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【速報】共通テスト2022国語・古文「増鏡・とはずがたり」を15分で!問題&本文と解答、解き方のコツ【現役ライターの古典授業】

受験生の皆さま、受験が気になる皆さま、今年もこの季節がやって参りました~!

2022年1月実施(令和3年度、令和4年1月実施)の共通テスト国語の第三問・古文を解いてみます!

よく気にされる難易度としては、「難化した?」という意見もあるようなのですが、私は「本文やや難、設問は標準」だと思いました。
本文が2つありますが、同じような内容なので「文章比較」の部分もありました。しっかり読解できれば解ける問題です。

(なお全訳・現代語訳はコチラ↓↓↓わかりやすい?意訳もあるよ)

では、いきます!

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■問題開始。リード文(10秒):いきなり長い。

第3問
次の【文章Ⅰ】は、鎌倉時代の歴史を描いた『増鏡』の一節、【文章Ⅱ】は、後深草院に親しく仕える二条という女性が書いた『とはずがたり』の一節である。どちらの文章も、後深草院(本文では「院」)が異母妹である前斎宮(本文では「斎宮」)に恋慕する場面を描いたものであり、【文章Ⅰ】の内容は、【文章Ⅱ】の6行目以降を踏まえて書かれている。【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】を読んで、後の問いに答えよ。

長っ!! なっがっ!

ええ、しかも『増鏡』?
去年は『栄花物語』で、歴史物語の筆頭だったもんだから「2021年と2022年、連続で歴史物語は出ないやろ~」と思ってた予想を完全に裏切られた。

うーむ、もはや「センター古文はマイナーな出典が多い」っていう話は一昔前になったなぁ。当たり前か。もう共通テストなんだし。
共通テストは有名どころひとつ、もうひとつマイナーな文章か解釈文にてな関連性を問うみたいな感じになるのかもなぁ。

でも、院と斎宮(異母妹)の恋物語(っていうか、妹に恋するとか現代的にはヤバイ。昔はよくある話だったとはいえ、大抵こういうのはどっちかが困惑するもの←当たり前)なのね。
この2人の心情とやり取りがポイントっぽい(という心構えで読み始めるために、院と斎宮にマルと四角の印をつける)。

■本文(読解に約5分弱):「増鏡」はあらすじって感じ。「とはずがたり」は院の懸想度がヤバイ

【文章Ⅰ】
院も我が御方にかへりて、うちやすませ給へれど、まどろまれ給はず。ありつる御面影、心にかかりて覚え給ふぞいとわりなき。「さしはへて聞こえむも、人聞きよろしかるまじ。いかがはせん」と思し乱る。御はらからと言へど、年月よそにて生ひ立ち給へれば、うとうとしく習ひ給へるままに、慎ましき御思ひも薄くやありけん、なほひたぶるにいぶせくてやみなむは、あかず口惜しと思す。けしからぬ御本性なりや。
なにがしの大納言の娘、御身近く召し使ふ人、かの斎宮にも、さるべきゆかりありて睦ましく参りなるるを召し寄せて、
「なれなれしきまでは思ひ寄らず。ただ少しけ近き程にて、思ふ心の片端を聞こえむ。かく折よき事もいと難かるべし」
とせちにまめだちてのたまへば、いかがたばかりけむ、夢うつつともなく近付き聞こえ給へれば、いと心憂しと思せど、あえかに消え惑ひなどはし給はず。

【文章Ⅱ】
 斎宮は二十に余り給ふ。ねびととのひたる御さま、神も名残を慕ひ給ひけるもことわりに、花といはば、桜にたとへても、よそ目はいかがとあやまたれ、霞の袖を重ぬるひまもいかにせましと思ひぬべき御有様なれば、ましてくまなき御心の内は、いつしかいかなる御物思ひの種にかと、よそも御心苦しくぞおぼえさせ給ひし。
 御物語ありて、神路山の御物語などたえだえ聞え給ひて、
「今宵はいたう更け侍りぬ。のどかに明日は、嵐の山のかぶろなる梢どもも御覧じて御帰りあれ」
など申させ給ひて、わが御方へ入らせ給ひて、いつしか
「いかがすべき、いかがすべき」
と仰せあり。思ひつることよとをかしくてあれば、
「幼くより参りししるしに、このこと申しかなへたらむ、まめやかに志ありと思はむ」
など仰せありて、やがて御使に参る。ただおほかたなるやうに、「御対面うれしく、御旅寝すさまじくや」などにて、忍びつつ文あり。氷襲の薄様にや、
  「知られじな今しも見つる面影のやがて心にかかりけりとは」
更けぬれば、御前なる人も皆寄り臥したる。御主も小几帳ひき寄せて、御とのごもりたるなりけり。近く参りて、事のやう奏すれば、御顔うちあかめて、いと物ものたまはず。文も、見るとしもなくて、うち置き給ひぬ。
「何とか申すべき」
と申せば、
「思ひ寄らぬ御言の葉は、何と申すべき方もなくて」
とばかりにて、また寝給ひぬるも心やましければ、帰り参りてこのよしを申す。
「ただ寝給ふらむところへ、導け、導け」
と責めさせ給ふもむつかしければ、御供に参らんことはやすくこそ、しるべして参る。甘の御衣などはことごとしければ、御大口ばかりにて、忍びつつ入らせ給ふ。
 まづ先に参りて、御障子をやをら開けたれば、ありつるままにて御殿籠りたる。御前なる人も寝入りぬるにや、音する人もなく、小さらかに這ひ入らせ給ひぬる後、いかなる御ことどもかありけむ。

