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右でも左でもなく、善でも悪でもない一庶民。本を出すことが夢の「流しの書店員」。愛書家&…

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右でも左でもなく、善でも悪でもない一庶民。本を出すことが夢の「流しの書店員」。愛書家&プロレスマニア。スポーツ、音楽、政治等に関するコラムを毎日更新。書評も有。「読む」と「書く」で己と読者を昨日よりも幸せに!https://bookmeter.com/users/49241

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    その名の通りです。

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    ハードボイルドな書店員が綴る、本屋が舞台の掌編小説。いつか紙の本で書籍化したい。毎週日曜日に更新。

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私小説「私が『ハードボイルド書店員』になるまで」前編

20××年3月中旬。休日の午前中。部屋で携帯電話が鳴った。 「○○くん? 店長のYです」「おつかれさまです」「職探しは進んでる?」「ええ、今度×××書店と面接を」「ちょっと状況が変わってさ。まだウチで働く気、ある?」「えっ」「雑誌担当がひとり、来月で辞めることになってね。急な話なんだけど、よかったらどうかと思って」「……」 Hさんの顔が頭に浮かんだ。数週間前にいつもの飲み屋で交わした会話も。「俺、また調査役から『雑誌やらない?』って誘われたんだよね」「またですか。もう引き受

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    • 書店員は「アーティスト」か、それとも

      ちょっと過激なことを書いたので有料とさせていただきます。 義理で購入していただく必要はもちろんありません。今後の書店員のあり方や政府及びメディアが持ち上げがちな「書店員像」に対する違和感について、普段よりもリミッターを緩めた形で愚見を述べています。チェーン展開している本屋で働くことに関心がある方へ向けた私なりのアドバイスも。 ぜひ。 ******************* 本屋について調べています。 様々な同業者のお話に触れてきました。特に選書の妙を打ち出す、いわゆ

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      • 「待望の実写化」と「シェア型書店」

        2022年に「塞王の楯」で直木賞を獲った今村翔吾さんの時代小説「イクサガミ」が、Netflixで実写化されます。岡田准一さんが主演、プロデューサー、アクションプランナーを務めるとのこと。 なお原作はまだ完結していません。「天・地・人」の三部作とされていて毎年一冊ずつ出ているので、今年中に「人」が刊行されるはず。 コミック版も出ています。こちらは現時点で3巻まで。 明治11年の日本を舞台にした「バトル・ロワイヤル」であり、三浦建太郎「ベルセルク」やコーマック・マッカーシー

        • 「こんばんは」と「お騒がせしました」

          他団体のトップスターが乱入して宣戦布告。 かつてのプロレス界では、よく見られた光景です。 いわゆる「こんばんは」事件が真っ先に頭に浮かびました。 1981年9月、新日本プロレスの田園コロシアム大会に乱入した元・国際プロレスのラッシャー木村選手が、マイクで「こんばんは」と律儀な挨拶をしたのです。 当時は会場のファンを拍子抜けさせ、失笑を買ったとか。いまの私なら逆に凄みを感じます。アウェイのリングで、周りを囲むレスラーやファンも敵意剥き出し。そんな状況で堂々と「こんばんは

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        私小説「私が『ハードボイルド書店員』になるまで」前編

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        記事

          イチ末端書店員が「経産相と本屋経営者の会合」に思うこと

          いくつかの記事を読み、どういう話し合いがされたのかを掴みました。 「カフェを併設したりイベントを企画したりしてお客を集めたという取り組みの報告」 「地域の図書館の本の貸し出しや返却を書店でできるようにしたところ、本の売り上げが増えた」 「万引き防止や在庫管理の効率化のためにICタグを導入する後押しを」 「利益率が低いので、キャッシュレス決済の手数料が負担」 「補助金申請の際の手続きの簡素化」 「書店を増やすための創業資金の助成などの支援を」 図書館との連携強化はイメージが

