薦文

興味を持った方は、ぜひ一読をお薦めしたいが、ネタバレしない程度に本書の内容を紹介する。

本書は1950年代の原始的な物流現場から始まる。コンテナ以前は沖仲仕と呼ばれる港湾労働者が、直接船に小口荷物を積み下ろしていた。人手での積み下ろしは非効率で時間がかかるだけでなく、多人数を要する肉体労働であり、そのコストは大きかった。

そこに、トラック運送会社から身を起こしたマルコム・マクリーンは、”箱”を利用することで、トラック、鉄道、船によって一気通貫で荷物を運搬する方法を思いつき、船会社の経営に乗り出す。
前半はコンテナの生みの親、マクリーンの物語だ。

すぐに広まると思われたコンテナだが、中々広まらない。
誕生から10年を過ぎても、なかなか浸透しないコンテナだったが、徐々に海運業界に広まり、海運業界に大きな構造改革を巻き起こす。
その後、港湾や船会社だけでなく、トラック運送、鉄道運送に広がり、アメリカ合衆国から欧州、日本、アジアを経て世界中のスタンダードになる。
物流業界をガラッと変える変革を引き起こした。

だが、物語はここで終わらない。
物流業界の変革は序章に過ぎなかった。

コンテナ誕生から20-30年が過ぎると、コンテナの生みの親や開拓者、海運業界の想像を超えて、物流以外の業界にも変革を起こす。
当初は、船会社、港湾、港湾労働者という狭い海運業界での革命だった。
それでも海運業界が根底から覆るほどの影響を与えた。
この過程で、世界一だったニューヨーク港は消えて無くなり、主要港だったロンドンの港(ティルバリー)、マンチェスターの港も姿を消していった。

その後、世界中の無数の製造業者、卸売業、小売業がコンテナ輸送をベースにしたビジネスモデルの取り入れる。
以前は、自ら原料を調達し、部品を作り、完成品まで自社で一気通貫で製造していた。
シームレスな輸送手段が本格化すると、世界中で中間財が製造され、世界中で製造、消費するグローバルサプライチェーンが誕生した。

輸送船の大型化・高速化、港湾の機械化や自動化、鉄道・トラック・航空物流とのシームレスな輸送手段により、世界のモノの流れが大きく変わる。
その過程で、波に乗り、弱小国から世界有数の先進国に名乗り出た国もあれば、取り残され衰退した国もある。

シームレスなコンテナ輸送はグローバルサプライチェーンを生み出し、アウトソーシングを生み出す。
先進国の製造業は、人件費の安い国々へ移っていった。
ファストファッション、100均ショップ、100円寿司を始めとした安価な商品は、コンテナによる圧倒的に効率化された物流革命の賜物である。

とまぁ、こんな内容が書かれている。

パイオニア(開拓者)でなくとも諦める必要はない

コンテナ物語を読むと、コンテナの発明者、マルコム・マクリーンの偉大さが良く分かる。
彼が未来を見据えて、様々な障害や困難に立ち向かいながら10年以上もかけて、徐々に業界に浸透させていく。
マクリーンは身銭を切ってリスクをとり、コンテナを世界に広めていく。

同様に、黎明期にコンテナの先見性に目をつけた、巨額の港湾投資をしたオークランドを始めとした世界各地の市港湾局、コンテナ対応船に投資する船会社、鉄道会社が初期のコンテナのムーブメントを作っていく。

開拓者たちがリスクを取って、困難に立ち向かい、挑戦を続けていなければ、今のコンテナの世界は存在しない。

しかし、リスクを取った勇敢なヒーローたちが、成功しハッピーエンドを迎えているかというと、必ずしもそうではない。

コンテナ黎明期の開拓者たちが長期で成功しなかった理由は様々である。

■ 先行して、先に規格を作り推し進めてきたからこそ、その特許が足を引っ張り、標準規格から外されてしまったものや、
■ 政府を巻き込んで補助金を得て推進してきたからこそ、その枠組みの制限にハマってしまったもの、
■ オイルショックなどの予期せぬ市場変化の時に読み間違えて、巨額の投資を無駄にしてしまったもの、
■ グローバルサプライチェーンの変化で不運にも主要航路から外されてしまった無数の港湾。

