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#09 農家、食品加工に参入!

食品加工業にチャレンジすることになった。
ご縁があって小規模の加工場を機械設備ごと賃貸できることになったのだ。
生産規模は大幅に縮小しているものの、直近まで製品の製造を継続しており、製品レシピを含めてお譲りいただくことになった。

主力製品はドレッシングとみそ加工品。地元で採れる金ごまを使用したドレッシングだ。ごまは栄養価が高いのに国内で消費されるうちの99.9%が輸入品だそうだ。国産金ごまのドレッシング、それも無農薬。これはぜひチャレンジしてみたいと思った。

金ごまドレッシング製品ラインナップ

マーケット・イン型の6次産業化を目指したい

農業法人として事業拡大、存続を目指すには、6次産業化は不可欠だと考えている。元々農家出身でもないし、製品開発の方が栽培よりも慣れているといえば元も子もないが、食品加工を手掛けることには何の抵抗もない。
当たり前といえばそうなのだが、加工による高付加価値化を目指すにあたって自分の栽培する農産物の加工をするのが一般的だ。今回、加工製品のレシピを承継させていただくことで、当社の食品加工は通常とは逆のアプローチをとることになる。「逆のアプローチ」とはつまり加工製品ありきで、将来的に当該製品が売れてくれば、自社でその原材料を栽培することができるというアプローチだ。もし当該製品がしっかり売れれば、原材料の栽培を行っても、農産物の販売リスクはなくなるし、本来の意味での付加価値化が可能になる。
今回の加工食品事業を軸に当社の様々な事業展開を検討していくことで、当社なりのマーケット・イン型の6次産業化を果たしてみたいと考えている。

「地産地消」「地域活性化」の願いも承継したい

譲渡者である会社は、これまで金ごまに限らず製品の原材料は限りなく地産のものを使って製造していた。地域経済のために農業を支援したいという社長の強い思いからだ。また他の事業においても、過疎化が進行する町に移動販売車を走らせ、移動手段を持たない高齢者世帯の買い物をサポートしているのだ。「全然儲からないよ」と笑顔で言っていた社長ももう高齢者の範疇。なんとか一緒にこの地域を盛り上げていきたいという気持ちにさせてくれる。
食品加工事業が当社に移管されても、地産にはこだわっていきたいし、無添加食品など食の安心・安全にも貢献していきたいと思っている。金ごまの生産部会員数も減少し高齢化しているそうだが、ここにも貢献してみたい。「ごまなんか作っても儲からないよ」と失笑されそうだが、果敢にチャレンジしようと思っている。
ごまに限らず将来は原材料である玉葱、人参、白ねぎなど地元の方から購入させていただくか、自社での製造を手掛けていき、地元の農産物を使った加工食品を地域で、そして地域外で拡販していくことで、前任者の地産地消、地域活性化の願いごと承継していきたい。

一次産品は地産地消、加工品は広域流通

以前から農産物を広域(のみ)で販売することに大きな疑問があった。もちろん広域流通は地域の需給の差を埋めるのに貢献するわけだが、広域流通一辺倒では流通コストがかさんでしまうし、新鮮さが保てない。なんとか一次産品の効率的な地場流通が実現できないかと考えていたし、いまも引き続き考えている。

今回、新たな「加工場」という拠点、リソースを手にすることになって、おぼろげながら上記の広域流通への疑問が自分なりに消化されつつある。
農業者として栽培した一次産品、特に葉物野菜などは鮮度が大事なので、県内の道の駅、産直などでの販売や地域の飲食店などへの直販通じて地場流通を実現する。一方で、広域には農産物のブランディング化か加工による高付加価値化によって相対的に流通過程でのコスト負担を低減することで、地域農業の貢献を図っていく。

当社なりの地場流通と広域流通のベストミックスを自ら探ること。
なんとなく目指す方向性が見えた気がした。

課題は解決するためにある、と思いたい

未経験ゆえ、食品加工事業としての課題は多い。
まずは製造だ。私には食品加工製品の製造経験はない。もちろん製造してくださる方を継続雇用するので製造に関わる作業への心配はないが、生産規模の縮小とともに現状は損益分岐点売上を大きく下回っているので、製造ロットの拡大による限界利益率の改善が喫緊の課題だ。
設備も限定的で省力化されているとは言い難く、生産には相応の人手を要するため、当面は増員で対応するが、徐々に機械を導入していく必要がある。生産プロセスとにらめっこをしながら、どの製造プロセスへの投資を優先するかを決めていくことになるだろう。

私自身が精力的に取り組むべき課題は営業だ。
営業は、農産物の栽培よりも得意だ(といっても、いまは農家なので、威張って言えることではないが)。現状は道の駅や産直が主な販売先なので、潜在的な販売先をリストアップを行った。製品をリニューアルしたらすぐに営業に取り掛かりたい。
道の駅などの小売店以外のターゲットは、地域の飲食店だ。
大分県はそれほど人口は多くはないが、おんせん県なので多くの観光客が来る。旅館などの宿泊施設やその近隣の飲食店にも時間の許す限り直接営業をかけたいと思っている。

ドレッシングを販売することで地場の農産物の消費を増やしながら、地域の飲食店などとの販路、取引ができたら、将来そこに地域の農産物も売り込みたい。そうして結果的に地場流通が確立できたら・・・

まあ現実はそんなに甘くない。でも夢があっていいじゃないか、と我ながら思う。
多くの地域の農家の期待を(勝手に)背負って働く、一農家でありたい。

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