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角谷リョウ×宮木俊明「快眠が生み出すイノベーションーアンラーンから始まる『変化の自分ごと化』」(1)

【日時】2023年7月4日 19:00〜21:00
【会場】ビジョンセンター品川
【登壇者】角谷リョウ・宮木俊明


宮木俊明(以下、宮木) 一般社団法人ビジネスモデルイノベーション協会(BMIA)理事をしております宮木俊明と申します。BMIAは、ビジネスモデルコンサルタント養成をしておりまして、いま三〇〇人以上の会員が全国で活躍をされていらっしゃいます。養成して終わりじゃなくて、さらに、新しい学びを得ていただこうということで、最近流行りのリスキリングに活用していただこうと、このシリーズ(BMIAリスキリング・セッション)を始めました。

人生一〇〇年時代、長いビジネス生活のなかで学び続ける人を増やそうということで、いろんな文脈で今使われてる言葉かと思うんですけども、そこにあやかって、新しい学びを、さまざまな分野の第一人者をお迎えしてどんどんコンテンツを提供していこうという試みです。

本日お越しいただきました角谷リョウさんは、今回のタイトルにもなってる「快眠」、睡眠を良くするためのコーチとして第一人者でいらっしゃって、今月、発売されたばかりの書籍『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)を上梓されました。今日は、快眠、しっかり眠ることがイノベーションとどうつながるんだという話をしていきたいと思います。

「働く50代の快眠法則」フォレスト出版 (2023/6/21)

今日ご視聴されてるビジネスパーソンのみなさんも大変お忙しいでしょうから、なかなかしっかり睡眠がとれている自覚が少ないんじゃないかなと思うんですね。そういった忙しいなかで、どう睡眠と向き合っていけばいいのか、それがアウトプットの質、ひいては人生の質にどのように関わるのか。じっくりお話を伺っていきます。オンラインのみなさんもぜひチャットでご質問いただけたらと思います。
角谷さん、よろしくお願いします。

角谷リョウ(以下、角谷) よろしくお願いいたします。角谷リョウと申します。僕は、机上の空論じゃなくて実際に一〇万人以上の方を改善睡眠をしております。大手企業さん一六〇社以上をサポートし、松竹梅のコースを提供しております。ビジネスパーソンが中心なんですけども、オリンピック選手だったり、早稲田ラグビー部とか東大とか、バスケットのプロチームにも関わらせていただいています。

『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版 、2022年)が台湾、中国、韓国でもベストセラーになってまして、ちなみに、明日、韓国のいちばん大きな新聞社が取材に来るんですが、韓国も日本と同じぐらい睡眠不調の人が多くて、社会問題になっています。ここにもなにか貢献できないかなと思っています。

『働くあなたの快眠地図』フォレスト出版 (2022/3/19)

先ほどご紹介いただいた、新刊は一応ベストセラーになり、先週「ホンマでっかTV」にも出演しました。

もっと仕事ができるカラダをつくりたかった

宮木 角谷さんが睡眠というものに取り組み始めたきっかけは?

角谷 もともと僕、16年ぐらい前まで、役所に勤めてたんですよ。しかも、都市計画みたいなところにいて、まちづくりをしてたんですが、ちょっとワーカホリックで、役所に寝泊まりして仕事するけど残業はつけないで、労働組合にも入らずに仕事漬けの毎日だったんです。それで、仕事がもっとできる身体にしたいなと思ってパーソナルトレーニングを受けにいったんです。

でも、どのトレーナーもボディメイクか、機能改善かみたいなことを言ってくるんですよ。そうじゃなくて、もっと仕事ができる身体づくりをしたいんだけど、そういうトレーナーはいなかったし、プログラムもないらしい。

だったら、自分がやろうかなと思って。それがウケて、というか、そういったニーズがあったんですよね。3ヶ月ぐらいでエグゼクティブの層も埋まって、四店舗ぐらいが全部満室になるみたいなことがあったんですね。

そのときから、トレーニングってやっぱり仕事のパフォーマンスを上げるなぁって実感があったんだけど、それだけじゃ駄目で、やっぱり食事と睡眠とかすごく重要になってくるんですね。トレーニングってそのあとにやるものなんですよ。

