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金八先生に叱られちゃう? 腐った沖縄そばの方程式|Report

巷では、紅麹べにこうじまたは紅麹菌がすっかり悪者になっているね。紅麹サプリの摂取による副作用が原因なのだが、これは広い意味での食中毒ともとらえられる。

沖縄では豆腐餻とうふように使われる紅麹だけど、麹そのものが有用なカビからなる発酵食品で、味噌や醤油、日本酒なんかもその恩恵物だから、ものは使いようなわけだ。悪いのはサプリ商品化したことだから、くれぐれもそのへんを履き違えないでほしいと思う。

さて、ラーメンは熱い料理のため、食中毒の危険は少ないと考えられがちだが、実際にはたびたび起こっている。主に衛生管理や調理方法、化学物質の混入が原因で、麺やチャーシューの加熱不足、ネギや炒飯など作り置き食品の衛生管理ミス、食品添加物や殺菌剤などの過剰使用などの例が報告されている。

大腸菌O157やノロウイルスによる感染もよくある出来事だが、それ以外の代表的な細菌をまとめてみよう。

  1. サルモネラ菌
    サルモネラ属の菌は様々な動物の体内に生息し、通常8~48時間の潜伏期間の後に悪心や嘔吐が起こり、その数時間後に腹痛や下痢などの症状が現れる。主な原因食品は非加熱及び加熱不十分の鶏肉やその加工品であり、不適切な保存や加熱不足による増殖がみられる。

  2. ウェルシュ菌
    ヒトや動物の大腸内常在菌で、100℃で1~6時間の加熱にも耐える。別名「給食病」とも呼ばれ、カレーや煮込み料理など大鍋で大量に調理され、作り置かれていた食品を原因とした事故発生例が多い食中毒である。腹痛や下痢などの症状が現れ、まれに重症化することがある。

  3. カンピロバクター菌
    カンピロバクター食中毒の主な原因食品は生の状態や加熱不足の鶏肉であり、調理中の取扱い不備による二次汚染によるものが多い。感染すると、下痢、腹痛、発熱、頭痛、悪心、嘔吐などの症状が現れ、下痢の回数は1日に数回から10回以上の激しい場合もある。

ラーメンで食中毒が起こるということは、沖縄そばでも起こりうるということだ。例によって、古い記事を紹介する。

袋に“曜日”を記入/ソバ中毒 長くおいて変質

那覇保健所は、さきに発生したソバの集団食中毒の原因について調査を進めていたが、8日、ソバの変質腐敗によるものとわかった。
ソバは1日につくり、あついままビニール袋につめて行商人が配達に出たが、1日夜は行商人が家にもち帰り、翌2日小売り店に配達した。その時小売り店にも前日のが残っており、その上に2日もってきたソバを重ねて売っている。そのため下にあったソバは36時間、上のソバは26時間それぞれ経過しており、ソバはすでに変質していた。<後略>

1961.11.10 沖縄タイムス

肝心の食中毒の症状を書いた記事がみつからず、これだけだと原因がどの細菌なのかわからない。私はウェルシュ菌が怪しいと思うのだが、ここには挙げなかったセレウス菌かもしれないし、それ以外の菌や交差汚染(例えば生肉に触った人が別の調理済みの食品を扱うと、生肉についていた菌が移動して調理済みの食品を汚染してしまうこと)が原因だった可能性もある。

この事件に対して、これは生麺であって乾燥麺ではないですよ、と風評被害を避けようとする広告記事が掲載された。原因究明より早く、事件の2日後という実にすばやい対応だった。冷たいようだが、これが商売の現実だ。

そば集団中毒事件について

11月4日夕刊に掲載の真和志におけるそば集団中毒事件はゆでそばであり乾燥そば(乾燥麺)ではありません。戦前戦後をとおして乾燥そばで中毒事件を起こした例はまだかつてありません。
吾々乾麺組合員は益々品質の向上を図り消費者の皆様に奉仕する所存でありますので今後共ご愛顧賜りますようお願い致します。
1961年11月6日/沖縄乾麺工業組合/組合員名(筆者注:以下社名工場名のみ)オキコ株式会社 沖縄食糧株式会社 町田製麺工場 玉城製麺工場 沖縄製麺工場 マルタケ製麺工場 小波津製麺工場 丸三製麺工場 国吉製麺工場 屋宜製麺工場 金宮製麺工場 丸一製麺工場 丸平製麺工場 武原製麺工場 丸山製麺工場

1961.11.06 沖縄タイムス

冷蔵庫など珍しかった頃の昔のそば屋は、おそらく食中毒も日常茶飯事として起きていただろうが、ひょっとしてその頃の市民の胃袋は頑健で、腸内には細菌を食べる細菌がたくさんいたりしたのかもしれない。

こら松浦! 加藤は腐ったミカンなんかじゃない。このバカチンが!

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