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最近、気になって気になってしかたがない

あることが気になる。それについて考える。考えれば考えるほど分からない。

そんな経験、ありませんか?

“カラーバス効果”っていうのかな。いったん気になると、そのことばかり目にするようになります。

最近、気になって気になってしかたがないもの。

それは、読点です。文章を区切る、あの点「、」です。

文章を書くとき、読点をうつタイミングを決めていますか?それとも、感覚的に使っている?

前からなんとなく感じていたのですが、わたしの文章には読点が多い。ほかの方の記事と比べると、多めだなと思うんです。

読点を減らすべきなのか、このままでいいのか。考えれば考えるほど分からない。

書き終えた文章を推敲するとき、音読をしています。読点があると、そこで区切って読むので、読点多めのわたしの文章は、わりと細切れに読まなければいけません。

文章がプツプツ切れて、ササーッとひといきでは流れない。音読しながら余分だなと感じた読点を省いて、そのあとnoteにアップします。

ほかの方が書く文章の読点も気になります。読みながら、読点ばかりに目が行ってしまう。

小学校で、句点「。」のルールは習ったけど、読点のうちかたを習った記憶がありません。あまりにも昔過ぎて、忘れているだけでしょうか。

読んでいて“息継ぎしやすいところ”にうちましょう、という先生の言葉は覚えています。でも、“息継ぎしやすいところ”って人によるよね。

きちんとしたポリシーがないので、自分がなじんだ感覚で読点をうちます。その感覚は、インプットする文章に影響を受けているのかも。

文字を読むのが中毒レベルに好きなので、本・新聞・広告・看板・学校のプリント・食品成分表など、なんでも読みます。文字があれば、つい読んでしまう。

そのなかでも、1日のうち1番たくさん読むものは、ダントツに【特許明細書】です。特許翻訳者なので、日々、日本語で書かれた【特許明細書】を英語に翻訳します。この20年ほど、インプットする文章の多くが【特許明細書】の文章。

【特許明細書】とは発明の説明書です。その発明について特許を受けるために、特許庁に提出する書類。その書類は、独特の方法で書かれています。たとえば、こんな感じ。

読点、多いですよね。

その書類のなかに【特許請求の範囲】(クレームともいう)という項目があるのですが、たとえば、次のように書きます。

【請求項1】
送信装置と、
前記送信装置から送信されたブロードキャストパケットを受信する第1~第Nの受信装置と、
を備える通信システムにおいて、
各受信装置は、
各受信装置を一意に識別することを目的として付与される識別情報を設定する設定部と、
前記ブロードキャストパケットを受信したとき、前記設定部において設定されている識別情報に基づいて決定される各受信装置に固有のタイムスロットを利用して、前記送信装置に対して応答パケットを送信する応答制御部と、
を含むことを特徴とする通信システム。
(特開2010-213162)

非常に独特な書き方で、読点でこのように分かち書きにすることが多いのです。

【特許請求の範囲】は、特許が付与された場合に、その特許の権利範囲に直接影響を与える最も重要な部分です。

【特許明細書】を書く弁理士や特許技術者の方は、明確さを保ちつつ、できるだけ上位概念で包括的になるように、細心の注意を払い、文章を書きます。

誤解を生まないように、文章のかかり具合が不明瞭にならないように、きちんとした意思をもって読点をうちます。

なぜなら、発明がどれだけ優れていても、【特許明細書】の書き方が不十分であれば、その発明は、適切な保護を受けられなくなるおそれがあるからです。不明確な【特許明細書】は、発明が本来権利として保護されるべき範囲を狭めてしまうおそれがあります。

そうならないように、発明の権利範囲を明確にするために、【特許明細書】では多くの読点が使われます。1つの文章に読点があるか否か。それだけで、発明の権利範囲に天と地ほどの差があるからです。

その1つの例が、2009年の“サトウの切り餅”の切り込み技術についての特許侵害事件。 “サトウの切り餅”がキッカケで以下の2つの訴訟があり、サトウ食品に対し15億円余りの損害賠償が命じられた事件です。

(越後製菓→提訴→サトウ食品工業)
平成23(ネ)10002 特許権侵害差止等請求控訴事件
平成22(行ケ)10225 審決取消請求事件


このさいに争点になったのが、【特許請求の範囲】の文章の読点です。読点があるか否か。それが、特許侵害事件の判定に大きな影響をおよぼしました。

興味のある方はこちらをどうぞ。

特許業界では、読点がいかに大切で、どれだけ恐ろしいものなのか、よく分かる事例です。

だから【特許明細書】には、誤解を生まないように、文章のかかり具合が不明瞭にならないように、多くの読点が使われます。

このように、わたしが1番たくさん読む【特許明細書】は、読点のオンパレード。その影響を受け、わたしの文章には読点が多いのでしょう。【特許明細書】の読点の感覚がしみこんでいる。それが知らず知らずのうちに、わたしが読点をうつときのマイルールになっているのかもしれません。

みなさんは文章を書くうえで、読点についてのマイルールはありますか?


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