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私の中の貴女、或いは、貴男

昨年12月に発売された二村ヒトシ氏と燃え殻氏の対談本を読む。

二村ヒトシ氏といえば、アダルトヴィデオの監督であるが、ベストセラー作品の、『すべてはモテるためである』や『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』の著者である。

所謂モテ本というやつで、然し、内容としては二村ヒトシ氏が提唱している『心の穴』理論が語られている本であり、別にこうしたらこうしろ!的な恋愛指南が書かれているわけではない。
そういう、ナンパに関しては、『タクシードライバー』のトラヴィスを参考にするといいだろう。

さぁ、スーツを来て髪を決めたら、彼女の職場に直接出向いて、仕事中の彼女を映画に誘うんだ(ヤバすぎだろ……。やっぱドラヴィス・ビックル、26歳、頭沸いてんな。)

上記の本では、自己受容に関しての説明が延々と描かれており、自らの「心の穴」を自覚し、それを埋めるためには本来的には自己受容こそが大切であって、その「心の穴」を自覚しない限りは、男女どちらにせよ気持ちの悪い存在である、的なことが書いてある。
自分の抱える空洞を自分で自覚しないことには、その空洞を埋めるために異性を利用し、お互いに不幸になるというのだ。

どちらかというと、心理学的な話であり、まぁ読めば身に覚えのある話がたくさん出てくるだろう。

で、二村ヒトシ氏が著作の中で、男性の中のいる女性、と書いているように、男性の中には女性がいる。二村氏は、「ふたなり」ジャンルを確立させたとか紹介に書いてあるが、ふたなりとは二形であって、両性具有である。
まぁ、アダルトヴィデオでは女性が○○○をつけて交情に励んだりするわけだが、このジャンルを描くように、男性には確実に女性としての一面が心の中にあるわけである。


男は誰しもが美少女になりたい。これは最早、永劫普遍のことであり、「いや、俺はそうじゃないよ。」という男性は、哀しいかな、覚醒していないのである。或いは、恐れているのである。

美しい少女たち、アイドル達に真の意味で嫉妬しているのは男性方であり、彼女らの煌めきや美しさに、ハマるのもそういうことである。

私は、『心の穴』理論はよくわからないが、この、男性の中の女性という重要なアフォリズムにより二村ヒトシ氏の本は好きなのである。

二村ヒトシ氏の著作はたくさん出ていて、基本的には『心の穴』理論を持ってして、セックスと恋愛を絡めた上で少女漫画や映画作品を語る、というものが多いが、二村氏は多分に自身の中の女性性が強い人なのだと思われる。

つまり、映画や文学、漫画などの物語作品を紐解く時、それらを詳らかにするときに、男の中の女、女の中の男、という、両性具有の形而上学は物事の根本に関わってくることだからである。

映画に関しても、完全にサブカル方面であり、秘宝系寄りの映画ファンと同系統なので、そちら側の映画好きは読んでも損はないかもしれない。

つまりは、オタク、というものは繊細であり、自分の中の女性たちに、ひどく怯えていながらも、誰よりも自覚的なのである。


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