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1月22日 出版記念特別講演

ブックダムの1作目である『踏み出す一歩 そして僕は夢を追いかけた』
著者である倉野信次さん(現・福岡ソフトバンクホークス 一軍投手コーチ)の出版記念特別講演が、ソラリア西鉄ホテル福岡で開催されました。

このイベントで、私(菊池)が目で見て、耳で聴いて、心で感じたこと、強く印象に残った言葉やシーンなどを、レポートとしてお届けします。


込み上げる実感

間もなく到来を告げる2024年シーズン。
テキサス・レンジャーズでの2年間の武者修行を終えて、古巣であり"故郷"でもある福岡ソフトバンクホークスに復帰される倉野さん。
キャンプイン直前のタイミングで、出版記念イベントを開催いただけることに感謝を抱きながら、会場に足を踏み入れました。

どことなく緊張感が漂う会場。
ステージ壇上、ビシッときまったスーツ姿でリハーサルする倉野さんの姿が目に飛び込んできた瞬間、「ああ、わたしたちは倉野さんの大切な1冊に、確かに携わったのだ」と、これまで感じてきたものとはまた違う感覚が、じんわりと湧いてきました。

リハーサルを終えて控室に戻り、倉野さん、そして司会者であるフリーアナウンサー角野友紀さん、運営にご協力いただいているホテルの責任者の方とお話しながら、本番まで待機。

その合間にも、関係者の方がおひとり、またおひとりと控室に訪れていたのですが、倉野さんの人望の厚さは言わずもがな、傍目にも今季の倉野さんにかける皆様の期待がひしひしと伝わってきました。

野球人であり、一人の挑戦者でもある倉野さんの「踏み出す一歩」にご一緒させていただいている。この日に立ち会うことができたからこそ得られる、特別な実感がありました。

勝つチームには優れたリーダーがいる

定刻の19:00。無事に講演が開幕。
今回は『踏み出す一歩』の出版記念ということで、本書で綴られたアメリカ武者修行時代のエピソードを中心にしたお話が聴けるのを楽しみにしていましたが、早速冒頭にメジャーリーグの話題へ。

倉野さんが2年間在籍していたテキサス・レンジャーズは、2023年シーズンに見事ワールドチャンピオンの座に輝きました。それまで長らくの間、地区下位の成績が続いていたレンジャーズに何が起こったのか。

2022年のオフ。球団フロントは、何としてもチームを建て直すために、名将ブルース・ボウチー氏に白羽の矢を立て、再び監督として現場に戻ってもらえないか懇願し続け、承諾してもらうに至ったそうです。

晴れてボウチー氏が監督に就任し、過去の不振がウソだったかのように、チームの躍進が始まりました。

その見違えるほどの変化を目の当たりにした倉野さんは、「 リーダー如何でこれほどまでに結果が変わるのか 」と、驚きを覚えたとお話されていました。

それを聴きながら、リーダーの立場として奮い立たされると同時に、耳の痛いお話でもありました。(力不足を痛感しているとなおさら)

倉野さんはボウチー監督が重んじていた指針のなかでも、特にこの2つが大きな学びとなったそうです。

①当たり前のことを当たり前にやる

いわゆる基礎の徹底です。
全力疾走。ベースカバー。技術うんぬんでなく、1プレー1プレー意識してやるかやらぬか問われること。

これは仕事においても、日常生活においても、通じて言えることですよね。
その瞬間は手を抜いてしまってもどうとでもなるのですが、積み重なれば未来の結果に大きな差が出る。ここぞというときに勝敗を分ける致命的なミスが出てしまう。

当たり前の基準をチームや組織としてどこに置くか。決めるのはリーダーです。

②良きチームメートであれ

この「 良き 」にはさまざまな定義や解釈があると思います。
ここでの「 良き 」とは、"チームとして重んじる意識や在り方を一貫できる"という定義でした。

意識や在り方を一貫できているかは、残酷にも常日頃の振る舞いや、1プレー1プレーの結果に表れるし、ファンの方にも伝わってしまうものです。

緩んだネジはひずみを生む。
リーダーが緩んだネジでは話にならないし、チームにある緩んだネジを看過してはならない、ということです。

以上、①と②はまさに私にとって、そしてわたしたちにとって自分事としか思えなかったので、プラスの意味で講演の感慨に浸る間もありませんでした。

アメリカでの学びはとてつもなく大きかった

倉野さんがアメリカで味わった挫折。それをどう乗り越えたのか。
特にそのエピソードが赤裸々に記されている本書第2章については、たくさん読者の方から「 勇気をもらった!」と嬉しい声をいただいています。

