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私の二次創作

部屋を掃除していると、自作を書く参考のために購入した古雑誌の『律』第3号が出てきたので、パラパラとめくった。

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塚本邦雄の夏至物語が載っていて、欲しかったやつである。
『少女ふたばよりかんばしくかなかなの唖刺し殺す夏至物語』という短歌が
そのうちの一首にあって、私は心惹かれていた。

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『律』には様々な短歌や評論が記載されていて、所謂前衛短歌というやつで、これは通常のものとは異なる。塚本邦雄、岡井隆、寺山修司がその代表格である。この『律』にも、岡井隆が新人に対しての長文を書いていて、毒を吐いていた…。

前衛短歌は、例えば、この本にも掲載されている、歌人の春日井健の『叙事詩・雪埋村へ…』なんかは、兄弟が雪深い村へと向かう物語を短歌で紡いでいる。それはこんな感じで、

訪ねあてて行くべき人はまた村は雪閉ざす駅のむかふか知らず

きみとわれと雪つむ道にのめりこみ助けあひつつ村訪ねゆく

膨れくるは悲哀か雪かさだかならず雪だるま茫然と転がしぬたり

君が投げし雪つぶていくつか享けし胸しくしく疼む少年の日より

銃口をこちらにむけて雪原に立つ人も道すがら見て過ぐ

など、このような短歌が延々と続き、作品世界を構成している。

私はこのような短歌は詠めないが、読むのは好きなので、塚本邦雄も好きである。

『緑珠玲瓏館』という、塚本邦雄の著作があって、これは短歌100首が
自撰されて掲載されているが、それぞれの創作にまつわる話、意味、空想が書かれている本だ。塚本邦雄は緑が大好きなのだ。

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この中の、前述の『少女〜』の要素を拝借して、そこにゲームソフト『シリアルエクスペリメンツレイン』の要素をガッチャンコさせて、話を書いた。

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『シリアルエクスペリメンツレイン』は1998年の一連のシリーズでPlayStation用ゲーム、TVアニメ、小説などのメディアミックスがされたカルト作品である。
キャラクターを描いたのは東京藝大出身の安倍吉俊さんである。

TVアニメ版は深夜に放送されていて、これはブルーレイが発売されているがまぁ、意味不明である。説明はほとんどないため、読み解きが必要となる。けれども、演出が素晴らしいので、意味不明だが愉悦がある。

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ワイヤードというネットが重要なファクターになるが、この時代はまだインターネット黎明期で、マニアや少数がインターネットを楽しんでいた、マイノリティ時代である。ネットにまつわる話が描かれた作品である。
玲音はどこにでもいる、偏在している。というのが語られるが、概念と化す、というのはネットの海における命題で、『攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL』も、それに影響を受けた『マトリックス』も、そのような話である。

私はこのゲーム版が持つ空気感が好きで、作品構成を拝借して、先の『少女ふたばよりかんばしくかなかなの唖刺殺す夏至物語』の話を盛り込んだ。
またお暇があれば読んで頂けたら幸いです。

まぁ、二次創作ではないが、すごく好きなものと好きなものをつなげた形である。私の空想には限界がある。それは才能がない、ということだけれども、様々な物語が着想になって、新しいものが模倣される。模倣であるが、その中に自分の美意識を詰め込みたい。それが私の二次創作である。意味合いは本来とは異なるかもしれないが。

ちなみに、ゲーム版は中古で30000円とか50000円くらいで取引されている。超プレミアソフトである。
攻略本も10000円前後する。販売本数が極端に少ないからだろうか、ゲーム自体も普通の人のプレイを想定していない。

普通の人は、ゲームをプレイしたら、心のどこかには置いても、それを追い求めないが、『シリアルエクスペリメンツレイン』は大いに傷をつける。そうして、25年近く経った今でも語り継がれる。

短歌も、ゲーム(傑作!)も、おすすめでございます。






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