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本にまつわること

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名は体を表す。というと聞こえはいいですが現状は「どのマガジンに設定しようかわからなくなってしまったもの」が体良く放り込まれています。あとZINEのネタとかも死んだように存在してい… もっと読む
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記事一覧

菅義偉『政治家の覚悟』(文春新書版)と刊行元・文藝春秋への抗議

 以下、菅義偉『政治家の覚悟』(文春新書版)とその刊行元である文藝春秋への抗議です。シンプルに言って、絶対に許される行為ではないです。

 信じられないので3つもリンクを貼ってしまいました。何度でも言いますが、ありえないです。出版社として。つまり、メディアとして。ということで、まずは文藝春秋への要求を述べます。

1. 公文書管理に関する記述が削除された新書版『政治家の覚悟』を絶版、ただちに市中在

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真摯な本にふれる

真摯な本にふれる

「ふつう」とか「常識」とか「世間」みたいなものの呪縛から逃れられるような本、というのを意識して扱いたいと思っている。ゆえにこだまさんの『夫のちんぽが入らない』は読後すぐに「生涯店頭に置きつづける」と誓ったし(そのときはまだ棚担当を持った書店員ではなかったけど)、この本が自分の「本屋とは」という問いへの答え、軸になるものだと思った。

あれから数年が経ち、そういった「誰かの光/救いになるかもしれない

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「こども読書ちょきん」をはじめます

「こども読書ちょきん」をはじめます

現在本屋lighthouseでは「売上1点ごとに10円」を各種団体や個人に対して寄付をする取り組みを行なっています。

これに加えてもうひとつ、同じく「売上1点ごとに10円」を「こども読書ちょきん」に充てる取り組みをはじめます(つまり10円はこれまでどおり寄付に、さらに10円を「ちょきん」に、計20円分が当店から還元されることになります)。

詳細はこんな感じです。たとえば

・12月の売上点数が

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本屋のみなさまへ:トランスビュー直接取引(取引代行)について簡単に

本屋のみなさまへ:トランスビュー直接取引(取引代行)について簡単に

2019/11/18追記・修正あり

トランスビューという、出版社なのか取次なのかよくわからないところでしこしこと働いているのですが、最近少しずつ世の認知度も上がってきて、というか取り扱い版元数の増加と良書の増加によって読者がトランスビュー扱いの本を所望する絶対数が増え、だがしかし書店側はあまりトランスビュー(の仕組み)を認知していない、故のあれやこれやが増えている、気がするので、ちょっとここらで

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恥をかきつづける、ということ

恥をかきつづける、ということ

明日、文学フリマ東京にて僕のマリさんの新作『まばゆい』を販売する。僕はその本に、版元としてかかわっている。編集をして、Adobeのソフトをなんとか使って、印刷会社のひとに多大な苦労をかけながら、作り上げた。

編集、しかも小説の編集をするというのは「答えのない」作業であって、さらに僕は編集すら未経験で、もはや本作りの何から何まで手探りでやりきった、し、これからもつづけていくのだけど、マリさんに「い

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#わたしたちのやっていき

B&Bでのイベントに行ってきた。
『かわいいウルフ』小澤さん、she is 竹中さん、『レトリカ』の松本さんが登壇する、大雑把に言うと「メディアのありかた」的なテーマのイベントだ。大雑把すぎてアレだが、いま言いたいのはこれから書くことであり、かつ電車を降りるまでの間に書きたいからこんな雑な冒頭となっているが、というかこんなこと書いてないでさっさと主題に入れよデコ助野郎。

内容が最高だっただけに、

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「あいちトリエンナーレ」と『この世界の片隅に』そして『1984』;過去=歴史を保持していくことの重要性について

あいちトリエンナーレでの「表現の不自由展・その後」の展示が中止になった。その日にテレビでは『この世界の片隅に』の映画が放映されていたこと。そして学生の頃に『片隅に』と『1984』の両者を、「過去への向き合い方」というような視点から論じたことがあったことを思い出し、きっとこれはいま改めて世に投げてみるべきなんじゃないかと、いまも昔も未熟な頭だけども、思ってしまった。ので、その論文を公開します。

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2019/07/05

大学生の頃。所属していた軽音サークルでよくバンドを組んでArctic Monkeys(アクモン)をやっていた彼は、よく女の子に振られていた。しかも毎回「なんでそうなる?」みたいな、まったくもって彼に非はないし、かつなかなか類を見ない振られかたをしていて、なんだかもう笑えてくる、いやもちろん彼は毎回悲しみと切なみをコップになみなみと注がれてしまっているのだけど、彼がそうやってわけわからん振られかたを

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電子書籍と紙の本は敵同士ではない、と何年言いつづけるつもりなのか

ユリイカの書店未来特集を読んでいて、改めてそう思った。敵同士ではないのは当たり前なので、もうそれを「ことば」だけではなく実際にそうなるような仕組みを作り証明しなくてはならない。

これはもう学生のころ、取次に入社する(そしてすぐに辞める)前から思っていることなのだけど、そろそろ僕の発言力というか影響力も「微々たるもの」にはなってきたので、ここに提案する。

書店店頭で電子書籍を購入できるようにする

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ハッピーエンドを迎えるためにすべきこと

幻冬舎、そして見城さんの対応について本屋がすべきことについて考えている。作家さんからの声はたくさん出ている。もちろん読者からも。

しかし本屋は声をあげにくい。以前の『日本国紀』騒動や昨夏の「新潮45」問題などでも同様だったが、本屋が出版社から本を仕入れて営まれるものである以上、どうしても上下関係を意識してしまい、批判の声をあげることが難しく思えてしまう。もちろんこれは作家-出版社間の関係でも同様

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2019/03/24

本のフェス2日目。あるいは総まとめ。

天気がとてもよかった。神楽坂の街歩きをしているひとも多く、ふらっと入ってきたひとも比例して多かったように思える。
とはいえだからといって本を買うひとも増えるかというとそうでもなく、1日目とあまり差のない売上数だった。ともに30くらいずつ、計60ちょっと。やはり本は「ついで買い」するものではないのだろう、もはや。ついで、に買うようなものは本の世界においてはもう

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2019/03/23

本のフェス1日目。あいにくの雨、が降ったりやんだり。気温は真冬並み。厳しい戦いだった。

のは身体だけで、心はあたたかい1日だった。本がたくさん売れた、ということはもちろんうれしいのだけど、本を通していろいろな会話をすることができた、ということがいっそうあたたかさをうんでいる。

こだまさんの本は特に会話の糸口になりやすかった。平積みしたちんぽの文庫にはタイトルを隠した全オビカバーがかかっていて、

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配本制度について

現在の出版業界の苦境は配本制度が生み出したものだと思っている。端的に結論というか理由を書いてしまえば、本屋に本を選ぶ力がなくなってしまったから、ということだ。

配本制度のすべてが悪いということではない。初回配本やサポート(リリーフ)配本に意味はある。ただそれは、あくまで書店員の補助としての役割であって、配本が主になってはならないのだ。

おそらくかつては本屋がすべての本を選んでいたのだろう。それ

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「よくわからない」ものを売っている、という恐怖

改めて本屋の異常性を感じてしまったので書いておく。

本屋には「自分にはよくわからないもの」がたくさん置いてあるわけだ。書店員でも。
日々入荷する大量の本、それらすべての良し悪しだったり正誤だったり、とにかくなんなりを判断することは不可能である。

しかしこれは「仕方ない」ことではなくて、むしろヤバイことなんだと思う。少なくとも「自分にはよくわからないもの」に値段をつけて売っているということに、怖

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