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「英語で話せない」のではなく「日本語でも話せない」のでは?

「ステイホーム中に『ずるいえいご』をやってみたの」

1年ぶりにランチをした友人が、突然そういった。

--- 「ずるいえいご」?なにそれ?

「英語」を修飾する形容詞が「ずるい」?「ずるい」ときたら「女」じゃない?

「ずるいえいご」と聞き、思い浮かんだのは「ズルい女」。つんくがボーカルを務めるバンド、シャ乱Qのヒット曲だ(古くてごめんなさい)。

--- 「ずるいえいご」?ピンと来ないし、イメージがわかないな。

ポカンとした表情のわたしを前に、彼女は「ずるいえいご」が新鮮だった、面白かったと興奮気味にまくしたてる。まぁ、そのスピードの速いこと速いこと。

おいてきぼりを食らいながら、彼女の話をアタマで整理する。


「ずるいえいご」とはオンライン英会話らしい。
講師はシンガポール在住の日本人女性らしい。
英会話レッスンの半分は日本語の講義らしい。


--- 英会話レッスンなのに、半分が日本語の講義なの?えっと・・・どういうこと?

「だからね、そのレッスンのコンセプトは『英語で話せないんじゃなくて日本語でも話せないんじゃないの?』なのよ」

--- うーん。分かるような分からないような。

「たとえばさ、外国の人に歌舞伎を説明しようとするでしょ?カミーノちゃん、説明できる?」

--- んーっ・・・歌舞伎の知識、ほとんどない。説明できない。日本語でも説明できないわ。

「ね?そこなのよ、ソコ!そこに目をつけたレッスンだから、今までの英会話とちがって新鮮なのよねぇ」

彼女は今まで他の英会話スクールに通い、続かずに辞めて、を何度も繰り返したらしい。

その彼女にとって「英語で話せないんじゃなくて日本語でも話せないんじゃないの?」は、目から鱗だったんだって。

彼女の説明によると「ずるいえいご」は2時間のオンラインレッスン。

テーマが決まっていて、前半1時間は、そのテーマに沿った専門の講師が日本語で講義をするのだという。

先日のテーマは占い。レッスンのゴールは「占いについて英語で話してみよう」。

レッスン前半で、有名な風水師が風水の基礎をくわしく教えてくれたそうだ。講義はすべて日本語。

「その講義だけでも十分価値があると思った」と友人は言う。

風水の成り立ちや、実生活でどう風水をとりいれて運を呼び込むかの講義は、それだけでもためになる情報が多く、とても楽しかったそうだ。

レッスン後半で、英会話講師が「占い」「風水」にまつわる英単語や表現を教えてくれる。

生徒は日本語での講義を思い出しながら、「占い」について英語で話をする、という設定らしい。

なるほど、なかなか興味深い。

テキストに書いてある英単語やイディオムをただ覚えるよりも、少しでも「実体験」に近いほうが脳に定着しやすいし、忘れにくい。

例えば、テキストブックに風水の話が出てきたとしよう。それをただザッと読んで風水関連の英単語を覚えようとしても、なかなか記憶には残らない。

でもこのレッスンでは、前半でプロの風水師から風水の知識を得ているので、日本語と英語をセットで覚えやすいんだろうと思う。

どんなシチュエーションでその英単語が出てきたか、ってわりと重要。その状況と英単語が強く結びつけば、記憶に残りやすいからだ。

この言葉、あのときに使ったあの単語だ!

シチュエーションは、脳内でインデックスの役割を果たす。

だから、1つのテーマについて講義を日本語でみっちり聞いたあと、そのテーマにまつわる英単語を習い、それを使って実際に話してみる、というこの方法はアリだと思った。

「ずるいえいご」のコンセプト、「英語で話せないんじゃなくて日本語でも話せないんじゃないの?」は身にしみて分かる。

英語で説明したくても説明できない。そういう経験、わたしにもあった。

それは単語や文法など、英語スキルとは別問題。そもそもそのトピックについての知識がなかったり、そのトピックについて深く考えたりしたことがない場合には、英語で説明したくても説明できないのだ。

つまり、同じことを日本語で聞かれても答えられない。そういうケース。

以前、我が家にステイしたドイツ人留学生に

「日本が受け入れる移民の数って、ヨーロッパの国と比べるとすごく少ない。それについてどう思いますか」

と聞かれたことがあった。

「日本は移民の受け入れ人数が極端に少ない」という事実は知っていたけど、具体的に1年で何人の移民を受け入れているのか調べたこともなかったし、移民を受け入れたがらない理由を深く考えたこともなかった。

コレ、日本語で聞かれても答えられないやつ。情けない。ただ情けなかった。

こんなこともあった。

日本の治安の良さは海外でも有名だが、日本で次のような状況を目にした留学生たちは、みんな一様にビックリする。


子どもだけで歩いて通学している。
放課後、子どもたちだけで外遊びをしている。
大人が電車の中で無防備に寝ている。
自動販売機がいたるところにあるのに、壊されたり盗まれたりしない。
フードコートで席をとるために、カバンを置きっぱなしにする。


「こういうことができるのは、日本の警察が優秀だからですか?どんなマインドセットをもっていれば、こんなことができるんですか?」

ブラジルの留学生にそう聞かれ、しばし固まってしまった。

どうして、って言われてもなぁ・・・昔からそうだし。どんなマインドセットなのか、英語で理由を説明するどころか、日本語でも説明できない。

--- どうして?って・・・ねぇ。だって、そうなんだもん。

心のなかで思わずそうつぶやいたことを覚えている。

こんなふうに、「英語で話せない」原因が単語や文法などの英語スキルの問題だけではない場合がある。

わたしのように知識不足だったり、ある事象についてしっかり考えるクセが身についていないと、「英語で話せない」。

日本語でも話せないことを英語で話せるわけがないのだ。

英語で話したい、英語でコミュニケーションをとりたいと思っても、そもそも「なにを話すのか」という「話すべきこと」がなければ話せない。あたりまえだけど。

そこを見落としがちで、「英会話」というと英語スキルを高めることばかりに目がいってしまう。でもそれだけでなく、英語で「話すべきこと」をストックする必要があるんだと思う。

知識や情報の収集を怠らず、自分のアタマで考えることをサボるなよ、と心に刻む。思考に深みと厚みがなければ、言語化できないのだから。

「英語で話せない」のではなく「日本語でも話せない」のでは?

自戒の念を込めて。

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