本書では、勇気あるパイオニアたちが容赦なく敗れていく姿も描かれている。

一方で、初期には姿かたちもなかった後発組の活躍も描かれている。
むしろ、現代の物流は、この後発組が主に支えられている。

■ 黎明期に創業すらしていなかった海運業者が世界のトップ10に名を連ねる。
■ 当初は漁村でしかなかった港が世界有数の主要港になっている。
■ 中世から世界有数の港として栄え、戦後も欧州市場と共に発展した港が、欧州製造業衰退の中で一時は大きく衰退したものの、全く新しい付加価値を見出し、返り咲いた例も載っている。

”出遅れた!”といって諦める必要は全くない。
無名の後発だからこその強みがある。

最初にリスクを取って切り拓いてきた人達が敗れて、後から参入した人達が成功していく様は、何とも悲しくなる。

ただ、『パイオニア(開拓者)は割を食う。最初に始めるのはリスクだから、誰かが始めて失敗するのを待とう。』
といって、パイオニアになるのを避けるのは違うと思う。

パイオニアだから割を食っているわけではない。パイオニアというだけが有利に働かないようである。

ちなみに、僕個人は開拓者を尊敬する。
世の中を変えるきっかけを作ってくれるのは、開拓者たちだ。
誰も価値が分からない中で、己の道を信じて、リスクを取って茨の道を切り開いた。

自分が価値がある!と夢中になれる事があれば、周囲に理解されずとも、リスクを恐れずに始めるパイオニアであり続けたい。
ただ、コンテナ物語の教訓は、”パイオニアになれなかったら諦めるではない。”と言う事だと思う。


『ウガンダで宅配事業をしています。』と言うと、『ウガンダに宅配業はないのですか?』と聞かれる事がある。
もちろん、ウガンダでも大昔から宅配屋さんは存在する。
現地の老舗の宅配業者もあれば、外資系大手も参入している。

※ウガンダの宅配業界に興味のある方は、こちらもぜひ!
『ウガンダ宅配業界の大転換期に突入』


宅配サービスを始めた当初、老舗の宅配大手たちが寡占している状況だった。
そこにDHLやAramexという世界の巨人が国内配送に大型投資を始めた時期だった。


一方、僕は人材育成事業が上手くいかず、貯蓄はつきかけていた。都市間物流、域内物流に可能性を感じていたが、トラックを買う金など残っていない。
できる事から始めよう!と、中古のバイクを一台買って、知人のバイクタクシードライバーを雇うことから始めた。

4年経過した今でも、老舗大手、DHL、Aramexと比べれば数十分の一の弱小零細企業だが、
それでも、ウガンダ全国135県でリスクの高い現金代引宅配を提供できている宅配業者はCourieMateの1社のみである。

現金代引は、ドライバーが年収相当分を持ち帰るため、非常にリスクが高い。東南リスクもあれば横領リスクもある。
何度も失敗を繰り返し、その都度試行錯誤してリスクを低減したオペレーションを作り上げてきた。
こういう地道なノウハウの積み重ねは、大手が大規模な資金を投入したからといって真似できない。

話しがそれた。

繰り返しになるが、コンテナ物語の教訓は、”パイオニアではないからと諦める必要はない。”と言う事。
先発か後追いか、開拓者か二番煎じか、というよりも、時流の流れを読むことの方が大切だと気づかされる。

先発だろうが後発だろうが、都度大きな流れを読み、柔軟に合わせていく。大きな変化であればあるほど、流れは複雑だ。

さて、次の問いは『どうやって時流を読むの?』なのだが、
コンテナ物語を読むと、この答えのヒントがある。
次の記事で考えていきたい。

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