          イチ末端書店員が「経産相と本屋経営者の会合」に思うこと

          「阪神6連勝」と「書棚の文脈」

          巨人戦でいわゆる「負け試合」に負けず、空気が変わりつつあると感じました。そして迎えた中日との3連戦。まさかスイープしてしまうとは。 6連勝&単独首位。分岐点になった気がします。 流れが良くない時こそ中身重視。報われぬ展開が続いても投手陣が粘り強く投げ、悪くない内容で負けていたことが好況をもたらしたのでしょう。 書店にも売り上げの厳しいシーズンはあります。 かつて上司に「芥川&直木賞が1月と7月の中旬なのは、本が売れない時期だから」と教えられました(真偽のほどは定かでは

          「阪神6連勝」と「書棚の文脈」

          ハードボイルド書店員が考える「ギムレット」の真意

          全日本プロレスの若き王者・安齊勇馬選手が、新必殺技を披露しました。 その名もギムレット。肩車で抱えた相手を、捻りながらパワーボムのように落とす強烈な一撃です。 意味はふたつ。直訳の「錐」は技の外観を物語っています。 もうひとつ。ハードボイルドファンには言うまでもありませんね。 いくつかの訳で楽しめるレイモンド・チャンドラーの名作です。 試合を終わらせ、対戦相手とお別れをする切り札にこの名を冠したセンスが秀逸です。来月25歳になる安齊選手がチャンドラーを読んでいるのな

          ハードボイルド書店員が考える「ギムレット」の真意

          ハードボイルド書店員日記【183】

          「求人情報誌は置いてますか?」 学習参考書を品出ししていた平日の午後。棚はすでにパンパンだ。下の収納スペースも氾濫寸前。売れる時期なのはわかる。だが取次が毎週補充してくれるのにここまでストックを持つ必要があるのか。返品が増えるばかりで環境にも悪い。嫌な世界だ。 小柄な女性に声を掛けられた。白いプルオーバーパーカーに黒縁メガネ。同年代かもしれない。 「昔はいくつかありましたが、現在はほぼフリーペーパーのみです。メトロの駅構内にタウンワークが」 「ありがとうございます」 言

          ハードボイルド書店員日記【183】

          本好き&本屋好き&書店員にオススメの「ほぼ哲学書」

          暇な時間にレジで同僚と話をします。 基本的には本に関することだけ。ちょっとした一言が選書や仕事への取り組み方を見直すヒントに繋がります。 数年前、純文学好きの同僚と某作家の話をしました。好きだけど「面白い?」と訊かれて「面白い」と返せる本ではない。不遜にもそう伝えたら、彼は軽く笑ってこう返しました。 「それが文学のいいところじゃないですか?」 たとえばある書籍が「さほど売れそうにない」と評されたら否定的なニュアンスを感じますよね? しかしそうとは限らない。「さほど売れ

          本好き&本屋好き&書店員にオススメの「ほぼ哲学書」

          「人生は徒労じゃない」と信じる

          興味深い本が出ました。 著者は「ひとり出版社」夏葉社の創業者・島田潤一郎さんです。 版元は「夜と霧」などで知られるみすず書房。208ページでお値段は税込2530円です。「短篇小説のような読書エッセイ37篇」とのこと。 簡潔で力強いデザイン。手触りが想像できます。 夏葉社の本も指に心地良い紙の質感と重さ、そして無粋な情報を排したシンプルな帯が特徴です。みすず書房のそれらにインスパイアされた部分もあるのでしょうか。 そして気になる「みすずの新刊」がもう一冊。 20世紀

