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飲食と人生 ( 取り留めのない放言とレシピ) その9

 香りとチーズ(匂いと発酵食品)
 昭和の時代、第二次世界大戦以後に始まる日本のチーズ文化は、プロセスチーズがほとんどでした。
 親から添加物(リン酸塩、クエン酸塩など)が有るから、食べないほうが良い、だのと言われて、ベビーチーズやスライスチーズを食べている同級生が羨ましくて仕方なかった。
 当時はナチュラルチーズも手に入りにくく、様々な個性的な匂いのあるものは文化的に浸透する素地も無かったのだろう。
 元来、玄米菜食でも、牛と乳牛、その乳製品は推奨されておらず、理由は日本人の体質というよりむしろ生産効率を上げるための技術革新という不自然な飼育方法や大量の抗生物質、ホルモン剤などだ と知ったのは ワインに興味を持った頃だった。もちろんニュージーランド式放牧由来の牛乳、伝統的製法のチーズは 素晴らしく美味い。    キザな言い方をすれば、その土地、その気候に育まれた
草や土の香りがするものが多い
。 
 山羊のチーズは、あの独特の山羊の匂いも有るものの、とても旨味が強いだけでなく、消化が良くてもたれない。( 後に詳しく書く予定ですが、栄養学、医学では 各栄養素、ミネラル、ビタミン等を詳しく分析結果に基づいて、より科学的に紹介されて居ますが 実際に 人体内に消化、吸収され、効果をどのようにもたらすかは
治験、実証されていないように常々、感じていて、何を食べるかについてはそれら同様以上に、消化、吸収、排泄が大事なのでは??と考えて居ます。)
 余談ばかりでスミマセン。

 私の本当の意味でのナチュラルチーズデビューは、山羊のブルーチーズです。 
 イタリアに長く留学(主にイタリア歌曲) していた料理好きの友人が、とても上手に??教えてくれたものです。
 ゆがいた熱々のパスタをボールに入れて、大量の山羊のブルーチーズを混ぜ込んで食べろと。一種の荒治療ですね。
  夏場の不潔な公衆便所と同じで、目から涙が止まらず、強いアンモニア臭で失明するのではないかと最初は思いました。
 彼は、単に わかった?? とだけ聞きましたが、3回目か4回目位までは、腐っている、肥溜めのニオイしかしない、( アンモニア臭ですからね。)
としか答えようがありませんでした。
 その後、パルメジャーノ レッジャーノを同様に料理?して食べると同系統の匂いも有るものの、軽く、いわゆるミルクの凝縮された味わいが有り、コレは良いね、となりました。
 驚いたのは、その次週に、また同様にブルーチーズに戻した時です。
 若干、涙目で、ブルーチーズってこんなに旨味が強く、複雑で、豊かなモノなんだと叫びたくなったのをいまでも覚えて居ます。
 ハード系のチーズでも、熱をかけたり、少し炙ると味、旨味が増して、それぞれ独特の(美味い香り)がしますよね。
 それらにカンパーニュ、{ もちろん地元産小麦(脱脂していない、有機農法や自然農法のモノ)  干しブドウからおこした天然酵母のパン }、サン・テミリオンのワインなどは抜群の取り合わせだと思えます。
 密かに、他文化を理解した気がして、気分も良いですね。
 チーズと同様に タンパク質が発酵してアンモニア臭を放つモノは、世界中に有ります。
 植物性タンパク質ですが、我が国にも納豆が有ります。匂いもそれなりにありますが、食後、獣肉と比べて胃腸への負担が少ないだけでなく、体内へのタンパク質消化が良くて、一部のボディービルダーにも愛用されて居ます。  更には腸内フローラの改善にも役立ちます。 
 アンモニア臭はしませんが河豚の刺し身の旨さもコレが関わっています。フグは、腎臓が無く、汗としてアンモニアを排出しているので、身自体に含まれていて熟成(蛋白質のイノシン酸発酵) を促すのです。2日から1週間程度寝かせた、(熟成された) 少し琥珀色した河豚の刺し身はどんな魚の刺身とも異なる旨味を持っていますよね。 

