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台湾映画LOVERのつぶやき【その1】台湾ニューシネマって知ってますか?

私は官能的すぎるものとスプラッター以外なら新旧、国籍を問わずなんでも観ます。大体年間200本って感じです。そんな中2021年に台湾映画に目覚めたのは映画人生で大きな出来事でした。
ここでは「これを知ると台湾映画の観方が変わる」台湾映画史や、私が観た台湾映画の感想を書いていきたいと思います。

台湾映画を語るときにスルーできない「台湾ニューシネマ」

今でこそ台湾映画界の巨匠になってしまったホウ・シャオシェン監督や早逝したエドワード・ヤン監督たちが1980年代から90年代にかけて作った時代を「台湾ニューシネマ」と言います。
この時代は1980年初頭から戒厳令解除までの改革派vs保守派がせめぎ合う台湾政治情勢を背景に誕生しました。

彼らの作品は難解だったり哲学的だったり、決して明るくない自国の過去を扱っているのが特徴です。それゆえに国内での一般受けは悪く、短い期間で終わってしまったのですが、海外では評価が高くさまざまな賞を受賞しています。今でも「台湾映画が一番輝いていた時代」と評する人も多いのです。

「悲情城市」

予告↓

幸せなことに私と台湾映画との出会いは台湾ニューシネマの旗手の一人、ホウ・シャオシェン監督の「悲情城市」でした。

1945年に50年の日本の統治下にあった台湾が、本土から追われてきた中国国民党の支配下になり、1947年の二・ニ八事件を経て文化人の弾圧、いわゆる「白色テロ」に至るまでの数年を一つの家族を通して描いた胸が締め付けられる傑作です。

トニー・レオンが台湾語を話せなかったため、口のきけない設定で主人公の青年を演じたのは有名な話ですが、彼の目で語る演技がこの作品でブラッシュアップされたと私は思っています。

この作品に出会うまでは台湾の近代史に全く興味がありませんでした。この一作で人生を変えられたと言っても過言ではありません。これこそ映画の持つパワーと言えるでしょう。(*残念ながらDVDのセルオンリーです)

「牯嶺街(ク-リンチェ)少年殺人事件」

予告だけでも観て欲しいです↓


エドワード・ヤン監督もまた、台湾ニューシネマの旗手の一人です。

彼の代表作「牯嶺街(ク-リンチェ)少年殺人事件」も美しく切ない作品です。(是枝監督はこの作品の中のワンシーンを観て映画監督になることを決めたと言ってました。)

中国国民党の支配下での外省人(本土から台湾に移住した人々)の焦燥感や不安、内省人(元々台湾にいた人々)との軋轢を少年たちの目から描いた、例えるなら静かな炎のような作品です。

1960年代初頭の台湾での実際の未成年による殺人事件を題材にしています。
当時の台湾は戒厳令下であり、台湾政府が知識人や反体制派に弾圧を行った白色テロの時代です。

台湾の現代史を勉強してようやく、日本人の私は映画のメッセージを受け止められました。切なくて苦しくて涙が出ました。

外省人であるチャン・チェン演ずる主人公の少年や彼の家族が追い込まれていく様、どんなに抗っても誰一人として時代に勝てないその姿はただただ苦しく哀しい。

14歳という時期ならではの全能感ゆえに、想いを寄せ守ろうとした少女にも、時代にも突き放された主人公の心持ちは私の想像を超えるものだったに違いありません。

ただひとつ確信できるのは、あの時代に生まれなければ少年はこの事件を起こさなかったということです。プレスリーの歌がこんなに悲しく聞こえる映画を私は他に知りません。

*【その2】では台湾ニューシネマ以降の台湾映画たちについて書きます。





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