          「人生は徒労じゃない」と信じる

          ドラマも映画も「○○」が素晴らしい

          来ました!! 「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフに留まらず、それ自体が荒木飛呂彦さんの代表作として認知される「岸辺露伴は動かない」の新作ドラマが放送決定です。 タイトルは「密漁海岸」。原作は↓に入っています。 登場するイタリアンのシェフ・トニオさんは↓が初登場です。「ジョジョ」を知らなくても楽しめるはず。読むとサイゼリヤが恋しくなります。 2020~22年は、ドラマ「岸辺露伴は~」が年末のささやかな楽しみでした。ただ昨年は5月に映画が公開されたこともあってか、新作の

          ドラマも映画も「○○」が素晴らしい

          書店員が「なかなか検索できない雑誌」の話

          先月末に↓が発売になりました。 いまは年に1回の不定期刊行となっています。昨年も3月の同時期に出ました。 発売されるといいペースで売れます。しかしお問い合わせを受けて検索してもなかなかヒットしません。 原因は5ケタの雑誌コードが、同じ版元の季刊である「文字の大きな時刻表」と同じ「03842」だから。 コードを打ち込み、在庫情報に当たることができても、ちゃんと発売日を確かめないといけません。2月に出た方のデータは「文字の大きな~」のそれです。 女性誌の通常号、増刊、ス

          書店員が「なかなか検索できない雑誌」の話

          「トライ&エラー」と「人間だよ!」

          新しいことをどんどん試し、思うような成果が上がらなければ手を引き、べつのアプローチを目論む。挑戦と失敗、微調整を繰り返し、少しずつ目標の達成へ近づく。 「トライ&エラー」と呼ばれる方法論です。 悩ましいのは切り替えのタイミング。株の損切りと本の返品を同一線上では考えられません。同じ書店でも、常に賑わうコミックの棚とさほど混まない人文書のそれでは基準が変わってきます。 「ストロングスタイル」を裏切った成田蓮選手が、元・同志の鈴木みのる選手とシカゴ大会で闘いました。 昨年

          「トライ&エラー」と「人間だよ!」

          「どの本屋へ買いに行けばいいか?」の指針

          書店で働いています。 にもかかわらず、休みの日も本屋へ赴くことが多いです。 「仕事のために」という勉強感覚もゼロではありません。でも基本は楽しみたいから。「答え」ではなく「問い」をくれる予期せぬ一冊との出会いを期待したいから。 とはいえ、世の中に本屋はたくさん存在します。いったいどこへ買いに行けばいいのか?  ↓を指針にすることをオススメします。 「あしたから出版社」「古くてあたらしい仕事」などの著書で知られる島田潤一郎さんが運営する夏葉社のサイトです。 「最も好

          「どの本屋へ買いに行けばいいか?」の指針

          ハードボイルド書店員日記【182】

          「月末に○○書店がオープンするね」 週刊誌を買いに来た常連の老紳士がレジで呟く。 春休みが終わって落ち着いた平日。尤も数週間後にはゴールデンウィークがやってくる。「お客さんは、自分が休んでいる時に周りが動いていることを当然と考える」メンターが年明けの朝礼で話した言葉を噛み締めた。 「知りませんでした。教えていただいてありがとうございます。すぐ近くですか?」 「高速道路を挟んだ反対側だね。△△ビルの1F」 何度か足を運んだことがある。当時はカフェチェーンや北欧系のインテリ

          ハードボイルド書店員日記【182】

          「新しい環境でモヤモヤを抱える」人へオススメの一冊

          4月もそろそろ中盤です。 新しい環境に馴染めず、もしくは「思ってたのと違う」と戸惑い、モヤモヤを抱える人が少なからずいるはず。私もそうでした。 新卒で入った営業会社。朝8時スタートで帰宅は早くても夜10時半。出社時間はまだしも、帰りがここまで遅いとは面接で言われなかったし募集要項にも書かれていなかった。しかも休みは週1日。 同期が初オーダーを挙げた直後に「義理は果たしたよ」と言い残して去ったのが、ちょうどいまぐらいでした。 書店員になってからも、雑誌チームを仕切ってい

          「新しい環境でモヤモヤを抱える」人へオススメの一冊