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小川万海子『ウクライナの発見――ポーランド文学・美術の19世紀』読んだ

さて久しぶりのウクライナシリーズだ。

著者はポーランドで外交官をしているときにポーランドに関心を持ったというお方である。

なのでタイトルのとおり、ポーランドから見たウクライナって感じである。

ポーランド=リトアニア大公国に時代、ポーランドの貧乏貴族にとってウクライナは約束の地とか、乳と蜜が流れる地みたいなイメージだったらしい。英国にとっての西インドとかインドみたいな感じかな。

そして、そういうシュラフタと呼ばれるポーランド貴族のしめつけへの反発がフリメニツキーの乱である。ペレヤスラフ協定によりロシアが介入し、アンドルソヴォ条約により、ウクライナ東部を失うのであった。

さらに二度に渡るポーランド分割により19世紀を迎える前に国じたいがなくなってしまうのであった、、、ウクライナどころじゃないだろ。

本書は国じたいが無くなった19世紀ポーランドの芸術家たちの紹介である。

19世紀になってもポーランド人はウクライナへの憧憬を失うことはなく、ウクライナの寂寞たるステップを描き続けたのだ。

絵画や詩には疎いので、ほとんど頭には入ってこなかったが、ポーランドからウクライナがどのように見えていたかが興味深い。バルト海と違って、豊かな黒海沿岸のステップ地帯は、創作意欲をかきたてるなにかがあったっぽい。

あるいは度重なる独立闘争とその挫折が、ここではないどこかとしてのウクライナを題材として取り上げさせたのかもしれない。

またポーランドにはヨーロッパの東の防壁という自覚があるようだ。その文脈では、ウクライナやロシアはアジアに含まれているようで、異国情緒みたいなのもあったのだろう。


現ウクライナ領に生まれたポーランド人はたくさんいて、惑星ソラリスの原作者として知られるスタニワフ・レム、音楽家のホロヴィッツなどたくさん挙げられているが、知らない人ばっかりだった。


本書は2011年に出版されている。クリミア併合、ドンバス戦争以前であるから、きな臭い話はほとんどなく、気楽に読み流すことができた。

Kindle Unlimitedなので、手にとってみられてはいかがだろうか。

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