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右でも左でもなく、善でも悪でもない一庶民。本を出すことが夢の「流しの書店員」。愛書家&…

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右でも左でもなく、善でも悪でもない一庶民。本を出すことが夢の「流しの書店員」。愛書家&プロレスマニア。スポーツ、音楽、政治等に関するコラムを毎日更新。書評も有。「読む」と「書く」で己と読者を昨日よりも幸せに!https://bookmeter.com/users/49241

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    その名の通りです。

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    ハードボイルドな書店員が綴る、本屋が舞台の掌編小説。いつか紙の本で書籍化したい。毎週日曜日に更新。

  • 赤裸々なブックレビュー

記事一覧

固定された記事

私小説「私が『ハードボイルド書店員』になるまで」前編

20××年3月中旬。休日の午前中。部屋で携帯電話が鳴った。 「○○くん? 店長のYです」「おつかれさまです」「職探しは進んでる?」「ええ、今度×××書店と面接を」「…

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2年前
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「1か月を3で割る」&「最終的には○○○○」

沢木耕太郎さんの本が好きです。 営業マン時代、仕事をさぼって飛び込んだ町の本屋で「深夜特急」に出会い、救われたのが最初でした。 同作ではなかったかもしれないけど…

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13時間前
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紅テントで輝いた「誤読の魔術師」

「マジックリアリズム」という言葉をご存知ですか? 私もよくわかっていません。なんとなく「日常と非日常、リアリズムと幻想が当たり前のように共存する世界観」だと捉え…

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1日前
27

「なんでもある」「どれでもある」「無形の財産」

伝説は終わらない。 昨年3月に閉店した「八重洲ブックセンター本店」のレガシーを継ぐ「八重洲ブックセンター・グランスタ八重洲店」が6月14日に東京駅構内にオープンしま…

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2日前
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ハードボイルド書店員日記【184】

「すいません、抜けます」 GWの真っ只中。通常よりもやや大きいハヤカワ文庫のカバーを折っていられたのは開店から20分までだった。 「絵本を3か所に配送したい」という…

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3日前
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「連休明けのだるい自分」にオススメの一冊

GWも終盤ですね。 前半に3連休、そして3日間の平日を挟んで4連休。これぐらいがバランス的にちょうどいいかもしれません。 大型連休明けに元のスケジュールへ戻って動く…

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4日前
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「本を売ることに力を入れたい書店員」と「強い新日本プロレスを取り戻したいレスラー」

先日こんな小説を書きました。 本は利益率の低い商材。だから雑貨や文具、催事などで補う必要がある。わかっています。それでも「本屋の売りは本」という考えを捨てたくな…

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5日前
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イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」

なんと。 昨年6月にコーマック・マッカーシーが亡くなった際も思いましたが、なぜこの方にノーベル文学賞が与えられなかったのか。。。 私がオースターの本を初めて読ん…

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6日前
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「○○の文庫本」と「自分だけの何か」

↓を堪能しました。 具はきくらげとブツ切りの長ネギ。あと納豆を二パック食べて夕ご飯にしました。 どんぶりカップもいいけど、袋麺の方が断然美味く感じます。 ラーメ…

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7日前
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イチ非正規書店員が「第39話」から学んだこと

4月9日はウルトラマンがゼットンに敗北した日。 最終回である第39話「さらばウルトラマン」が、1967年のその日に放送されたようです。 当時の子どもはショックを受けたで…

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8日前
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書店業界の「ややこしい」を考える

笑ってしまいました。 でも当事者からしたら切実なはず。 たとえば新刊コミックやアイドル写真集の特典で、公式が「三省堂書店限定」と紹介しているのをお客さんが勘違い…

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9日前
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私小説「ハードボイルド書店員の独り言」

雨上がりの朝七時。誰もいない路地を歩く。 タバコの残り香が鼻孔を掠める。湿ったアスファルトに自転車が踏みつぶした吸い殻。舌打ちはいつしか堪える方に過半数を譲った…

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10日前
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書店員は「アーティスト」か、それとも

ちょっと過激なことを書いたので有料とさせていただきます。 義理で購入していただく必要はもちろんありません。今後の書店員のあり方や政府及びメディアが持ち上げがちな…

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11日前
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「待望の実写化」と「シェア型書店」

2022年に「塞王の楯」で直木賞を獲った今村翔吾さんの時代小説「イクサガミ」が、Netflixで実写化されます。岡田准一さんが主演、プロデューサー、アクションプランナーを…

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12日前
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「こんばんは」と「お騒がせしました」

他団体のトップスターが乱入して宣戦布告。 かつてのプロレス界では、よく見られた光景です。 いわゆる「こんばんは」事件が真っ先に頭に浮かびました。 1981年9月、新…

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13日前
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イチ末端書店員が「経産相と本屋経営者の会合」に思うこと

いくつかの記事を読み、どういう話し合いがされたのかを掴みました。 「カフェを併設したりイベントを企画したりしてお客を集めたという取り組みの報告」 「地域の図書館…

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2週間前
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固定された記事

