ラクガキ vol.7
私にとっては、魔法の文房具だった。
これを持つだけで、気分は勉強が凄くできる賢い子になれる。
こんな形をしていた、多分サクラクレパス社のシャープペンシル。
ノックする頭の部分にはカラーマーカーが付いていて、透明なキャップが付いている。
ボディカラーとカラーマーカーはいろんな種類があって、シンプルな作りになっていた。
今探しても、同じものは何処にも見つからない。廃番にでもなってしまったのだろう。何せ30年ちかく前のことなのだから。
何の変哲もないこのペン付きシャープペンシル。
実は受験勉強をしているときに、ほぼ常に学年一位をキープしていた友人が何本も持っていたシャープペンシルだったのだ。
その友人は勉強ができるだけでなく、努力家でもあり、人柄も良くいろんな人から慕われていた。
その友人が持っていたシャープペンシルだが、
私の家の近所のどの文具店に行っても売っておらず、見たこともなかった。
なぜかその友人の家の近くの文具店にだけはあったのだろう。
友人のように成績が抜群によくなりたい、あやかりたい私も含め数人が、友人に、「これと同じシャープペンシル買ってきて!私も欲しい!」と懇願したことを思い出す。
それから私の周りは、このシャープペンシルで勉強に勤しむこととなった。
結果その友人はトップクラスの学校に難なく合格した。
周りの友達は、どうだったか。
私は色んな運の巡り合わせも手伝って第一志望の学校に合格することができたが、シャープペンシルを熱望し、共にこのシャープペンシルで頑張った仲間たちは、勝つものも負けるものもいたように思う。
***
それからの人生、何も受験勉強に限らないが、事あるごとに私は文房具にモチベーションアップを手助けしてもらい、
気分を明るくしてもらってきた。
ただ、書ければいい。
使えればいい。
消すことができればいい。
最低限の機能さえついていたら事足りる。
でも文房具には、そういう基本装備以外の重要な役割というものがあるのではないか。
日々の暮らしにパッと明るさを添えたり、先の見えない不安に対して気持ちの持ちようを変えたり。
「何をするにもまずは形から。」
というのともまた違う。
これじゃなきゃダメだ、という心の大きな支え。
もう手元にはないあのシャープペンシル。
あの時と同じような気持ちにさせてくれるシャープペンシルには未だ出会えていない。
またもし会えたなら、あの頃の自分の不安な気持ち、勉強の辛かった日々をありありと思い出すことができるんだろうなと遠い日に想いを馳せる。
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