死にたいけれど困ってはいない
新しい職場に来て3年、夫は適応障害がぶり返し、とうとうしんどくなって7月に退職した。仕事がないのは羨ましいけれど、私は連休のない仕事をやめる気もなく続けている。
すごくつらいわけでもなく、役所に健康保険や年金の手続きに行く夫にすごいなと思ってついて行く。
困ってはいない。夫がずっと家にいるとなると少し窮屈だけど、勉強するときくらいしか困らない。貯金もあるし。
何を思っているかわからないけれど、夫の口から死にたい消えたいといった言葉が出ることも減ったようだ。
……なのに私はどうやら、混み合ったギャラリーに行ったときコロナに感染したらしく、風邪のような症状をごまかしごまかし様子を見ていたら、3日目の昼に高熱が出て病院に行き、そのまま8日間の自宅療養に入った。
ほしくてもずっとなかった連休は、すべてコロナ療養になった。
療養が明けたらまたいつものパート生活に戻り、早く寝ればいいのにダラダラtwitterを見る。
無駄な時間の使い方。
休みの前の夜に唐揚げを食べることや、スーパー銭湯のボディケアを受けることくらいがご褒美。
困ってはいないし、多少は楽しみもあると思いつつ、ポークステーキを食べ過ぎて、久しぶりに便秘に苦しむ。
1か月以上経っても保険証が届かず、区役所に電話すると、保険証を配達した郵便局の方では受け取り済みとなっていると言われるが、夫も私も受け取っていない。
幸い、保険証は区役所ですぐ再発行してくれたものの、コロナの診察を受けた病院に、全額自己負担になっていた検査・診察代を返金してもらいに行くと、月をまたいでしまっているのでここでは返金できない、区役所に確認してもらってくれと言われる。
死にたくなる。
でも電車に轢かれるのは惨めだし、首吊りは苦しいし、スーパー銭湯の韓国式リンパエステに行こうと思っていたから、電車に乗ることにする。
寝不足だったせいか、首の後ろが凝り過ぎて痛かったけれど、おばちゃんの韓国式リンパエステのおかげでだいぶ体がほぐれて私は綺麗になった。
スーパー銭湯の帰り、駅前の書店に寄ったのに閉店間際で買う本が決まらず、慌てて沖縄物産展でめぼしいものを買っていく。ソーキそばや、ジューシーの素、海ぶどう。
家が近づくと、国道の周りから虫の声が響き、家に入れば開け放った窓からも虫の声がしんしん響き、私が死にたいときも死んだ後もきっと虫は鳴いている。
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