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「西洋の敗北」が招く世界の激変 - エマニュエル・トッド氏インタビュー

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ウクライナ戦争が引き起こす西側世界の変容

エマニュエル・トッドは最新刊「西洋の敗北」で、ロシアによるウクライナ侵攻後の世界の激変を人口統計や歴史、人類学などの視点から解説しています。エマニュエル・トッドによると、ウクライナの敗北は結果として西側自体の敗北をも意味し、世界の自由主義陣営が後退することになると指摘します。

リベラルと非リベラルの二極化が招く混乱

エマニュエル・トッドは西側をリベラル派と非リベラル派の2つに分け、前者の敗北こそが西側全体の敗北であるとしています。グローバリズムを推進するリベラル勢力の退潮は、世界における西側の指導力低下を意味する一方、国内では極右や保守主義が台頭する結果を招くと分析しています。

アメリカの衰退 - 経済力と文化的価値観の低下

エマニュエル・トッドはアメリカの産業力や技術力の低下についても指摘します。例えばGDPに実質的な富の生成を表す「実質国内総生産」という指標を用いると、アメリカの国力の衰えが如実に表れるそうです。またプロテスタント的価値観や実践の崩壊がアメリカ社会の精神的基盤を揺るがせているとし、これがアメリカの衰退の大きな要因の1つであるとしています。

ロシアの安定と「民主的独裁」

一方ロシアは、ソ連崩壊後の混乱を脱し、プーチン政権下である程度の安定を取り戻していると分析されています。エマニュエル・トッドはこのロシアの体制を「民主的独裁」と表現しつつ、野党指導者アレクセイ・ナワリヌイの刑務所内での死に言及するなど、決して民主主義が確立した状態とは言えないことを示唆しています。

エマニュエル・トッドは、宗教、文化、政治の視点から世界の変動を俯瞰的に捉え、興味深い示唆を提供しています。彼の分析が正しければ、これからの世界はより一層混沌とした状況に向かうことが予想されます。

まとめ

  • この記事は、Emmanuel Toddとのインタビューを通じて、ウクライナの戦争が西側諸国に与える影響について議論しています。

  • 人口統計学、歴史、人類学、そして彼の特徴的な研究方法である古代の家族構造の研究を用いて、西側諸国とロシアの戦争による大きな変革の説明を提案しています。

  • ウクライナがロシアに対する戦争で敗北した場合、それは西側諸国自体の敗北であると述べています。

  • 西側諸国を狭義のリベラル派と非リベラル派の2つのポールに分け、リベラル派の敗北が西側諸国の敗北であると主張しています。

  • アメリカの軍事産業複合体の不備や、アメリカのエンジニアの生産能力の低下など、アメリカの弱体化についても分析しています。

  • アメリカのGDPを「実質国内生産」という指標で修正し、アメリカの実際の富の評価を行っています。

  • プロテスタントの宗教的実践と価値観の崩壊がアメリカの衰退の原因の一つであると主張しています。

  • ロシアが安定化している一方で、西側諸国が自らの宗教的、文化的、経済的な進化によって敗北を招いたと述べています。

  • アメリカの衰退は1980年代から始まり、現在は社会的・宗教的な無意味さに至っていると指摘しています。

  • ロシアの政治体制を「民主的な独裁」と表現し、アレクセイ・ナワリヌイの死を指摘しています。

978-2073041135

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プーチン政権の批判者、ナワリニー氏を失う

1. ナワリニー氏の暗殺未遂と投獄

2020年8月、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリニー氏は神経剤「ノビチョク」による暗殺未遂事件に遭いました。一時意識不明の重体に陥ったものの、ドイツでの治療により一命を取り留めました。

しかし2021年1月、帰国後すぐに逮捕・投獄されます。欧州人権裁判所が即時釈放を要求したにも関わらず、ロシア当局はこれを無視。ナワリニー氏への弾圧が始まったのです。

2. 過酷な収容所への移送と死

2023年12月、当局はナワリニー氏を、シベリアの過酷な極北の収容所「ポーラー・ウルフ」へと移送します。さらなる人権侵害が危惧された中、2024年2月16日、ナワリニー氏の死亡がFSINから発表されました。死因は公表されず、遺体の引き渡しも拒否されたのです。

3. ロシア国内での反応と弾圧

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4. 国際社会の反応

一方で欧米をはじめとする国際社会からも、プーチン大統領を名指しで非難する声が上がりました。EU外交安保政策上級代表のボレル氏が国際調査を要求したものの、ロシア側はこれを拒否。真相究明への障壁となっています。

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引き続き動向を注視していきたいと思います。

https://booksch.com/go/me

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