見出し画像

まとわりつくように感じる芥川賞感「蛇にピアス」

ゴールデンウイークのど真ん中、古本屋は田舎に佇むしけたお寺のように寂しさが漂いました。チーン。

今日は何もしていないうちに一日が終わりそう。そこでトレーニングに行きベンチプレスを上げた後に、本を一冊読みました。あの有名な芥川賞を受賞した「蛇にピアス」です。いつでも読めると思ってまだ読んでいませんでした。

この作品、面白いか面白くないか判断が難しい。ただし、読めるか読めないかと聞かれたら、間違いなく読める小説です。小説好きの人であれば引き込まれて一気に読み切ってしまうでしょう。つまり、文章は抜群に上手い。

主人公は美人で若い女性です。

耳に大きなピアス、舌には舌先を分けるためのピアス、そして背中に入れる麒麟の入れ墨。彼女は自己の肉体を存分に痛めつける選択を喜んで実行する。

彼氏はバカ。しかし純愛。なのに彼女は浮気する。

ここまで書いていて気がつきましたが、この主人公の女性は何もいいところがありません。倫理感も日常生活もぶっ飛んでいます。そして現実の彼氏との日常生活は本当にぶっ飛んでしまう。安全器具を装着せずにジェットコースターに飛び乗れば、そりゃそうなるよという展開です。しかもこのぶっ飛んだ物語のラストは読書が自分で考えなければなりません。

ゆえにAmazonのレビューなどでは、この作品はなにゆえに芥川賞を受賞したのかと疑問を呈するレビュアーが存在します。しかし店主はただただ単に素晴らしく文章が上手く、読ませてくれる小説だからと感じました。主人公の描き方はやっぱり凄い。読み終わった時はイマイチ面白さが分からない作品でしたが、考えれば考えるほどジワジワと理解が深まり、更に深く考えたくなる。そんな蛇のように脳にまとわりつく作品でした。

ちなみに著者の金原ひとみさんの作品は、先日読んだ作品も含めて非常に素晴らしい。他の作品も読んでみたいと思います。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?