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シナリオシステム〜九日目〜

▽量子力学の巨神

▽酒場メギストスの玄関にclosedの文字が掲げられている。

▽シド「さて、そろそろ″ヘパイストス″のやつらが動く頃か……。なんともなければ良いが……。」

▽***″イスカが智を連れてメギストスのマイセンことハクジノカキエモンを探している頃。シドはヘルメスの正装に着替えていた。″

▽シド″ヘパイストスのやつら、″雷霆の理″を取り引きで手に入れたらしいからな……。製作に着手するまでにそこまで時間はかけないだろうし、そうなると、智の巨人(プロメテウス)が黙っちゃいないだろう。ありゃ最速最短最大効率の専売特許だ。″業火(カルマ)″の後始末が大変だぞ……。″

▽***″シドは闇夜に紛れると店を後にする。″

▽***″一方その頃のイスカたちはハクジノカキエモンを追いかけていた。雨が降るなか、車を走らせる。″

▽智「その…カキエモンさんてどんな人なんですか?」

▽イスカ「眼は利くんだけどねー。カルマ参照が厳しいロールらしくて。″雷霆の理″を見つけたー、なんて言って。今プロメテウスの連中に追われてると思う😥。」

▽智「カルマ参照ってその……変な力のことですよね?」

▽イスカ「そ、数あるカルマのパターンの組み合わせをソートして、他者の技能と似たものを踏襲していく。擬似人格を自身の器に入れるようにする私たちヘルメスの″泥棒の守護″の秘術よ。」

▽智「秘術って…あり得るんですか? そんな裏事情聞いたって…。」

▽イスカ「あるったらあーる!わたしが言うんだから間違いない!」

▽智「😅」

▽イスカ「とりあえず雷霆の理は不味いわ。」

▽智「なんでですか?」

▽イスカ「効率の試しにわざわざ危険なシャドウグラフを呼び寄せることになる。」

▽智″シャドウグラフ……影絵のことだった気がするが、なんかの比喩表現だろうな。″

▽***″智は質問変える。″

▽智「ところでその…雷霆の理って?」

▽イスカ「……。」

▽***″イスカはしばらく黙るとなめらかに口を開いた。″

▽イスカ「ものすごい速さは確かに雷霆のようだけど、落ちれば空を裂き地を灼く力にもなる。それが雷霆の理、の概要ね。神話・伝承からの警告よ。人々に御せない力の本流は、時に災害にも似た力だわ。私たちの秘術もそうだけど、人の為すスキルを鍛造することは、それ相応のリスクがあるわけ。優れた技術でも既存の概念を焼却して淘汰もする。それはプロメテウスの管轄だわ。」

▽智「もしかして…」

▽イスカ「情報の規模と質にもよるけど、場合によっては一つの旧概念を淘汰し得る。私たち人類はそれを神々の時代の円環(サイクル)として伝え聞いているわ。それを御するは智仁武勇、そしてそれを為す芯(シン)との和合。つまりは柱よ。」

▽智「…………(ごくり)。」

▽イスカ「マイセンのことだから無茶苦茶はしないと思うけど、彼のカルマは年代が神話の層に近いの。擬神……つまりは″出来上がった概念(ロジックゴースト)″はないものにはできない。仕方ないけど和合していくしかないわ。早くマイセンを見つけなきゃ。無事でいてよ、こんにゃろう…………」

▽智「その、プロメテウスさんは止められないんですか?」

▽イスカ「私たちトリックスターはその大部分が構造的な概念なの。芯(シン)を担う神人(しんじん)の概念。その在り方の体現よ。もう科学に淘汰されたけど、のちに技術や技法のデータベースとして中枢のイデアが補完し保管しているわ。プロメテウスは天からの篝火。ヘパイストスは擬神の鍛造。私たちヘルメスは伝承の仲介役。試練のエリスが災禍に傾く前に私たちトリックスターがどうにかしなきゃなんだけど…。」

▽智「御する器が必要、その…柱が?ということですか?」

▽イスカ「ぶっちゃけそういうことね。カルマは偉大だけどカキエモン自体は創作家だし、温厚な性格だからなんか″仕掛け″を施すでしょうけど……。」

▽智「あっアレ!」

▽***″そこには見えない光の巨神像のような8メートルほどの人型が微かに揺らめいていた。″

                 続く。



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