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イチ書店員が「町で唯一の本屋」に思うこと
嬉しいニュースです。
北海道・南西部の白老町(しらおいちょう)に、町の本屋「またたび文庫」がオープンしました。同町に本屋ができるのは30年ぶりらしいです(5年前までは文具店が一部書籍を扱っていたとか)。
↑いわく「話題の小説など新刊約800冊を扱い、学術書などの専門書や児童書、実用書の古書も約1000冊置く」とのこと。町で唯一の本屋だから、あらゆるジャンルをひと通り押さえている感じでしょうか。
「なんでもある」「どれでもある」「無形の財産」
伝説は終わらない。
昨年3月に閉店した「八重洲ブックセンター本店」のレガシーを継ぐ「八重洲ブックセンター・グランスタ八重洲店」が6月14日に東京駅構内にオープンします。
営業時間は10時から21時で、場所はグランスタ八重洲の地下1階とのこと(八重洲地下中央口より徒歩1分)。72坪のワンフロア店のようです。地下1階~地上8階の9フロアに1400坪あった本店とは異なるアプローチで、意外な出会いを提
ハードボイルド書店員日記【184】
「すいません、抜けます」
GWの真っ只中。通常よりもやや大きいハヤカワ文庫のカバーを折っていられたのは開店から20分までだった。
「絵本を3か所に配送したい」という小柄な老婦人が来た。送料がどれだけかかっても構わない、孫に贈りたいとのこと。遅番が出勤する13時半までは3人しかいない。店長が伝票の作成や梱包のためにカウンターから離れ、残りはふたり。電話がずっと鳴り続けている。
そしていま、客注
「本を売ることに力を入れたい書店員」と「強い新日本プロレスを取り戻したいレスラー」
先日こんな小説を書きました。
本は利益率の低い商材。だから雑貨や文具、催事などで補う必要がある。わかっています。それでも「本屋の売りは本」という考えを捨てたくない。そんな熱を込めた掌編です。
本屋の売りが本なら、新日本プロレスのそれはプロレスです。にもかかわらず、広島大会でおこなわれたKOPW争奪戦は3ラウンド制で、1ラウンド目はマツダ車のタイヤをリング上で4つ積み上げた方が勝利。2ラウンド目
イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」
なんと。
昨年6月にコーマック・マッカーシーが亡くなった際も思いましたが、なぜこの方にノーベル文学賞が与えられなかったのか。。。
私がオースターの本を初めて読んだのは2015年。↓です。
ひとりの若者が人生に絶望して街を彷徨い、やがて師となる存在に出会う。住み込みで働き、奇妙な暮らしを続けるなかで、彼は少しずつ成熟を遂げていく。青春小説の傑作です。
当時、まさに人生に絶望しかかっていました
「○○の文庫本」と「自分だけの何か」
↓を堪能しました。
具はきくらげとブツ切りの長ネギ。あと納豆を二パック食べて夕ご飯にしました。
どんぶりカップもいいけど、袋麺の方が断然美味く感じます。
ラーメン屋へ入る際は、高確率で味噌を頼みます。しかしサッポロ一番では断然塩派。醤油や味噌も食べますが、結局は塩へ戻ってきます。
味に惹かれているのは間違いない。でも味噌や醤油も大好きなのです。なぜ塩に執着するのか。そもそも多くの即席麺が世
書店業界の「ややこしい」を考える
笑ってしまいました。
でも当事者からしたら切実なはず。
たとえば新刊コミックやアイドル写真集の特典で、公式が「三省堂書店限定」と紹介しているのをお客さんが勘違いして三洋堂で買い、なぜもらえないのかと騒ぐケースは普通にありそうです。
某書店に勤める知人から以前に聞いたのですが、年に数回は「アップルパイまだ残ってる?」みたいな電話を受けるとか。スーパーと混同しているのでしょう。読み方も一緒だし仕
私小説「ハードボイルド書店員の独り言」
雨上がりの朝七時。誰もいない路地を歩く。
タバコの残り香が鼻孔を掠める。湿ったアスファルトに自転車が踏みつぶした吸い殻。舌打ちはいつしか堪える方に過半数を譲った。
今日は昨日よりも混むだろう。
連日前年比を超えている。外国人観光客のおかげだ。彼ら彼女らが買うのは帆布を使った鞄。北斎や写楽や鹿苑寺のポストカード、そして文房具各種と期間限定で並べている動物のぬいぐるみだ。イングリッシュブック?
書店員は「アーティスト」か、それとも
ちょっと過激なことを書いたので有料とさせていただきます。
義理で購入していただく必要はもちろんありません。今後の書店員のあり方や政府及びメディアが持ち上げがちな「書店員像」に対する違和感について、普段よりもリミッターを緩めた形で愚見を述べています。チェーン展開している本屋で働くことに関心がある方へ向けた私なりのアドバイスも。
ぜひ。
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本屋について調べ
「待望の実写化」と「シェア型書店」
2022年に「塞王の楯」で直木賞を獲った今村翔吾さんの時代小説「イクサガミ」が、Netflixで実写化されます。岡田准一さんが主演、プロデューサー、アクションプランナーを務めるとのこと。
なお原作はまだ完結していません。「天・地・人」の三部作とされていて毎年一冊ずつ出ているので、今年中に「人」が刊行されるはず。
コミック版も出ています。こちらは現時点で3巻まで。
明治11年の日本を舞台にした
イチ末端書店員が「経産相と本屋経営者の会合」に思うこと
いくつかの記事を読み、どういう話し合いがされたのかを掴みました。
「カフェを併設したりイベントを企画したりしてお客を集めたという取り組みの報告」
「地域の図書館の本の貸し出しや返却を書店でできるようにしたところ、本の売り上げが増えた」
「万引き防止や在庫管理の効率化のためにICタグを導入する後押しを」
「利益率が低いので、キャッシュレス決済の手数料が負担」
「補助金申請の際の手続きの簡素化」
「
「阪神6連勝」と「書棚の文脈」
巨人戦でいわゆる「負け試合」に負けず、空気が変わりつつあると感じました。そして迎えた中日との3連戦。まさかスイープしてしまうとは。
6連勝&単独首位。分岐点になった気がします。
流れが良くない時こそ中身重視。報われぬ展開が続いても投手陣が粘り強く投げ、悪くない内容で負けていたことが好況をもたらしたのでしょう。
書店にも売り上げの厳しいシーズンはあります。
かつて上司に「芥川&直木賞が1月と
ハードボイルド書店員日記【183】
「求人情報誌は置いてますか?」
学習参考書を品出ししていた平日の午後。棚はすでにパンパンだ。下の収納スペースも氾濫寸前。売れる時期なのはわかる。だが取次が毎週補充してくれるのにここまでストックを持つ必要があるのか。返品が増えるばかりで環境にも悪い。嫌な世界だ。
小柄な女性に声を掛けられた。白いプルオーバーパーカーに黒縁メガネ。同年代かもしれない。
「昔はいくつかありましたが、現在はほぼフリー
「人生は徒労じゃない」と信じる
興味深い本が出ました。
著者は「ひとり出版社」夏葉社の創業者・島田潤一郎さんです。
版元は「夜と霧」などで知られるみすず書房。208ページでお値段は税込2530円です。「短篇小説のような読書エッセイ37篇」とのこと。
簡潔で力強いデザイン。手触りが想像できます。
夏葉社の本も指に心地良い紙の質感と重さ、そして無粋な情報を排したシンプルな帯が特徴です。みすず書房のそれらにインスパイアされた部