まず、日本人の半分ぐらいがちゃんと十分に睡眠とれてない。ちゃんと眠れてない状態でトレーニングしても耐えられない。トレーニングって、傷つけて回復してより強くするっていうのが前提だから、いまの生活で回復できてないのに、トレーニングで超回復するっていうところに耐えられないってのがあって、最初にやるべきは、睡眠してトレーニングできる状態に持ってくっていうのがベースになる。

このことに気づいて、とりあえず土台をつくりさえすれば、あとはトレーナーにバトンタッチみたいな感じで、睡眠に振り切りました。紆余曲折あったなかで、最終的に睡眠に絞ってるって感じです。

宮木 「ビジネスアスリート」みたいな言葉もありますよね。まさに、身体からパフォーマンスを上げるところに入って、そこを探求した結果、やっぱり土台、やっぱり睡眠だよねっていうことだったんですね。

睡眠には無駄がない

角谷 そうなんです。話がいきなり脱線するんですけど、効率化を求めていくと短眠になってくるんですよ。深い睡眠がとれれば回復するんですけど、長い睡眠にもまた意味があって、新しい能力が身についたりするんですよね。大谷翔平選手って10何時間寝るって言うじゃないですか。

深い睡眠をとることで回復するんだけど、回復だけでよしとするのか。浅い睡眠って運動神経使ったりする新しい能力を獲得したり、レム睡眠は創造性を発揮したりするから、睡眠て無駄な部分があまりないんですよ。だけど、それがいらなければ、つまりいままでと同じでいいなら(回復だけでいいなら)、三時間とか四時間の深い睡眠で可能なんですよね。

だけど、新しい能力を身につけたいのであれば、浅い睡眠をしないと新しい神経伝達ができない。自分がなにを求めてるかで、最適睡眠も全然変わってくるんです。

宮木 おもしろいですね。僕もそうだったんですけど、深い睡眠で短い時間で済ませて、稼働時間を増やそうみたいな考え方に陥りがちなんだが、実はそうでもないと。創造性を発揮したいときは長く寝る。浅い睡眠だとしてもそれが価値がある。これはけっこういろんな方に朗報じゃないかなと思いました。

角谷 究極言うと、睡眠ってお金かかんなくて幸福度を上げてくれる。お金をかけて、たいした幸福度じゃない趣味をするぐらいだったら、幸福な睡眠したほうが余裕で得なんですよ。中途半端にお金かけて、しょうもない幸福感を感じるんだったら、「もう寝るの幸せ♡」ってなったほうがいいんじゃないかと。

夢も、トレーニング次第で、コントロールできるという話もありますしね。そっちのほうが断然得だと思うんですけどね。これはあくまで僕の考え方です。人それぞれあるので否定はしません(笑)。ただ、寝るのが無駄って考えるのか、寝ることが幸せでそれを自分で選択している、と考えるのではぜんぜん違ってくるんで。

宮木 いまの話だけでも「眠る」ということへの見方が変わりますね。

日本の睡眠改善の伸びしろは世界一

角谷 これはNASAが撮った夜の写真なんですが、世界中で日本がいちばん明るいんですね[図1]。

[図1]

よく「日本人は睡眠時間が短い」とか言われますが、実際に(睡眠に対する)満足度とか睡眠時間はすごく少なくて、短くてもちゃんと機能してればいいんですけども、睡眠不調の損失が世界でいちばん大きいんですよ[図2]。

[図2]

GDP比でいうと、3%近く、15兆円の経済損失があるということでめちゃくちゃ損してる[図3]。伸びしろしかないって僕は言ってるんですけど。だけど、日本って寝るためのグッズも100均に行くだけでもかなり揃えられるし、環境的に工夫するのは簡単なんです。だから、わりかし簡単に取り返せるんじゃないかなって思ってたりします。

[図3]

残業時間が減って、睡眠の質が悪化した?

