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久方ぶりの絵画

久方ぶりに絵を購入した。

それも20号もの大きさの絵である。
とても愛らしくオシャンティな絵なので大変気に入っている。
私は絵はたまにしか買わない。欲しい絵じゃないとフィーリングが弾けないのである。それに基本的は高いし……。

今回購入したのは大月雄二郎氏の作品で、私は大月雄二郎氏の作品が好きなのである。

私が大月雄二郎氏を識ったのは、氏が多くの作品で稲垣足穂をフィーチャーしているからであり、昨年の6月、神戸のギャラリーロイユで足穂のオマージュ展が催されていて、そこでも大月氏の作品がドドン!とたくさん置かれていた。実際には静謐な画廊のため、静かに佇んでいる感じだったが。

このときに置かれていた『キネマの月』は880,000円もするなんとも巨大な作品だったが、これはまぁ、画廊や個展で売られているからだろう。
私が今回買ったものはそれよりも大分小さく、かつ流れてのものなので、それよりも圧倒的にお値打ち価格だった。
とはいえ、20号の絵、巨大である。なかなか家に掛けている人はいないだろう、っていうレベルの壁を専有する絵である。

無論、『キネマの月』は素晴らしい絵で、その価格だけの価値はあるだろうし、もっと高くても不思議ではない。
あれは何号くらいだったが、80号とかくらいの巨大な作品だったような気がする……。

ちなみに大月雄二郎氏はフランス在住であり、フランスの芸術文化勲章シュバリエを授かっている。
シュバリエ(騎士)が3等、オフィシエ(将校)が2等、コマンドゥール(騎士団長)が1等である。
シュバリエは高橋留美子、鳥山明、永井豪、谷口ジロー、松本零士、仲代達矢、宮本茂、平野啓一郎、森山大道、濱口竜介などが受勲していて、コマンドゥールになると、蓮實重彦、安藤忠雄、岸恵子、村上春樹、とかになる。

なので、村上春樹は2017年に『騎士団長殺し』を上梓して、そして2018年に見事コマンドゥール(騎士団長)の称号を授かるわけだ。
然し、私は、未だ村上春樹の作品は一度も読んだことはない。でも、時々読んでみようかな、という思いが去来することもあるのだが、やっぱり読まない。読んじゃ負け!ってなもんで(何に負けるのだ?)、いや、読んだほうがいいよ!という自分もいるが、まぁ、村上春樹の読者は日本だけでも何百万人もいるので、私が読む必要性は何一つないのだ。

ともかく、絵、というものは、これもまた、手に入る時には手に入れるべき、そのような僥倖を孕んだものであることは間違いない。これは古書と同様なのであーる。
例えば、同様に足穂作品の文庫などの装丁を手掛けている建石修志氏の作品なども魅力的で、たまに十数万円〜数十万円で市場に出ることもあるが、高嶺の花なのでやっぱり買えない。で、いつしかそこからも消えて、永久に手に入らない。
リトグラフなども、芸術作品としての評価は高いが、どこまでも複製品である。やはり原画というのは格別なものがある。
また、美術品は高額なものが多いイメージがあるが、絵画で肉筆でも数万円前後で手に入るものも多い。特に、やはり古書も同様だが、業者が売るときは10万円でも、個人ではそのままの価格では捌けないため、一気に2万だとか3万円で安売りされることも少なくない。
なんでも鑑定団での100万円の価格は、あくまでも評価額であって、実際にそれを個人間で取引すれば、半額でも売れない可能性も高いだろう。

ところで、大月雄二郎氏の御息女がオーナーを勤めるバーが福岡にあり、その名もずばり、『キネマの月』というのだという。

この店内には実に素晴らしい大月雄二郎氏の作品がたくさん壁に掛けられていて、一度行ってみたいなぁ〜、などと、夢想するのだが、下戸の私には叶わない夢だ。まぁ、別にお酒が呑めなくてもいいんじゃないの、という思いもあれども、やはりバーはお酒を呑んでなんぼ、な気がするのである。

まぁ、私は絵と文章で酔えるから、今回の大月雄二郎氏の作品ゲットには本当にホクホクである。


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