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記号で泣くか物語で泣くか。 「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」映画感想

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」ってあるじゃないですか。
『スター・ウォーズ』シリーズの、レイを主人公とする続三部作の第1章『エピソード7』に当たる、2015年に公開された映画。
公開当時劇場で見たのですが、最近地上波放映もあったので再度見ました。感想書きます。どちらかと言えば、既に見た方向けの文章です。

ネタバレ注意
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」
「スター・ウォーズ シリーズ」全般
2015年製作/136分/G/アメリカ
原題:Star Wars: The Force Awakens
配給:ディズニー
あらすじ
伝説のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーがいずこかへと姿を消し、帝国軍の残党「ファースト・オーダー」が台頭。レイア・オーガナ率いるレジスタンスが抵抗運動を続けているが、銀河には再び暗雲が立ち込めていた。砂漠の惑星ジャクーで廃品回収をしながらひとり暮らしていたレイは、ある日、砂漠をさまよっていたドロイドのBB-8と出会う。BB-8は、レジスタンスがようやくつかんだルーク・スカイウォーカーの手がかりを託されており、ファースト・オーダーに狙われていた。レイは、ファースト・オーダーを脱走してきたストームトルーパーのフィンと協力しながら、BB-8を連れて逃走し、その過程でかつてルークとともに戦ったハン・ソロと出会うが……。(映画.comより)

ぼくとスターウォーズ

ぼくが、ものづくりを志す決定打となったのが、スター・ウォーズです。
映画少年だったぼくは、レンタルビデオやリバイバル上映で「スターウォーズ」を幾度となく鑑賞し、壮大な宇宙のたびに夢をはせていました。
小学校の頃、デパートで開催されていた「ジョージ・ルーカス展」を見に行き、展示されている模型やスケッチの数々に触れ、人生が変わりました。
精巧に作られた模型、小道具、衣装、想像力とセンス・オブ・ワンダーが溢れるスケッチ...。ぼくの心は完全にスター・ウォーズ一色となりました。
展覧会の図録を買い、来る日も来る日も図録に掲載されている模型やイラストを模写しました。
(現在東京で開催されている「スター・ウォーズ™ アイデンティティーズ:ザ・エキシビション」も観に行ったのですが、その話は別の機会に書きます。)

そんな中、エピソード1~3の製作、公開があり、更に時が経ち、今回のエピソード7の公開です。そりゃあもう心待ちにして映画館に観に行きました。

2時間号泣

オープニングで、「ジャーーーン。パパパパー」ってテーマ曲が流れるじゃないですか。ぼくはそこからエンドロールまでずっと泣いてました。
ぼくが心酔した、ミレニアム・ファルコンを始めとする宇宙船やメカが再び動き出す。
旧作の登場人物たちが時を経て登場し、活躍する。
新しい仲間がそこに交わる。
これは泣くに決まっている。

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しかし、今回、地上波放送を再度見てふと考えたのです。
ぼくが泣いたのは、「物語ではなく、スターウォーズ的記号の見せ方が優れているからではないか」と。

今作の特殊な前提

「フォースの覚醒」はかなり特殊な前提があります。
10年以上前の伝説的シリーズ作品の新作
多くの人が過去作を鑑賞済み
新三部作の一作目
このような条件に当てはまるのは「ターミネーター」「ジュラシックパーク」シリーズの新作くらいです。
両者とも素晴らしい作品ですが、「スター・ウォーズ」は熱狂的ファンの数が桁違いです。
この前提で映画を作るのはとてつもなく難しいことは理解できます。

しかし、困難な状況の中「フォースの覚醒」は下記の点をクリアしてきました。
魅力的な新しいキャラクターの創造
旧作のキャラクターを再び動かす
旧作ファンを喜ばす仕掛けやアイデア
次の2作のための、シリーズとしてのセットアップ、舞台説明
これは凄いことです。
この時点で「フォースの覚醒」に与えられた役割は十分果たしている。
しかし、物語の構造としては、上手くいっているとは言えないような気がします。

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実は盛り上がりに欠けているのでは?

フィンはファースト・オーダーの兵士であるストーム・トルーパーをやめ、レジスタンス側につきます。
この大きな変化が冒頭で描かれるため、人間としての大きな成長は以降映画の中にあまり出てきません。

レイは、クライマックスでフォースが覚醒します。一応ここが一番の盛り上がりポイント。
でも、「世界を変えるために力を欲していた」「フォースが発現してなかったがゆえに、救えなかった存在がいる」などのフォース覚醒のカタルシスに至るまでの描写ってないんですよ。
さらにフィンと違って、ファースト・オーダーを嫌う理由も描写されてない。
レイの動機である、「自分の出自を知りたい」という目的とファースト・オーダーを倒す、という目的が合致してないようにも感じます。
流れでたまたまレジスタンス側についてるだけであって。
酒場の地下でライトセーバーに触れて幻影を見るシーンもいまいちよくわからない。

例えば、

レイは惑星ジャクーでスクラップを集め日銭を稼いでいるが、日々の暮らしはファースト・オーダーに抑圧されている
過去には、自分の力が及ばす、ファースト・オーダーによって大事な存在を虐げられた経験があり、今でもこの記憶に悩まされている。
しかし、過去の記憶は曖昧ではっきりしない。特に幼少期以前。
そのため、人生を変えるためには、力をつけ、自分が何者なのかを証明し、過去を克服する必要がある。

こんな感じの設定・描写があれば物語の目的、フィンの目的、レジスタンスの目的としっかり噛み合わさると思うんですよね。

ぼくが「フォースの覚醒」に対して思うのは、この物語の弱さなんです。
スター・ウォーズ的な記号を取っ払ったときに、今作の物語は本当に面白いのだろうか?
三部作の一作目というのはわかるし、あえて巻き込まれるキャラクタとして創造したのかもしれないけど。
うーーん。
ずっと「ジャクーに帰る」っていってたレイが明確に「ファースト・オーダーを倒す」と決意するシーンがひとつでもあったら良かったのになぁ。
もしかしたらぼくがなにか見逃しているかもしれない。

エピソード8,9も感想を書く予定です。

しーゆー

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