みんな人間だから

なるほど。GMと兼任はきつそうだなと思っていましたが、要は「監督を引き受けてくれる人がいないから、自分でやらざるを得なくなった」と。確かにそう考えると腑に落ちます。

最下位から3位に躍進させた平石監督を1年で解任し(シーズン途中で就任した監督代行時代も含めれば2年)、4位に終わったけど続投するはずだった三木監督もファンの批判に押される形でやはり1年で解任。つまり「楽天の監督は1年で結果を出さないとクビになる」という前例をこれでもかとばかりに打ち出してしまったわけです。そりゃ誰もやりませんよね。

とはいえ、その状況を作った原因を石井GMひとりに押し付けるのは違います。彼がGMに就任したのは2018年。その前から楽天は「結果の出ない監督を1年で切る」ことを続けていた球団なのです。初代の田尾監督や元広島のブラウン監督、そして星野さんの後に就任した大久保監督。これはオーナーの意向でしょう。石井GMはそれに素直に従っていた、というか「オーナーならこうするはず」と忖度していたのだと思うのです。

プロは結果が全て。間違いありません。と同時に、1年で必ず成果を挙げられるような甘い世界でもない。「大金を出して優秀な選手を集めれば毎年優勝できる」という考えの誤りはかつての長嶋巨人を見れば一目瞭然。現代の最強球団・ソフトバンクのエースとレギュラー捕手が育成出身ということからも明らかです。そして若い選手が戦力になるにはどうしても時間がかかります。なぜか? ロボットではなく人間だから。

「KAMINOGE100号」に書かれていたのですが、新日本プロレスLA道場のヘッドコーチである柴田勝頼は会社から「どのくらいのペースで選手を輩出できますか?」と訊かれて「そんなすぐにできるわけねえじゃん! 人間だよ」と返したそうです。どの業界に身を置く人でも頷ける普遍の真理ですよね。そしてそれは選手や現場の末端に限った話ではなく、監督やコーチも同じ。外部から実績のある人を招聘しても上手くいかないことが多いのです。未経験ならなおさらでしょう。管理職にも「育てる」という意識は必要なのです。

楽天ファン、いやそれ以上にメディアには、もし石井監督が1年で結果を出せなくても「いままでがそうだったんだから、おまえも辞めろ!」と騒がないで欲しい。悪しき前例を踏襲していたら何も改善されません。みんな人間なんです。何年待っても駄目なら言うべきですけどね。

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