ぐわ~~~本文も長い!
注釈も多いし・・・(14個ある)!でも注釈にいちいち戻っていたらタイムロスなので、基本的にはわかりにくい読解部分だけを見るようにする。

しかし・・・この話は倫理観大丈夫なのか?(震え)

解いてるのは十代ですよ!? そこに「異母妹に夜這いしました。その後何があったのでしょう(含)」みたいなので終わるとか!!
この話自体が「いかがすべき、いかがすべき」やで。この後、授業で解説したりする先生方、いろいろ考えるやろなぁ・・・。

■問1(約1分):基本的な語彙(イは若干、変化球)。3問あるが1分あれば解ける

問1 傍線部の解釈として最も適当なものを選べ。

ア まどろまれ給はず
1)酔いが回らずにいらっしゃる
2)お眠りになることができない
3)ぼんやりなさっている場合ではない
4)お心が安まらずにいらっしゃる
5)一息つこうともなさらない

まどろむ」は「うとうとする」の現代語にも通じる定番語。
あとは「れ給はず」は「~なさることができない」(『れ』は可能。打消があるから)だな。
よし! これは秒で2!

イ ねびととのひたる
1)将来が楽しみな
2)成熟した
3)着飾った
4)場に調和した
5)年相応の

ふむ、「ねびととのふ」か。
ちょっとマイナーだけど、「ねびゆく(大人になる、成長する)」の単語が想像できれば解ける問題だな。
(若紫の「ねびゆかむさま、ゆかしき人かな」の、おばあちゃんの言葉がよみがえる・・・でも、それに引っ張られすぎると1を取っちゃうので思い出すのはほどほどに)
これも素直に「2」だな。

ウ おほかたなるやうに
1)特別な感じで
2)落ち着き払って
3)ありふれた挨拶で
4)親切心を装って
5)大人らしい態度で

おほかたなり」って「並一通りだ」って意味だよなぁ。
それでとれるのが3しかない。語彙優先。
でも、それがわからなかったら「おほかた・・・大きくなる?大人?」とか「おほどか?おおらか?落ち着き?」みたいに迷っちゃうかも。
ここまでは、ちゃんと勉強してきたらわかる問題。とてもスムーズ。

■問2(約2分):文法問題かと思いきや読解問題だったっていう

問2 傍線部A「つつましき御思ひも薄くやありけむ、なほひたぶるにいぶせくてやみなむは、あかず口惜しと思す」の語句や表現に関する説明として最も適当なものを選べ。

あーここの長めの傍線部か。
これはパッと見る→「文法的に間違っているもの」を先に消す→読解で消す、の順がいいんだけど・・・
でも、パッと文法で消せるのって

4)「やみなむ」の「む」は意志の助動詞で・・・

1個しかない!(やみなむは、だから文中の「む」で助詞が続くのは「仮定」のことが多い)
あとは読解かぁ・・・そうなると、一文を訳すのが早いな。

えーと、直訳は「つつしんだ方がよいという御気持ちも薄かったのだろうか、やはり一心にモヤモヤして終わってしまうとしたら、満足できずに悔しいと(院は)お思いになっている」だから・・・要は「妹への思いは抑えきれなーい!」っていう院のモヤモヤしたお気持ちメインってことか(意訳)。

それでいくと、

1)「つつましき御思ひ」は・・・兄と対面した斎宮の気持ち・・・
2)「ありけむ」の「けむ」は・・・斎宮の心中を院が想像している・・・
5)「あかず口惜し」は・・・院が斎宮の態度を物足りなく・・・

斎宮のことに言及してるこれらは違って、

3)「いぶせくて」は、院が斎宮への思いをとげることができずに、悶々とした気持ちを抱えていることを表している。

という、この一文の核となる部分に触れている3が圧倒的に正解。

■問3(約1分):読めていれば分かりやすい選択肢

問3 傍線部B「せちにまめだちてのたまへば」とあるが、このときの院の言動についての説明として最も適当なものを選べ。

おお。これは傍線というより、傍線前の言動含めて聞いているのね。
ええと、「斎宮に気持ちを伝えたい!今がチャンス!」って真剣に言ってる場面だから・・・

4)この機会を逃してはなるまいと、一気に事を進めようとしているところに、院の性急さが表れている

かなぁ。
ただ、この「一気に事を進めよう」「院の性急さ」って部分が一歩踏み込んでいそうで気になるけれど、それ以外の選択肢は

1)二条と斎宮を親しくさせてでも・・・
2)恋心を手紙で伝えることをはばかる・・・
3)自分の気持ちを斎宮に伝えてほしいだけだという言葉に・・・
5)自分と親密な関係になることが斎宮の利益にもなるのだ・・・

明らかな間違いがあるから、「4」が取れるな。

■問4(約5分):恒例の話し合い始まった・・・って、全4問で終わり!?

