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#05 私が農協について思うこと

農協は農家の期待に応えていない

私は、農協という組織は好きではないが、個人事業主である零細規模の農家が多い現状では、必要な存在だと思っている。
私もよく農協を公然と批判するが、批判するのは良くなって欲しいと願っているからだ。若い農協のスタッフにはもっと頑張れと叱咤激励している。
農協はそもそも農家がつくった協同組合なので、本来的には農家が批判すべきではないかもしれないが、組織が大きくなりすぎて、一組合員の意見などなかなか通らないのも事実だし、組合員であっても農協の目指すところがよく見えてこない。
農協の目指すところがみえてこないのは、組合としての意思決定のあり方(一組合員一票なので意思決定が遅くなる)に原因があるという人もいるが、それも経営者のリーダーシップ次第であるような気がする。

いずれにしてもいまの農協は農家の期待に充分に応えられていないように思う。いまの農協に満足している農家はどれくらいいるのだろうか。

営農にもまだまだやれることがある

儲からないとされる営農部門でもまだまだやれることは多いのではないかと思っている。
私が地域農協が取り組んで欲しいこと。
(1)地域における農産物の販売強化
直売所の運営などすでに農協が手掛けている事業ではあるがもっと強化し、地産地消を増やすためにその流通まで出掛けて欲しい。
(2)新規就農者への新しい支援サービス事業
農協のネットワークやノウハウを使って、法人を含めた新規就農者へのサービスメニューを拡充して欲しい。例えば、離農者の生産設備の買取を行って新規就農者へ中古販売やリーシングを行うといった事業であったり、農機具の販売ではなく、レンタルやシェアリングなどの新しい形態による提供サービスなどが考えられる。トラクターなど大型で高額な設備を使った作業請負なども新規就農者にとっては嬉しいサービスだ。
(3)人材事業
外国人技能実習生や特定技能者の活用が農業でも増えてきているが、農業や漁業などの一次産業では技能実習生の派遣も認められている。収穫時にのみ人材が欲しい農家にとっては、派遣の形態でしか活用できないが、派遣会社に依頼するとかなり高コストになってしまう。地域の農協であれば、作業請負が許されているので、地域の複数の農家とうまく時期の調整ができれば、派遣会社を利用するより安価に活用できる可能性がでてくる。
また、外国人に関わらず、リタイアした農家の小遣い稼ぎのアルバイトを紹介するというニーズもあるのではないかと思う。働く側にとっては年金に加えて少しお小遣いがあればうれしいだろうし、雇う側にとっては経験者が必要な時期に雇える。実際に当社も離農した高齢の方に働いてもらっている。
こうしたサービスに一番近いところにいるのが地域の農協なのではないかと思うのだ。

地産地消の推進力に

農業を始めるまで知らなかったのだが、農協の組合員の農産物はほぼ農協が取り扱っているものと思っていた。実際は生産者の意向や栽培品目の多様化などで農協の選果場・集荷場で取り扱っていない農産物は多い。
農協と取引をしない、できない農家は、自らが生産した農産物を直売所などに持ち込むのだ。
いまや農産物の直売所は至るところにあって、消費者の生活を支えている存在だ。農家にとっては、農協との共販に頼らずとも、一度の収穫量が小さいものは、複数の直売所と取引をすれば十分に捌くことができる。

直売所の市場規模についてレポートがあったので、古いデータだか下記を参照いただきたい。すでに大きな市場となっている。

まず、直売所の市場規模について見てみよう。農林水産省(以降、農水省と記述)が平 成21年度に実施した農産物地産地消等実態 調査の結果によれば、全国の直売所の数は 16,816店舗であり、年間総売上高は8,767億円である。直売所の店舗数は、日本全国のセブンイレブン15,307店舗1) よりも多く、その年間売上高は、ライフコーポレーション 5,199億円2) よりも大きいのである。さらに 上記の8,767億円の売上のほとんどが生鮮農産物、もしくは農産加工品でもたらされてい るとすれば、食料品スーパーの売上に占める 農産物の割合は一般的に30~50%程度であるため、実質的に農産物の販売における直売所のシェアは売上高1兆円~2兆円規模の大手流通業(イオンやイトーヨーカ堂)に匹敵する規模であると考えることもできるだろう。

出典:公益財団法人流通経済研究酒 主任研究員 折笠俊輔氏「農産物直売所の特徴と課題」

多くの農協は、事業として直売所の運営を行っているが、個人的には、これにもっと経営資源を集中させて地産地消にもっと貢献してもらいたいと考えている。できれば、さらに踏み込んで自ら流通まで手掛け、新鮮な農産物を地域の直売所だけではなく、必要とする宿泊施設や飲食店などへ提供し、BtoB事業にも積極的に取り組んでもらえたら心強い。農家が自ら複数の直売所に配送するのはかなり手間だし、大分県にもあまり利用されていない農協の集荷場が存在するが、こうした集荷場の再利用にもつながる。
地産地消、効率的な地場流通の構築は、全農が行う広域流通の輸送コスト軽減にもつながると思われる。広域流通と地場流通のベストミックスをオール農協で実現するという壮大な計画にチャレンジして欲しいと願っている。

おんせん県大分における地産地消の可能性

日本の観光業はインバウンド(訪日外国人)の増加により大きく変わった。同様に宿泊施設も従前の一泊二食スタイルから「泊食分離」型に変わってきている。
では、宿泊施設が夕食を提供しなくなると何が変わるのか?
旅の大きな楽しみのひとつである「食」、その提供という重責を地域の飲食店が旅館に代わって担うことになるのだ。こうした飲食店などに対して新鮮な地域の農産物を提供することで、これまで旅館などが担ってきた役割を飲食店と農家、農協を含めた地域全体で果たし、観光客に滞在魅力としての「食」を提供することが可能になる。
観光と一次産業をつなげ地域がひとつになって「食」を提案することで、無駄な配送、流通コストがなくなるだけではなく、あらたな県のファンつくりにつながる可能性もでてくると思っている。
こうした取り組みに農協が果敢に取り組んでくれれば一生産者としてはぜひとも協力したい。

もっとガバナンス、もっとコンプライアンス

私が、農協に一番期待というかお願いしたいのが、普通の会社、組織のようになって欲しいということ。社会の変化とともに会社や組織を取り巻く経営環境は大きく変わってきているが、農協のそれは一般社会と大きく断絶しているようにすら感じられる。
大分県農協では、役職員などの関係者による不祥事、不正が続いている。会社なら、経営者がメディアの前で深く謝罪し、場合によっては減俸、辞任に追い込まれることもある。なぜに農協はそうした不祥事が短期間の中で繰り返されるのか?

巷間よくいわれることだが、農協には独占禁止法が通じないことが多くある。取引先に見積もりを依頼すると農協経由でないと見積もりできないと断られたり、生産部会を通じて農協以外の他社への販売を事実上禁止したり、日常茶飯事だ。パワハラ、セクハラの類と同様で、「昔からやってるから大丈夫」とでも思っているのだろう。
考えてみれば、農協からの入金も農協の口座に入金される。私は以前他の銀行への入金を依頼したが「農協からの入金は農協でないと受け取れません」と平然と職員がいう。終いには「新規就農者だからわからないと思いますが」と自らの常識を押し付けてくるのだ。

農協だけ時間が止まっているかのように、取引先に農協の都合を強いる、そんな農協であっては何も新しいことにチャレンジできるとは思えない。
地域の農協が、今後も地域農家とともに永存していけるように、農協にも自ら変わっていってもらいたい。

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