角谷 働き方改革が進んで、残業時間は減ってるんですね。残業時間を減らすのはなんのためか。ワークライフバランスをよくして健康になってもらうみたいな意図があったはずです。だけど、残業時間が減って睡眠の悪い人が減るかと思いきや、増えたんですよ[図4]。

[図4]

宮木 えぇー。そうなんですか。

角谷 はい、ストレスも増えてるんすよ。だから、仕事を減らして、自由時間ができた結果、睡眠に充てずに違うことに使って、ストレス増やして睡眠も悪くなってるっていう、それが実情です。

宮木 睡眠時間の確保ができなかったのは仕事量が多いからでもないってことなんですね。

角谷 ですね。実際に、残業時間は年々年々減っていってて、睡眠もどんどん減ってってるわけだから、自由時間が増えてるわけですよ。増えてるのは、勉強なのかSNSなのか、ゲームのかわかんないですけど。残業は減ってもストレス平均値は上がってるから、「仕事が減って幸せになってない」わけなんですよ。

宮木 さっき「伸びしろ」っていう言葉もありましたけども、仕事の量とか質とかではなくて、意外にも睡眠を妨げるというか、二の次にさせてしまってる要因って未知のものがたくさんあって、改善していく頻度とか要素がすごくたくさんあるって感じがしました。

角谷 もうけっこう答えに近いところの話なんですが、それは、実は今日本人だけじゃないんだけど、なんで睡眠がうまく取れないかっていうと、スイッチの切り替えができないわけです、オンからオフへのね。

角谷 原因は依存症なんですよ。アルコールだとかゲームだとかSNSだとかっていう、なにかの依存症みたいなことになっていて、そこから脱することがなかなかむずかしい。完全なアル中みたいなことじゃなくて、なんとなくずっと止めれないな、という感じの依存症。SNSだって、震えるほど楽しいわけじゃないけど、なぜか気づくとやってるなぐらいの緩い依存症みたいな人がめちゃくちゃ増えてます。そこをどうマネジメントするか、どうつきあうかが睡眠と密接につながってるんですよ。

この解除の仕方みたいな話も後半で出てきます。

宮木 楽しみです!

腸内環境を整える白湯

角谷 自分の睡眠は良くないなっていうのは、いろんな人が気づきだしてます。ニトリの枕が五〇〇万個売れたり、ヤクルト1000ももうずっと売り切れ状態ですよね。ちなみに、僕は、企業から一円もお金もらってないですので、ご安心ください(笑)。

ヤクルト1000って本当にめっちゃ効きます。おそらく食べ物、飲み物のなかでヤクルト1000ほど、睡眠をよくするものはないんですよ。このからくりは、ストレスを受けます→腸内環境が悪化します→睡眠の質が悪くなりますっていうロジックなんです。だから、「ストレスを受けている状態で睡眠が悪い」人にはめちゃくちゃ効きます。だけどそうじゃない要因で睡眠が悪い人は、ほぼ変わらない。ストレス高い人が腸内環境を変えると、ストレスが減るってのがわかってて、うつ率も腸内の菌によってだいぶ変わるんです。それが間接的に睡眠に関わってるってことです。

ここでちょっと脱線なんですけど、僕の友だちで腸内環境を検査したり、サプリをつくっている会社の人がいるんですけど、よく効くっていわれてる月額五〇〇〇円から一万円ぐらいの腸内環境を多くするサプリと同じくらい、朝白湯飲むと腸内環境が良くなるんすよ。

お腹のなかを温めると非常に腸内環境にいいってことがわかってて、基本、朝白湯飲めば相当良くなるんで、睡眠の質も良くなる。

宮木 本のなかにも、腹巻きで温めるという話が出てました。単純に温めるだけで効果があるものってけっこうあるんですね。

角谷 逆に高くても効果ないものもいっぱいありますね(笑)。僕、筑波大学と連携したりもしてるんですけど、本当に効果があるのかっていうのを二重盲検法って、どっちがAかBかわかんないぞってやったりするんですけど、かなりの商品が、効果がないんですよ。みなさんが買ってる有名なものとかも含めて、ないよって話なんです。

宮木 不調なところに手を当てるだけで効果があるみたいな話もありますね。私もスタートアップの方とか、これからまさにやろうとしてるステージの方々と話す機会が多いんですけど、ある起業家さんがおっしゃってたのが、生理不調も温めるだけでだいぶ改善するんだってのがわかってて、発熱する素材で女性が安心して使えるものをつくりたいんだとおっしゃっていました。そのときも、エビデンスとして温めるだけで効果あるんですって聞いたので、「温める」って有効なんだなって改めて思いました。