問4 次に示すのは【文章Ⅰ】【文章Ⅱ】を読んだ後の、話し合いの様子である。(割愛)

出た出た、話し合い。
おお、話し合いで1ページ使ってるなぁ。

・・・? あれ?
問4(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)、で終わり? 全4問?!

そうか、本文が長いから、問題数としては絞ってきたのか。そういえばリード文にも書いてあったっけ、「後の問い(問1~4)に答えよ」って(全然気にしてなかった)。
選択肢も、現代文の傾向と同じで4択だもんな。4分の1の確率か。

で、なになに?会話の空欄に入れる文章か。

(ⅰ)の流れ(※わかりやすく改変)
生徒A:【文章Ⅱ】のほうが臨場感あるなぁ。
生徒B:確かに、院の様子なんか[ X ]。

あの院か。これって

1)いてもたってもいられない院の様子が、発言中で同じ言葉を繰り返しているあたりからじかに伝わってくる

あの「いかがすべき、いかがすべき(どーしよどーしよ)」とか「導け、導け(連れてけ連れてけ)」よな。なんだか古文であまり出てこないから印象に残ってた。
最初の1がピシッとハマる。
確認程度に他も見るけど、大丈夫そう。

(ⅱ)生徒C:ほかに、二条のコメントが多いところも特徴的だよね。[ Y ]。普段から院の側に仕えている人の目で見たことが書かれているっていう感じがあるよ。

次は、二条の見方。
これも

1)3行目「いつしかいかなる御物思ひの種にか」では、院の性格を知り尽くしている二条が、斎宮の容姿を見た院に、早くも好色の虫が起こり始めたであろうことを感づいている

という最初の選択肢がハマるなぁ(1,1と続くと怪しく思っちゃうけど・・・)。

特に、空欄後の「普段から院の側に仕えている」という部分から、院の性格と関連することに言及する選択肢が当てはまると考えられる。

よし、(ⅲ)にいこう。

(ⅲ)教師:(文章Ⅰは物足りないという生徒に対して)文章Ⅱは「歴史物語」で、当事者の視点から書いた者ではないということに注意しましょう。
生徒B:そうか、書き手の意識の違いによってそれぞれの文章に違いが生じているわけだ。
生徒A:そうすると文章Ⅰで[ A ]とまとめられるかな。
生徒C:なるほど、あえてそういうふうに書き換えたのか。

へぇー。おもしろいやり取りだなぁ。
実際、同じ場面を描いていても「歴史物語」はそっけない感じがするもの。
でも、それはそれで必要な文体というのもわかる。そのあたりを分かりやすくまとめた会話だな。

でも2つの文章をまとめつつ、文章Ⅰの話をしているものを選ばないといけないから、選択肢を順番に見ていくのがよさそう。

1)院への斎宮への情熱的な様子を書きつつも・・・高圧的な一面を削っている

いや、文章Ⅰも高圧的だよね(二条に対して「せちに申され」てる)。×。

2)・・・複雑に絡み合った三人の恋心を整理・・・

いつから三角関係になったんや。×。

3)院が斎宮に送った、いつかは私になびくことになるという歌・・・

いや、「知られじな」の歌は「私(院)はあなたに恋に落ちた!!」ってラブレターだよな。×。

ということで、

4)院の発言を簡略化したり、二条の心情を省略したりする一方で、斎宮の心情に触れているのは、当事者全員を俯瞰する立場から出来事の経緯を叙述しようとしているからだろう

この4が正解(実際、発言は簡略化されているし、二条の心情も省かれている。斎宮は最後のあたりに「いと心憂し」とお思いになっているから、内容もバッチリ)。

■総括:本文の読解に時間が必要。問題は問4に会話文があるけど、設問自体は4択メインで標準的

ということで、解き終わりました!

所感としては

●本文やや難:文章量が多め(あと内容に引く・・・)。でも恐れずしっかり読む!
●設問は標準:基本的に傍線部前後の読解がカギ。問4は特徴的
●選択肢は5~4に。見比べやすくなった印象
●問1は語彙力で解ける。古文単語大事っ!
●問4の会話文は文章の歴史的性格まで抑えている興味深い会話。勉強になる!

というところでした。
皆様、いかがだったでしょうか。

受験生のみんなー!!がんばってねーー!

(↓↓↓ちなみに去年の速報はこちら↓↓↓)



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