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【本104】『台湾漫遊鉄道のふたり』

著者:楊双子 出版社:中央公論新社

台湾が日本統治下にあった昭和13年。台湾で出会った作家の青山千鶴子と台湾人通訳の王千鶴の交流が描かれています。とにかく千鶴子は食べる食べる食べる...市場や屋台に並ぶ家庭料理から、一流ホテルのコース料理まで美味しい食べ物が次から次に登場し、とても幸せな気持ちになります。野菜、肉、魚介類、香辛料...様々な調理法が施されていて、終始、台湾の豊かな食文化に興味津々でした。

主人公の千鶴子は、いつもハイテンションで妖怪のような大食。あれを食べたい、これを食べたい...その気持ちに応えるのが通訳の千鶴。そんな千鶴が大好きな千鶴子は「親友になりましょう」と一生懸命距離を縮めていこうとします。しかし、その距離はなかなか縮まりません。

でも、千鶴子の旅の終わりには、なぜその距離が縮まらないのか明らかになっていきます。美島の放った一言。それが全てを物語っているのです。

「この世界で、独りよがりな善意ほど、はた迷惑なものはございません」

支配するものとされるもの、複雑な関係のなか、友情を結ぶことの難しさ、相手の気持ちにたつことの難しさを思います。千鶴子の旅を通して、最後に、私も気付かされることがたくさんあり、心にずんときました。


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