角谷 そうですね。腹巻や白湯ぐらいの緩やかな温め方だと、おそらく長期的にいいんじゃないかっていうのもあったりするんですけど、でも温めすぎると、今度は自分の身体が持っている温める能力が下がってしまうみたいなところもあるんです。短期的にはいいけど、長期的に見たらどうなの、っていう。これ医療の世界でも本当にむずかしいです。個人差もありますし。だから、その方も、どこでデータ取るかで、結果が変わってくると思います。補助的に考えるのか、対症療法になってしまうのか。

宮木 自分自ら回復する力を阻害してしまうっていうことですよね。

角谷 そうなんですよ。そこのバランスですね。

(2)に続く


角谷リョウ
Lifree 共同創業者・開発/快眠コーチ

NTT docomo、サイバーエージェント、損保ジャパンなどの大手企業をはじめ、計120社、累計10万人の睡眠改善をサポートしてきた上級睡眠健康指導士、日本睡眠学会学会員、日本サウナ学会研究員。
ビジネスパーソンを中心にプロアスリートや大学・高校・中学・小学生、またお受験の睡眠サポートも行なっている。
認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートを行っており、1回のセッション+簡易フォローで不眠症レベルの受講者の約70%が「正常範囲」まで改善。4週間の睡眠改善プログラムにおいては90%以上が「正常範囲」まで改善している。
「人は、強制されても生活行動は変わらない」をモットーに、楽しく自ら自分を変えたくなるようなサポートを追求している。
著書は『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)、『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)。

宮木俊明
コニカミノルタ株式会社 ビジネス開発グループリーダー
Growth Works Inc. CEO
Trained facilitator of LEGO® SERIOUS PLAY® method anddmaterial
6seconds Certified SEI EQ Assessor & Brain Profiler
親子の休日革命 代表

ミッション:社会に挑戦者を増やすために、挑戦者を支援するとともに、自らもイノベーションに挑戦し続ける

大学卒業後、葬儀会社勤務、音楽活動を経て、商社の法人営業として2011年から3年連続トップ営業を達成しつつ、社内業務変革(今で言うDX)でも成果を挙げた。
2014年に創薬研究支援スタートアップとしてディスカヴァリソース株式会社を設立し、代表取締役に就任。大手製薬企業に採用された国内初の研究支援サービスは現在も活用されている。
2019年に教育ITベンチャーにジョインし、No.2として法人事業部門を統括するとともに、自らコンサルタント・講師として、全国の人と組織と事業の成長支援に奔走。
2021年からはコニカミノルタ株式会社のビジネス開発グループリーダーに就任。新規事業開発・人材開発・組織開発の「三位一体開発」による既存事業部発のイノベーションとして、印刷業界全体のDXに挑戦中。
BMIAには2015年から所属し、ビジネスモデル・キャンバスやバリュープロポジション・キャンバスを活用した新規事業開発コンサルタントとして活動開始。
2016年に経済産業省が主催するグローバルイノベーター育成プログラム「始動2016」に採択。イノベーターとしてのスキルセットとマインドセットを磨き、最終選考を経てイスラエル派遣メンバーに選出された。
2017年よりライフワークとして誰一人として親子の時間を犠牲にせず親子の学びと成長を支援するワークショップ・プログラム「親子の休日革命」を推進中。
2019年、ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏のソーシャルビジネス・デザイン・コンテスト「YYコンテスト2019」のグランドチャンピオン大会に出場し優勝。日本代表として世界大会への出場決定 (新型コロナの影響で延期中)
2020年にソーシャル・ビジネス・カンパニーGrowth Worksを創業。イノベーションを志向した教育・新規事業開発・人材開発・組織開発の講師・コンサルタント・ファシリテーターとして、研修やワークショップの提供を通じて人・組織・事業・地域社会の成長を支援中。
著書:
『ひらめきとアイデアがあふれ出す ビジネスフレームワーク実践ブック』
『仕事はかどり図鑑 今日からはじめる小さなDX』


(写真:小山龍介/編集:片岡峰子)

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