伸びねこ選手権
ある日曜日。ウチの猫が朝からずっと熱心に伸びを繰り返しているので、
「どうしたのか?」と僕が尋ねると、
「今度、『伸びねこ選手権』があるからそのための練習をしている」とのこと。
そう言いながらもずっと伸びを繰り返していて、とても忙しい。
見ていて改めて、猫ってカラダ柔らかいなと思ったりする。
「伸びねこ選手権てどんな大会なの?」と僕が聞くと、
「全国から伸びねこの猛者達が集まり、もっとも猫らしい伸びを見せたものが伸びねこ王になれる大会だ」と教えてくれた。
今回、『二十二世紀枠』に入れて初出場するのでとても張り切ってるんだそうだ。
いつも休日は“かまってかまって”とうるさいウチの猫が、いざ何かに没頭してしまうと、なんだか寂しくなって、いろいろちょっかいを出してみたら、
「伸びの邪魔だけはしないで」とピシャリだ。
仕方なく僕はリビングの隅で(ウチの猫が中央で伸びをしているので)ねこのゲームをして過ごした。
1週間後。
伸びねこ選手権当日。
空も晴れ渡っている。開催の合図の号砲も聞こえる。
もちろん僕も応援に行くつもりで、早く起きて運動会の準備みたいな感じのは一応ひと通り済ませた。
もしかしたら飼い主の柔軟性も試されるかもしれないと思い、この1週間僕もストレッチしまくった。
あとは本番でウチの猫が力を出し切るだけだ。
ところが、
そろそろ出かけなきゃ行けない時間になってもなかなかウチの猫が部屋から出てこない。
様子を見に行くと、
なんと、ふて寝している。
「せっかくここまで伸びを頑張ってきたのにどうして……」と僕が尋ねると
「近所のガキんちょに『伸び太』というあだ名をつけられたからだ」と教えてくれた。
猫にとって『のび太』というあだ名ほど屈辱的なものはないんだそうだ。
確かにそれは理解できなくもない。
しばらくはそっとしておいたほうがいいかなと思っていたら、
切り替えの早いウチの猫は
早くも次の『毛繕い選手権』に向けて猛特訓を始めた。
終
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