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短編小説『ねこのまち子さん』

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私が書いた短編小説『ねこのまち子さん』をまとめています
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記事一覧

『Every day is Exactly the Same.(原題:ねこのまち子さん、業務スーパーへ行く)』

『Every day is Exactly the Same.(原題:ねこのまち子さん、業務スーパーへ行く)』



 白いねこのまち子さんはねこですが二本脚で立って歩けますし、二本足で走ることができましたし、その上日本語を喋れて、そして一人カラオケもたまに行くようなねこでした。
 カラオケではちあきなおみの「星影の小径」を頑張って歌ったりしました。
 でもちあきなおみのようにうまく歌えないことはまち子さんが一番よく知っていました。
 そして「星影の小径」で歌われているようないつまでも誰かを愛すること、それが

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どてらねこのまち子さん『Yesterday Once More』

どてらねこのまち子さん『Yesterday Once More』



 駅前のピンク色のビルの4階にあるリードボーカル養成所は気がついたら血まみれでした。私は怯え震えていました。そして隣でどてらを着た二本足で歩き、言葉を喋る猫のまち子さんも震えていました。
「うにゃにゃにゃにゃにゃ・・・」
 私とまち子さんは血と臓物で一変してしまった光景に呆然としていました。
 そしてそんな血と臓物にまみれた部屋の中央に立つのは四次元で構成された四次元立方体の熊でした。
 四次

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どてらねこのまち子さん『Invaders Must Die』

どてらねこのまち子さん『Invaders Must Die』



私は家でアルコ&ピースのオールナイトニッポンの録音を聞いていた。外はシルバーリングの黒さびのように黒く、雨がぱらついていて時折窓にぶつかり南国のパーカッションのような音が部屋に響いていた。
 私はアルコ&ピースのラジオが好きだ。オ ールナイトニッポンもD.C.GARAGEも好きだ。その日は無性にオールナイトニッポン時代の『ジーパン飯』の回が聞きたくなり、それを聞いてい た。
 私は駅前で買っ

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どてらねこのまち子さん『LOVELAND,ISLAND』

どてらねこのまち子さん『LOVELAND,ISLAND』



山下達郎のカッティングギターが街を切り裂く。「うぉ~」とハイトーンボイスがビルをなぎ倒す。
凶暴化した山下達郎は手がつけられない。
CDを棚からひとつかみするように人々を掴んでは精神のイコライザーをかけて廃人に仕立て上げていた。
「うにゃにゃにゃにゃにゃ・・・」
そんな情景にどてら猫のまち子さんはどうにかせねばと憤っていた。しかしただ二本足で立って歩くだけの猫のまち子さんに何ができるわけではな

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どてらねこのまち子さん『Stayin' Alive』

どてらねこのまち子さん『Stayin' Alive』



ビージーズのステイン・アライブのBPMは103で、このリズムは心臓マッサージのリズムと同じだそうだ。
というわけで、今、私は頭の中でステイン・アライブを流しながら、道端で倒れた太った男に心臓マッサージをしている。
ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。ふんにゃかふんにゃかステイン・アライブ、ステイン・アライブ。
繰り返す。このステイン・アライブ。

突然街角で「うおおお

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どてらねこのまち子さん『Halcyon and On and On』

どてらねこのまち子さん『Halcyon and On and On』



どてらねこのまち子さんはコロッケが好きなので、よく商店街の肉屋のコロッケを買うのです。
「すいません。コロッケを3つください」とまち子さんが肉屋の主人に声をかけると肉屋の主人は人食いコロッケに襲われている最中でした。
「痛いっ!痛いっ!!たすけっ!!たすけええええ!!」と肉屋の主人が叫びます。その声にはごぽごぽと言う音が聞こえます。気管に血液が逆流しているのです。
 店の奥から肉屋の主人が助け

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どてらねこのまち子さん『Thousand Knives』

どてらねこのまち子さん『Thousand Knives』



どてらを着た二本足で歩くねこのまち子さんとファミレスに行ってご飯を食べていたときのことだった。
「宮本さん、わたし、こんなもの拾ってしまったんです」
とまち子さんはテーブルの上に白いうさぎのぬいぐるみを置く。
つぶらな瞳に口がエックスになっている顔のうさぎ。
「まち子さん。私の名字は岸本です。で、これはなんですか」
「岸本さん。これ、お腹を見てください」
ぬいぐるみのお腹の部分を見るとお腹のあ

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どてらねこのまちこさん『If you give me your heart』

どてらねこのまちこさん『If you give me your heart』



どてらを着た二本足で歩くねこの後ろ姿が見えたので「おーい、まち子さん」と話しかけたら、まち子さんは私に気がついて手を振り替えしてくれたところを、まち子さんの隣に止まった黒いバンからC.Wニコルの覆面を被った人間がまち子さんを捕まえて黒いバンに引きずり込んだ。
「あ、まち子さん」と言ったら、バンは私の方にもやってきて、C.Wニコルは私もバンに引き込む。
それから私はフランスパンの匂いがする紙袋を

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どてらねこのまち子さん『SAVE THE CHILDREN』

どてらねこのまち子さん『SAVE THE CHILDREN』

どてらを着た二本足でとことこ歩くねこの後ろ姿が見えたので「おーい、まち子さん」と話しかけたら、どてらねこのまち子さんは振り向いて「あら、竹本さんじゃないですか」と言う。私の名前は岸本だ。竹本ではない。「まち子さん。私の名前は岸本です」
「そうでした。岸本さん。こんにちは」
とまち子さんはお辞儀をしたので私もお辞儀をした。
どてらねこのまち子さんはスーパーの袋を下げている。
「まち子さん。スーパー帰

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