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エネルギーは好奇心の源

前から来てみたかった直島に今いる。夏の間はごった返すと聞いていたし、人ごみが苦手な私は、梅雨のとある週末に、危なっかしい表情を見せてくれる空を引き連れて、瀬戸内のこの美しい島にふら~っと来てみたのだった。こんな中途半端な時期に島に行く人なんているのかと思いきや、本当に外国人が多く、そしてたまたまか、たくさんのスペイン人に出くわし、青い海といい、青い空といい、青い目といい、どこに来てしまったのかと脳が心地よい混乱を覚える。色に吸い込まれる。ここはアートの島だから目の前に見えている事象を疑うことも島が与える旅人への宿題。こんなバカンス的な時の過ごし方にも感謝しなきゃ。

実はここに来た大きな理由のひとつに、安藤忠雄ミュージアムで当の本人がトークするというのがあった。大阪にこども図書館を寄付するという安藤氏がここにきて何を考えているのか、とてもとても興味があった。そもそも私は彼に憧れて建築家を目指し、大学では建築を専攻した。だから職業人として結局のところ建築を選ばなかった私が今に至る紆余曲折の元の元をたどると彼の創造物だし、人生にちょっぴり迷っている自分が今もいるから、話を聞いてみたかった。テレビや大きな講演会での世界の大建築家を小さく分けてもらうんじゃ満足しないから、生っぽい安藤さんを目の前でがっちり受け止めたいと思って、この小さな島の小さな美術館に行くしかないと。


現れた世界の安藤さんは、とっても普通で、人懐っこく、でもしっかりと足が地面に付いていて、浮ついていなくて、信念揺るぎない、純粋に世の中にこういう人は貴重なんだぁと思った。5年前の大手術後からか、とても精力的に社会の一人一人と関わろうとしているように私の目には映った。お金よりも何よりも健康であることが重要だと訴えていた彼はとても印象的で、さらには好奇心が人を前に突き進ませるのだと何度も何度も繰り返していた。ないものは考えて作れ、面白い友達に囲まれろ、そうすれば人生は結構おもしろいと。普通のことを普通じゃない人が熱く話すと、ものすごく浸透力がある。最後の質問タイム。思い切って投げてみた。「安藤さんの好奇心の源はなんですか?」と。


「エネルギーです。」

一瞬、不意打ちをくらい、訳がわからなかったが、「やっぱり本を読まなければだめだ。」と、不自然な感じではあったが自分が一番耳が喜ぶ反応が次に返ってきて、一気に心の園に喜びの花が咲く。そして30分サラッと喋った大阪のすごいおっちゃんは、バチャバチャとすごい音立てて降り出した瀬戸内流スコールの中をバンに乗って消えて行ったのでありました。

エネルギー炸裂の草間彌生アートもここ直島に。

このノートは、ここ直島にある Shioya Diner で書きました。

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