私小説「私が『ハードボイルド書店員』になるまで」前編

20××年3月中旬。休日の午前中。部屋で携帯電話が鳴った。 「○○くん? 店長のYです」「おつかれさまです」「職探しは進んでる?」「ええ、今度×××書店と面接を」「ちょっと状況が変わってさ。まだウチで働く気、ある?」「えっ」「雑誌担当がひとり、来月で辞めることになってね。急な話なんだけど、よかったらどうかと思って」「……」 Hさんの顔が頭に浮かんだ。数週間前にいつもの飲み屋で交わした会話も。「俺、また調査役から『雑誌やらない?』って誘われたんだよね」「またですか。もう引き受

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「1か月を3で割る」&「最終的には○○○○」

沢木耕太郎さんの本が好きです。 営業マン時代、仕事をさぼって飛び込んだ町の本屋で「深夜特急」に出会い、救われたのが最初でした。 同作ではなかったかもしれないけど、彼の書いたこんなニュアンスの文章に共感したことを覚えています。「1か月を3で割り、それぞれを仕事、旅、酒に充てたい」 我が身に置き換えるなら「書店員、物書き、読書&プロレス観戦」でしょうか。安定の低空飛行とはいえ、できてなくもないです。沢木さんはどうだったんだろう? いつか訊ねたい。 ただ、私の場合は「本と文

紅テントで輝いた「誤読の魔術師」

「マジックリアリズム」という言葉をご存知ですか? 私もよくわかっていません。なんとなく「日常と非日常、リアリズムと幻想が当たり前のように共存する世界観」だと捉えています。 ウィキペディアを見ると、日本人作家では安部公房の名が最初に出てきます。 「壁」や「カンガルー・ノート」はそんな感じでした。カフカ的と評されがちだけど、もう少しダリの絵画に近いような。村上春樹だと「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」辺りを連想します。 唐さんの文学にも近い匂いを感じました。現実へい

「なんでもある」「どれでもある」「無形の財産」

伝説は終わらない。 昨年3月に閉店した「八重洲ブックセンター本店」のレガシーを継ぐ「八重洲ブックセンター・グランスタ八重洲店」が6月14日に東京駅構内にオープンします。 営業時間は10時から21時で、場所はグランスタ八重洲の地下1階とのこと(八重洲地下中央口より徒歩1分)。72坪のワンフロア店のようです。地下1階~地上8階の9フロアに1400坪あった本店とは異なるアプローチで、意外な出会いを提供してくれそう。 大型書店で働きつつ、一冊の棚差しで他店との違いを打ち出したい

ハードボイルド書店員日記【184】

「すいません、抜けます」 GWの真っ只中。通常よりもやや大きいハヤカワ文庫のカバーを折っていられたのは開店から20分までだった。 「絵本を3か所に配送したい」という小柄な老婦人が来た。送料がどれだけかかっても構わない、孫に贈りたいとのこと。遅番が出勤する13時半までは3人しかいない。店長が伝票の作成や梱包のためにカウンターから離れ、残りはふたり。電話がずっと鳴り続けている。 そしていま、客注のお問い合わせを受けてまたひとり。本能寺で明智方の大軍へ弓を引き絞った織田信長の

「連休明けのだるい自分」にオススメの一冊

GWも終盤ですね。 前半に3連休、そして3日間の平日を挟んで4連休。これぐらいがバランス的にちょうどいいかもしれません。 大型連休明けに元のスケジュールへ戻って動くことは、連日稼動し続けるのとは違ったしんどさを伴います。 年中無休の書店で働く身です。しかし営業マン時代は、年末年始に1週間弱のお休みがありました。年明け最初の朝礼で社訓を叫んだら声がガラガラ。驚きました。毎日やっている時は平気だったのに数日休んだだけでこうなるのかと。 かつてメジャーリーグでリリーフ投手と

「本を売ることに力を入れたい書店員」と「強い新日本プロレスを取り戻したいレスラー」

先日こんな小説を書きました。 本は利益率の低い商材。だから雑貨や文具、催事などで補う必要がある。わかっています。それでも「本屋の売りは本」という考えを捨てたくない。そんな熱を込めた掌編です。 本屋の売りが本なら、新日本プロレスのそれはプロレスです。にもかかわらず、広島大会でおこなわれたKOPW争奪戦は3ラウンド制で、1ラウンド目はマツダ車のタイヤをリング上で4つ積み上げた方が勝利。2ラウンド目は広島レモンの早食い対決でした。 そういう試合があってもいい。生真面目な闘いば

イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」

なんと。 昨年6月にコーマック・マッカーシーが亡くなった際も思いましたが、なぜこの方にノーベル文学賞が与えられなかったのか。。。 私がオースターの本を初めて読んだのは2015年。↓です。 ひとりの若者が人生に絶望して街を彷徨い、やがて師となる存在に出会う。住み込みで働き、奇妙な暮らしを続けるなかで、彼は少しずつ成熟を遂げていく。青春小説の傑作です。 当時、まさに人生に絶望しかかっていました。長年勤めていた書店がなくなると決まっていたからです。 いい機会だし、失業手当