倉野さんの苦悩がありありと心に伝わってくる当時のお話の中で、この言葉が印象に残りました。

「情報をいくら浴びたとて経験に勝るものはない 」

うなずくしかなかった。
経験から得るものは何物にも代え難いですから。

この日、倉野さんはアメリカでの経験を通して学んだことを3つ挙げられていました。

①コミュニケーション能力

言葉の壁にぶち当たり、朝から晩まで誰ともほとんど話さず帰宅する生活が2週間続き、「もうグラウンドに行きたくない・・」と心が折れかけた時期もあった倉野さん。

その苦境を救ったのは、「ほんの少しでもいい。自分にできることを何でもいいからやってみよう!」という気持ちの切り替え。その勇気と行動でした。

片言の英語でも、熱意と想いを込めて、一生懸命伝えてみる。相手の言わんとしていること、求めていることを、必死に理解しようと努める。
そんなコミュニケーションの積み重ねによって、次第に周囲が倉野さんに興味を持ってくれて、どんどんアドバイスを求められるようになり、道が開けていったそうです。

その壁を乗り越えた経験が財産となり、日本に戻ってからは「アメリカでもできたんだ。日本でなら、伝えることを磨き続ければ、必ず伝わる」という考えと自信がさらに強くなったと仰っていました。

②トライアル&エラー

アメリカは日本と違い、どんどんチャレンジさせてくれる文化。むしろ自ら考えて行動できない人間は置いていかれるシビアな国でもあります。

新しい挑戦に失敗はつきもの。それよりも結果を受けてどう改善して次の挑戦に結びつけるかの方がよほど重要視されます。

むやみやたらに結果を責められないからこそ、思いきりプレーできるんですね。

③ルールや規則の中でノビノビと

"自由の国・アメリカ"なんて表現されるくらいですから、さぞルールや規則は日本と比べて緩いんじゃないかと思われる方も多いのではないでしょうか。

実は真逆だそうです。多様な人種・国籍の人々が暮らすアメリカでは、ルールで縛らないと埒があかない。
メジャーリーグにおいても、練習時の服装、ユニフォームの着こなし、スマホの使用に至るまで厳しくチェックされるそうです。歯向かおうものなら、すぐにクビにされてしまうとか・・。

しかしながら、前述したトライアル&エラーの文化があるからこそ、厳しいルールや規則下でも選手は思いきりノビノビとプレーできる。

倉野さんのアメリカでの学びは、日本の良さを踏まえた上での視点なので、気づかされ、考えさせられるものばかりです。

選手のためにコーチがいる

ご来場いただいた方の中には、倉野さんやホークスファンのみならず、企業の経営者の方や管理職の方、指導者を志す方がいらっしゃいました。

この日、倉野さんがお話された”現代のコーチング論”は、まさにその方たちにとって心に響くものであったのではないでしょうか。

「コーチにとって何より必要なのは伝える力です」
「選手に対して、何で伝わらないんだ?何でこんなこともわからないんだ?と言葉にするのはご法度。もしその言葉を口にしてしまった日には、僕はコーチを辞めます」

シーズンオフはこの日のように自ら講演の機会をつくり、伝える力を磨き続ける倉野さん。
あくなき向上心と自らに厳しい姿勢を行動として体現しているからこそ、このような力強い信念がつくりあげられていくんですね。

さらにコーチング論のくだりでもうひとつ。

「選手がいるからコーチが存在する。選手のためにコーチが存在する。」

この倉野さんの言葉には、思わずわたしたちを重ね合わせてしまいました。

「読者がいるから本が存在する。読者のために本が存在する。」

ミッションとビジョンに立ち戻る瞬間でした。

確かにそこに読者がいた

講演の終盤には、参加者の方からのご質問に倉野さんが答えていただくコーナーがありました。
この日は平日にも関わらずおよそ90名の方にご来場いただきましたが、老若男女幅広い世代にわたっていました。

『踏み出す一歩』を製作していく過程においても、野球ファンの方だけでなく、幅広い読者の方に届けたいという意図と想いを一貫して持っていました。

こうして無事本書が発売を迎え、実際に読者の方の手に届き、若干緊張しながら、でも嬉しそうに質問をされている読者の方たちを目の前にできた時間を過ごせたことで、改めて感じたことがあります。

本はつくって終わりではない。
新たなはじまりでもあるし、わたしたちが終えない限り、終わりはない。
だからこそ、読者の日常に、人生に、プラスのエネルギーを循環させ続ける
、と。

わたしたちの「踏み出す一歩」は続いていきます。
その原動力となるプラスのエネルギーを、倉野さんとご参加いただいた読者の皆さまから、たくさん受け取ることができました。
受け取ったエネルギーを、今日も、明日も、そしてこの瞬間も、循環させていきます。

「必ずホークスを復活させます!」と力強く宣言

最後に。
このような機会を与えてくださった倉野信次様。
主催者であるパフォーム49およびソラリア西鉄ホテル関係者の皆々様。
当日ご来場いただき、また、これまで本書を手にとってくださった読者の皆々様。
本書をつくり届けていく中でご支援とご協力を賜りました関係者の皆々様。ブックダムの仲間。いつも支えてくれている家族に。心より感謝を。

そしてこのイベントレポートお読みいただいたあなたへ。
どうもありがとうございました!

講演終了後の控室にて
著者の倉野さんと菊池


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