 時々、活け物の河豚をその場で鉄刺にしてもらって美味かったと自慢してる方もいらっしゃいますが。伝統のある河豚の扱いを識っている店で体験しましょう。
 韓国のフォンオフェも腎臓のないエイの発酵食品ですね。ニオイは凄いですが、伝統的には婚礼に供される美食とされて居ます。残念ですが私の経験では旨味は感じられませんでした。
 北欧にもシュールストレミングというニシンの缶詰が有りますが、修行不足の為か、発酵というより、腐乱しているとしか思えず、おまけに食後、下してしまいました。
 他民族の伝統を理解し尊敬できる文化人になる道のりは遠いですね。
 イカの塩辛は、発酵によってその旨味を最大限に教えてくれるモノの一つでは無いでしょうか。
 残念ながら、本当に美味いものは自作しか有りません。( イカの鮮度、塩素などの添加物のニオイ、塩分濃度に問題があるからです。)

 イカの塩辛の作り方
シマメイカは 生きている時は透明、死ぬと少し肌色になり、段々と濃く茶色になります。透明は無理でも、是非、活け物や色の薄い、まだ吸盤が吸い付くモノを手に入れて下さい。どうせ腐らせる(発酵させる)なんて乱暴な事を言ってはイケません。仕上がりが全く違います。
 直ぐに、足を引っ張って肝臓を破らないように抜き、ザルの上でに思いっきり塩をまぶし水抜きします。
 この肝臓で、色の濃いものは主に漁船等の船底塗料の水銀、鉛の影響で苦み、金属の味??がしますから、(本当です)  廃棄し、ほのかに薄い肌色のモノだけ使います。
 イカの胴体2−3に肝臓1つ位で、充分です。
 全て良好な場合は
4-5時間、塩で脱水後、酒洗いして再度、身の5−6%程度の塩をまぶして、瓶に吸水ペーパーをひいて、1週間頃から、切って食べてみて下さい。(熟成されて行くので頃合いはご自身で)   
 濃厚なので、きゅうりやイカの刺し身に和えるとそれだけで飯3杯、又は日本酒1合はイケます。
 私は 身は、皮とその下の薄皮を面倒でも取ります。皮ごと入れると烏賊臭さが強くなるからです。足も皮と吸盤が取りづらく、食感の好みもあって、他の料理(塩焼きや味噌煮)にしています。身を薄く全体に塩を振って、吸水ペーパーで挟んで毎日、薄塩、紙交換をして、3-4日後に肝臓の塩漬けと合わせます。
 切り身を食べてみて、ほのかな塩味なら、塩は3.8%ー4.2%、かなり塩味を感じるのであれば、それぞれ0.3%減らして下さい。(究極の薄塩味の塩辛を目指します。)
肝臓の塩漬けは縦に切り、中身を包丁の背で掻き出し、網で濾します。
( 肝臓内に結構な繊維質が有ります。食感を壊します。)
大切なのはこれからです。
猟師さんの豪快な丸ごと切って漬けるような塩辛の塩分濃度は約15%前後で樽につけっぱなしで1夏越します。
(約半年、シマメイカの旬は12月-2月ですからね)
  この塩辛は、毎日、朝晩しっかりと全体に空気を当てるように混ぜます。塩分濃度がギリギリなので、混ぜるのを怠ると嫌気性バクテリアが出て、腐ります。塩で雑菌の発生を抑えて、なおかつ塩辛の熟成を促す好気性バクテリアを維持、活発にするのです。混ぜながら味見していると1週間後くらいから、塩辛が出来てきます。今まで食べた事のない、まろやかな塩味、嫌な熟成香や皮のくさみのない一品です。
 その後、2-3週間で食べきって下さい。古くなるとキムチや白菜漬けに混ぜるととても良い相性を感じます。
 湯がいた新鮮なジャガイモに、グラスフェッドの牛乳から作った発酵バター(チャーンドバター)と塩辛は北海道の定番だそうで、納得の組合せです。
 1000や2000文字で書きようもないテーマで書き始めて、とても後悔していますが、題名通り、放言ということでご勘弁願います。書きたいことは山のように思い出されましたがこの辺で。
次回は、果物、フルーツで。
 
 
 

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