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小さい小さい生命

たった数週間お腹の中に芽生えた命が失われてしまった。
エコーで動く可愛い小さな心臓の動きなくなり、子宮の中に黒い丸い袋だけが写っている。

先生は、3日後もう一回見てみようかと言ってくれた。
でも、止まっている心臓が動き出すことなんてなかった。

1週間後に、掻爬する手術の日程が決まった。少しつわりがあったのに、それもなくなってしまうのか。つわりがあるということは、赤ちゃんが無事に育ってくれてるっていう喜ばしいことなんだなと実感した。
涙は、とめどなく出てくる。でも、その間も仕事を続けた。

その時私が勤務していたのは小児科で、産まれたばかりの赤ちゃんから、高校生位の子が入院していた。
赤ちゃんが多い病棟で働くのは、正直辛かった。
普段は、小さい身体で懸命に病気と闘っている赤ちゃんや、子供たちを誇りを持って看護していた。

でも、どうしても仕事が辛かった。時々トイレで泣いて、その後は、笑顔で頑張った。

手術の日、静脈麻酔をまた打たれた。あの世かこの世かわからない麻酔が効く瞬間に、嫌だっていう気持ちが強くあったのか、手術が終わって気がついた時には、泣き叫んでいた。無意識に、1週間の心の中の声を全部出してたみたいで、子供みたいに泣いていた。

たった数ミリしかなくても、命はいのち。
亡くしてしまった悲しみはなかなか消えなかった。

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