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練武知真 第3話『賢くなる為の武術』

さて。

武術とは元来どういうものでしょう。

現代的な価値でいうと、健康や趣味、自己啓発など様々な価値がありますが、

御存じのように元々は人間同士が戦って勝つ為の技術です。

もっと言うと、弱い者が不利な状況を打破し、自分と大切なものを守る為の戦術。

・力の弱い者が肉体的に優れた者に勝つ。

・少数の者たちが多人数相手に生き残る。

・武器を持った相手を制する。

など、弱者が強者を制する事を目的に開発されてきた戦闘技術。

これが『武術』なのです。

 

特に「内家拳(ないかけん)」と呼ばれる武術門派(太極拳、形意拳、八卦掌など)は、繊細な技術を開発してきました。

筋肉量を増加させる一般的な筋肉トレーニングは重視せず、

大地の反動力を利用した全身連動によるチカラ「勁(けい)」を練り上げます。

また「気」の概念の導入による身体強化や身体操作も行います。

「意(意識やイメージ)」や「心(心理状態)」までコントロールして活用します。

 

その結果、外観は威力があるように見えないけれど、

実際には強い威力をもつ身体運用『内功(ないこう)』を身につけるのです。

 

生来の身体能力の延長線上では、いくらトレーニングしても、生まれつき強い者には勝つことは難しい。

それならば、

それとは全く事なるアプローチで、強弱の差を埋め、勝利を得ようと考えるのは至極当然のように思います。

 

それはつまり『知恵』を使うということ。

肉体的に不利ならば、頭脳を使って勝つ!

そうして武術は、長い間、考察と実戦を繰り返して練り上げられてきたのです。

武術とは、すなわち『知恵の集積』なのです。

 

 

では戦いの場から、【生き残る】【生きてゆく】ということへテーマを拡げて考えるとどうでしょう?

 

立場が弱い者が、立場の強い者から身を守り、自分の思いを実現させてゆく。

この場合、相手は社会や組織などでもいいでしょう。

 

勢いや頑張りで、思いを貫き、成功を収める・・・という場合も勿論あると思います。

心のチカラは何をするにも絶対に必要なものです。

 

しかし、その方法では「エネルギーの浪費と消費」が著しい。

そのうちにパワー切れを起こして、断念してしまう恐れが少なからずあるのです。

 

だから・・・

 

考えましょう!

知恵を使いましょう!

多くの情報を入手して良い案を模索しましょう!

他人に意見を求め、自分だけでは気付かなかった考えを学びましょう!

 

そして、よ~く考えたら・・・行動しましょう!

行動することによって、頭脳で練られたプランが現実世界に現れます。

 

武術は闘いというリアルな世界で常に検証されてきました。

開発した技の効果が思い通りでなかったら、

また研究して・・・そして、また実践する。

 

中国武術の世界では、こうして練り上げられた効能を『功夫(クンフー)』といいます。

それは知恵を使った『工夫』に由来する言葉とも言われています。

 

社会では何か理不尽なことがあると『弱肉強食』という言葉が使われます。

強者が弱者をいいように扱うために。

弱者が自分の立場を卑下し、自らを慰め納得させるために。

 

私はこの「弱肉強食」という言葉がキライです。

 

自然界における動物の間での話であれば、そのとおりでしょう。

だが、私たち人類は「頭脳」を発達させてきました。

肉体的には多くの動物たちに敵わない脆弱な我々人類が、現代社会においてこれほど繁栄しているのは「知恵」を活用してきたからです。

 

弱肉強食が人間の世界での理論でもあるのであれば、

それを納得し呑み込むのであれば、

人間は獣と同じ。人間である必要はないと私は思うのです。

獣は獣の理論で生きているから尊い。

 

さて人間はどうでしょうか?

 

 

 

2024年2月28日 小幡 良祐

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