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稲佐山展望台

 稲佐山の展望台は、世界新三大夜景の長崎の夜景を、グルリと見渡せる素敵なところである。ここにいつだったか妻と2人で行った。当然ながら夜である。冬だったので寒かった。周りはアベック(表現が古い)ばかりである。
 展望台のレストランで、トルコライスを食べた。トルコライスといえば、一般的にはトンカツが入っている。そのためイスラム教徒の多いトルコからクレームが入ったと聞く。豚は食わないからだ。それなのになぜ、トルコライスというのか、ということだ。東洋(チャーハン)と西洋(トンカツ)の折衷であるこの料理を、東洋と西洋の間にあるトルコで表現したと聞いたことがある。
 ここのレストランのトルコライスは牛を使っている。だから問題はない。なぜ牛肉を使ったのかというと、差別化、高級化であろう。僕はこのめずらしいトルコライスを注文した。結構このメニューは人気があるらしい。
 トルコライスを食べながら、夜景を眺めた。ロマンチックな夜であった。
 そこへ東洋系の、見るからに日本人ではない中国人か、韓国人であろう、1人の若い女性が入ってきた。おひとり様で。非常に太った体躯で、見晴らしのいい窓際の席についた。そこで何かを注文し、(何を注文し食べたかはわからない)それがくると、食べだした。しかもクチャクチャ音を立てながら。何と下品な。それだけではなかった。いきなりレストラン全体に響くほどの音で、屁をかましたのだ。
 周りのアベックの様子は、どうだったかはわからないが、僕らも気にしない様に何もなかったように振舞った。ところが続けて今度は食べ終わったのだろうか、大きな音でゲップを発したのである。
 ありえない。どう考えてもアベックへの嫌がらせとしか思えない。僕と妻はその女性がまだいるうちにレストランを出た。1000万ドルの夜景が台無しである。
 その日、僕が勤める店の社員から、インフルエンザに罹ったとの報告を受けた。翌日、僕はインフルエンザに罹って、熱を出した。

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