「○○の文庫本」と「自分だけの何か」

↓を堪能しました。 具はきくらげとブツ切りの長ネギ。あと納豆を二パック食べて夕ご飯にしました。 どんぶりカップもいいけど、袋麺の方が断然美味く感じます。 ラーメン屋へ入る際は、高確率で味噌を頼みます。しかしサッポロ一番では断然塩派。醤油や味噌も食べますが、結局は塩へ戻ってきます。 味に惹かれているのは間違いない。でも味噌や醤油も大好きなのです。なぜ塩に執着するのか。そもそも多くの即席麺が世に出ているのに、なぜサッポロ一番ばかり選んでしまうのか。 本屋でたとえるなら、

イチ非正規書店員が「第39話」から学んだこと

4月9日はウルトラマンがゼットンに敗北した日。 最終回である第39話「さらばウルトラマン」が、1967年のその日に放送されたようです。 当時の子どもはショックを受けたでしょう。 ちなみに私が第39話を見て真っ先に思ったのは「ゼットンの光線を食らってうつ伏せに倒れたウルトラマンがなぜ仰向けに寝ているの?」です。負けると知っていたので、どうやられるかにドキドキしました。 知人に昭和ウルトラシリーズのマニアがいます。「ゼットン星人が断末魔に残した言葉を『ゼットン』と聞き取れ

書店業界の「ややこしい」を考える

笑ってしまいました。 でも当事者からしたら切実なはず。 たとえば新刊コミックやアイドル写真集の特典で、公式が「三省堂書店限定」と紹介しているのをお客さんが勘違いして三洋堂で買い、なぜもらえないのかと騒ぐケースは普通にありそうです。 某書店に勤める知人から以前に聞いたのですが、年に数回は「アップルパイまだ残ってる?」みたいな電話を受けるとか。スーパーと混同しているのでしょう。読み方も一緒だし仕方ないのかもしれない。 池袋のサンシャインシティには「アルパ」と「アルタ」があ

私小説「ハードボイルド書店員の独り言」

雨上がりの朝七時。誰もいない路地を歩く。 タバコの残り香が鼻孔を掠める。湿ったアスファルトに自転車が踏みつぶした吸い殻。舌打ちはいつしか堪える方に過半数を譲った。 今日は昨日よりも混むだろう。 連日前年比を超えている。外国人観光客のおかげだ。彼ら彼女らが買うのは帆布を使った鞄。北斎や写楽や鹿苑寺のポストカード、そして文房具各種と期間限定で並べている動物のぬいぐるみだ。イングリッシュブック? ソーリー。ノー・イングリッシュブック・ヒア。 本を売ろう。置こうぜ英語の書籍も

書店員は「アーティスト」か、それとも

ちょっと過激なことを書いたので有料とさせていただきます。 義理で購入していただく必要はもちろんありません。今後の書店員のあり方や政府及びメディアが持ち上げがちな「書店員像」に対する違和感について、普段よりもリミッターを緩めた形で愚見を述べています。チェーン展開している本屋で働くことに関心がある方へ向けた私なりのアドバイスも。 ぜひ。 ******************* 本屋について調べています。 様々な同業者のお話に触れてきました。特に選書の妙を打ち出す、いわゆ

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「待望の実写化」と「シェア型書店」

2022年に「塞王の楯」で直木賞を獲った今村翔吾さんの時代小説「イクサガミ」が、Netflixで実写化されます。岡田准一さんが主演、プロデューサー、アクションプランナーを務めるとのこと。 なお原作はまだ完結していません。「天・地・人」の三部作とされていて毎年一冊ずつ出ているので、今年中に「人」が刊行されるはず。 コミック版も出ています。こちらは現時点で3巻まで。 明治11年の日本を舞台にした「バトル・ロワイヤル」であり、三浦建太郎「ベルセルク」やコーマック・マッカーシー

「こんばんは」と「お騒がせしました」

他団体のトップスターが乱入して宣戦布告。 かつてのプロレス界では、よく見られた光景です。 いわゆる「こんばんは」事件が真っ先に頭に浮かびました。 1981年9月、新日本プロレスの田園コロシアム大会に乱入した元・国際プロレスのラッシャー木村選手が、マイクで「こんばんは」と律儀な挨拶をしたのです。 当時は会場のファンを拍子抜けさせ、失笑を買ったとか。いまの私なら逆に凄みを感じます。アウェイのリングで、周りを囲むレスラーやファンも敵意剥き出し。そんな状況で堂々と「こんばんは

イチ末端書店員が「経産相と本屋経営者の会合」に思うこと

いくつかの記事を読み、どういう話し合いがされたのかを掴みました。 「カフェを併設したりイベントを企画したりしてお客を集めたという取り組みの報告」 「地域の図書館の本の貸し出しや返却を書店でできるようにしたところ、本の売り上げが増えた」 「万引き防止や在庫管理の効率化のためにICタグを導入する後押しを」 「利益率が低いので、キャッシュレス決済の手数料が負担」 「補助金申請の際の手続きの簡素化」 「書店を増やすための創業資金の助成などの支援を」 図書館との連携強化はイメージが