見出し画像

長寿を食い物にされぬよう

今更言うまでもない、我が国の高齢化。
生まれてくる命の数よりもお年寄りの数の方がはるかに多いという現状。

老いれば、多かれ少なかれ身体の不調は増え、それがなかなかすぐには、そして元のようには回復し得ないことも増えてくる。

そうすれば医療介入の機会も増え、医療費を圧迫しているというのも広く知れ渡っている事実だ。

そんな現状に対して、医療業界は単に治療、薬の開発だけでなくこんなことに乗り出しているようだ。
二つ記事を紹介したい。

***

薬事日報webより
◆製薬大手を筆頭に、予防医療に着目した事業構想がいよいよ具体化し始めている。アステラス製薬はゲーム会社と協業し、生活習慣病を予防する運動支援アプリを開発に着手している
◆武田薬品も民間保険会社や広告代理店など8社で形成した「湘南会議」で、メタボリック症候群の男性を対象に生活習慣病の予防を促すビジネスを構想。健康の改善に応じてゲームやアイドル等に関する特典が得られるイメージを想定し、4月からパイロット試験を行う。今後は、認知症の早期発見を目指した新規事業を模索する「第2期湘南会議」も控える
◆アルツハイマー病治療薬「アリセプト」で国内をリードしてきたエーザイも、自動車メーカーや小売業など異業種との協業により人工知能(AI)を用いたアプリケーションを開発し、予防医療に本格参入する
◆ビジネスとして予防から治療まで包括したいとの狙いも見えるが、薬価制度改革等により事業環境が厳しさを増す中、医療用医薬品に収益を依存することへの将来的な危機感も垣間見える。


健康促進は切り札か 医療費抑制の「甘い夢」 「2025年 超寿社会」「さまよう財政」
2019年3月12日 (火)
共同通信社
 元気に暮らすのに重要な「歩行年齢」を姿勢などから測る機器や、ミネラル豊富な歯磨き粉...。東京都内で2月に開かれた健康長寿産業展は、近年の健康ブームを一段と刺激しそうな商戦に沸いていた。「高齢化が進む日本は有望市場」と話すのは米国系食品大手の担当者だ。独自開発した大豆粉や甘味料を手に「世界に先駆けた新商品ですよ」と力を込めた。
 長寿社会で花開くヘルスケア産業を利用するのは、介護施設や高齢者らにとどまらない。生産性向上を急ぐ企業は、従業員らの健康診断データを解析するシステムを導入し始めている。
 オフィス機器大手の内田洋行(東京)の健康保険組合は2013年に採用。血糖値などから特定の指導が要る人を自動抽出でき、加入者7千人のうち109人の「ハイリスク者」の生活習慣の改善を重点支援して効果を上げた。保健師らの余力を生かし、慢性的な腰痛や若手社員の食事の改善にも手を広げている。
 「生き生きと働ける状態をつくることが企業がもうかる土台になる」と事務長の中家良夫(なかいえ・よしお)(64)。医療費負担の高止まりに悩む企業健保では、収支改善に向けた先行投資の意味合いも帯びる。
 経費圧縮の思惑を込め、健康促進の追求は国レベルでも進む。合言葉は「治療から、予防や健康管理へのシフト」。腹囲を調べる特定健診(メタボ健診)の実施率向上や糖尿病患者数の抑制といった目標達成に加え、先進技術を生かす予防医療の議論が政策の前面に出てきた。
 半面、健康づくりが財政再建の「切り札」になるとの説には異論が強い。首相、安倍晋三(64)が昨年「予防、健康にインセンティブ(動機づけ)を置くことで医療費が削減されていく方向もある」と、今後の社会保障改革に絡めて発言したことで論争に火が付いた。
 専門家の間では効果の一方、施策に伴う支出がかさむとの指摘が相次ぎ、日本福祉大名誉教授の二木立(にき・りゅう)(71)は「世界的に、むしろ医療費は増えたとの研究結果が定着している。そもそも予防医療は生活の質を上げるためのもので、費用抑制手段と考えるべきではない」と断じる。
 08年度に始まったメタボ健診は年2兆円の医療費削減効果がうたわれたが、検証した対象者の実績は1人年約6千円にすぎず、投じた予算を下回った。時の政権が再び「甘い夢」に浸る光景に、政府内では「超長寿社会に備えた財源確保という『苦い現実』からの逃避だ」と冷ややかな声も出ている。

***

一見すると、病気になる手前から手を打とうという前向きな姿勢、取り組みであると思われる。

でも、医療業界が次なるターゲットに、もうすでに病気である高齢者のみならず、もっと手前の状態の高齢者も取り込もうとする思惑が透けて見えるのは私だけだろうか。ターゲットの人数を単純に増やせば、介入による収益も上がるからだ。

思い出すのは、先の記事にも言及されていた、メタボリックシンドロームを世間に大々的に広めた数年前のこと。

こういう数値、体型の人がいわゆる生活習慣病になりやすいから、予備軍の人を早くから見つけて、進行していかぬよう健診も実施して、指導していこうという政策だった。

が、結局病気になる人はほんとうに減ったのだろうか。

より早期から血圧を下げたら、コレステロールを下げたら、とどんどんその正常と異常の境界値を下げ、薬の介入を増やしたに過ぎなかったのではないか。

もちろん、予防しようという視点は素晴らしいと思う。
けれども、例えばそれならばお金のかからぬ方法で、はっきり言って仕舞えば企業などが関わらぬ方法で予防しようとしてはどうだろうか。

予防をすることで対象となる高齢者だけがその恩恵を受ける、というようになればいい。対象者ではなく、それを推進した側や介入の技術を提供した側が恩恵を受けたのでは意味がないと思う。

本気で予防したいと思うならば、恐らくは「足す」より「引く」こと、「加える」より「やめる」こと、そういう視点も必要ではないだろうか。

安心して老いることができる世の中になるように...

#高齢化 #予防 #取り組み #薬剤師 #つぶやき #散文 #介入 #シェア

いつも読んでくださりありがとうございます。サポートしてくださると励みになります⭐︎