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生きてることを思い出す

夫の適応障害がぶり返して休職したり、職場の人が新型コロナに感染したため休日出勤したりといったことが重なり疲れて、次の休みにホテルへ泊まることにした。

都心のホテルで、ファンシーなキャラクターのアメニティが売りの、朝食つきプラン。

コロナ禍のためか、ターゲット層には手の届きにくい価格だったのか、思ったより空いていて、予約はすんなり取れた。

朝食はレストランから和洋のビュッフェが選べたが、おなかの調子がそんなによくなかったこともあり、動き回りたくないのでルームサービスを頼んだ。

ただ一人になって、ゆっくり朝食が食べたかった。

フレッシュオレンジジュース、プレーンオムレツにグリルドベーコン、全粒粉のトースト、プレーンヨーグルト、ホットコーヒー。アメリカ式の朝食。

ふんわりしたオムレツにナイフを入れると、中はとろとろ。ほとんど味つけのないオムレツは、小びんに入ったケチャップを使い切ってもしつこくはない。

3種あるジャムのうち、ブルーベリージャムをヨーグルトに入れようとバターナイフで取ると、不思議とほろほろ溶けていった。

広々したベッドでキャラクターのクッションを抱えて寝たせいか、前日までだるかった足は機嫌がよくなっている。

朝食のあとは、腹ごなしにスタッフおすすめの日本庭園を眺めることにした。

まだ肌寒く、マフラーをして来なかったのを後悔したが、日が出てきたせいか、池の鯉も昨日の夕方より元気に動いている。

日を背に受け、庭園を眺めると少し元気が出てきた。

庭をぐるりとめぐれば、木々は春に向け芽吹き、滝の正面に回ると水の音が荒々しい。

最後にもうひとたび日を背に受け、赤い橋の欄干越しに庭園を仰ぐと木々は青く、また私も冬を越して生きてきたことを思い出した。

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