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The happiest girl in the world 自傷する少女 (レベンクロン 小説)



※一部、暴力的・グロテスクな内容が含まれます※





The happiest girl in the world、
邦題は、『自傷する少女』。
著者のレベンクロン氏は、臨床心理学者で小説家。
アメリカのティーンエイジャーが主人公。

ぶっちゃけてしまうと、原題の何がthe happiest なのか、読んでみて、まだ完全には分かってない。

そもそもの、この書籍の話を書こうと思った根本的な理由としての、個人的な前置きを暫し。

かれこれ20年近く、自傷癖が出たり引っ込んだりしている。一番酷かった時期よりは治まって、かといって、まだ完全に止めきれてはない状態。

傷の痛みは、落ち着くし安心する。 
何処かで聞いた一説によると、「心が痛い」を「体が痛い」に置き換えている…とか、体の痛みを抑えるための脳内物質に快楽の作用がある…とか、いろいろあるらしい。

自傷は誰かに見られない限り、自分の皮膚と自尊心以外の何も傷つかないから、とても簡単で楽。

同居家族や毎日会う人に傷を見せないために、細心の注意を払う。手首とか、見えやすい部分は切らない。
肌なるべく露出しない。動脈は避ける。
跡にならないよう薄く、でもなるべく痛くなるように大量に。

つまるところ、自分の弱みなんて余程見せたくない。
自分は人間である以前に生き物。
本能的に、食うか食われるかなのに、弱みを見せたらひとたまりも無い気がしてしまう。

自分の心とは何にも関係なく、日に日に修復される皮膚を見る度に、「生きろ生きろ生きろ!」っていう、無意識の領域の強い意志を感じる。
何を思おうが、修復機能は自分が頑張ろうとしなくても無関係に頑張ってくれるから、偉大、やるせない。

皮膚と心と、どっちも自分ではあるはずなのに、別の生き物みたいで、どっちも得体がしれない。

体と心が分離して、右方向と左方向に各々散ってしまいそうな時とか、痛みがその両方を、上手いこと繋ぎ止めてくれる。 

やめろと言われて、すぐやめられるわけでもない。
生きるためだから。
いろんなプロセスすっ飛ばして無理矢理止めさせる人には、きっと心を閉ざす。
完全にやめられる時は、自分への優しさを手に入れられた時だと思っているし、希望は捨てていない。


…話が逸れた上に長くなった、本題の書籍の話に移る。  



ざっくりしたあらすじ
  フィギュアスケートを頑張る少女ケイティは、ステージママな母親と多忙な生活を送っている。
  そして、頭が「真っ白」になった時、こっそり自傷をしている。 
  たまたま学校の先生に自傷がバレて、カウンセリングを受けることになり、過去のトラウマと向きあったりする…という話。 ちなみに、このステージママすごい毒親。

頭が「真っ白」、感覚としてかなり分かる。心と体が分離されて、聴覚とか鈍くなって、ここに居るのに居ない、そのまま微粒子化されて消えてしまいそう。

登場人物のカウンセラーのモデルが、臨床心理学者である著者本人であり、自傷癖がある人の回復のヒントをいろいろ言っている。

自分がこの本を読んで影響を受けたフレーズをご紹介。 

「人が何かに強く反応した時は、その人の中にある何かが強く弾けた時。」

好きの反対は無関心、嫌いも自分の中の何かに共鳴した結果のうち。自分が好きでも嫌いでも気になることは、必ず自分と関係あることなんだ、と思った。

もうひとつ
「感情を言葉にして名前をつければ、その感情を取り扱うことが出来るようになる。」

これはかなり個人的に有益だった。
もやもやするネガティブな感情を言語化することで、自分の体に当たり散らすリスクをかなり減らせた。
少なくとも、自傷の慢性化からは脱出できた。


自傷をやめたいか減らしたい人や、身近な自傷癖がある人を理解したい人に、とてもおすすめしたい。
かく言う自分も、まだ回復途中ではあるけれど。

自傷の理由は人それぞれだけど、深層心理までリアルに書かれているので、読むに際しての動機が何であっても、自分の心の健康のためになるヒントが得られると思う。





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