恋愛小説的なものを書いています。まだ始めたばかりですが。

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  • 僕は君を知っていた

    恋愛小説です。

最近の記事

「視線」

地下へと降りる階段。その先にはドア。 多少の違いはあれ、ライブハウスはだいたいどこも同じような作りだ。 僕には見慣れた風景。入り口付近には沢山のチラシが貼ってある。ドアを開けると会場前というのにもう何人か来ていた。 受付を済ませた僕は荷物を置き、ステージの様子を見にいった。 いつも自分のバンドで演奏している自由ヶ丘の店よりは少し狭い。 (あまり動けないな) と、思って見ていると 「おう、お前プロになったんだってな。」 学生の頃、よく居酒屋で

    • 「糸」

      バークリーに行きたい。そう思った僕はとりあえず実家に戻り、資金が貯まるまで働くことにした。といってもきつい仕事をしてまた喫茶店の時と同じことになるのは嫌だったので、大学時代にバイトしていたホテルの夜間フロントのバイトをまた始めることにした。このバイトは僕にとってはありがたかった。 夜間なのでほとんどが電話番。 客室で仮眠の時間もある。 その後はほとんど電話もかかってこない。 僕はギターを持ち込んで仮眠の時間とその後の時間をギターの練習に費やした。近所に住んでいた作曲家の人に譜

      • 「決意」

        佐和ちゃんと別れてから2年。僕はまだ未練が断ち切れず (また元のように付き合えるかも?)と儚い夢をおぼろげに描いていた。とはいえ、年頃の僕に周りが可哀想に思ったのか女の子を紹介してくれたりする人もいた。 その中に店の同僚で隆という奴がいた。 こいつは僕と同じ年で、仕事は真面目にやっていたが、僕と違うのは女の子に手が速いということ。 どうやら僕はそういう奴と縁があるらしい。 隆は休みの日には六本木のディスコへ女の子をナンパしに行っていて、次の日になると「昨日ナンパした子」のこ

        • 「未練」

          佐和ちゃんと別れた僕はまだ彼女のことが忘れられずにいた。(もう一度やり直したい) やりどころのない思いを悪友の良祐にぶつけた。「どうすりゃいいんだよ?」「そんなに好きなら彼女のウチにでも行くか? そこまですりゃ向こうも気持わかるだろ?」そのまま僕と良祐は電車に乗った。 もう終電近い時間だった。とはいえ、彼女の家の住所はわからない。 僕が知っているのは彼女のウチの電話番号と「およそこの辺りに住んでいる」ということだけ。 彼女の住む街の辺りまで行って公衆電話から電話してみたが誰

        「視線」

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        • 僕は君を知っていた
          6本

        記事

          「初恋」

          「僕」の今の名前は「佐田誠也」。3月まで通っていた(と言ってもほとんど授業には出てなかった)大学を辞め、高校時代の友達と二人でアパートで同居し始めた。「絶対にギタリストになってやる。」中学の頃からギタリストになることを夢見ていた僕は親の手前一応大学にも行ったが、授業には出ずにギターの練習とバイトに明け暮れる毎日。「俺はギタリストになるんだから他のことには目もくれない。」とはいえ東京に出てきたからといって音楽でやっていく伝手もない。僕はそれがどういうものかよくわからないまま求人

          「初恋」

          「再会」

          「どうも」大学を2年で辞めた僕は、前日の仕事の後大学時代の悪友の家に泊まっていた。 帰り際にその悪友のアパートに「君」はやってきた。僕と悪友の良祐が所属していたサークルの後輩だと紹介された。 長い髪とぱっちりとした目の女の子らしい可愛げのある娘。「君」は少し恥ずかしげに軽く頭を下げた。 その時「僕」はすでに「君」を知っていた。 (あいつ、この間まで同じ年の彼女いたのにもう新入生に手出したのかよ。 どうしてあいつはすぐ彼女ができて俺にはできないんだ?)彼女というものにほとんど

          「再会」