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自分にとってリアルさが増したseason2/ドラマ『きのう何食べた?season2』

今期は続編が多い。そのなかでも特に楽しみにしていたのがこのドラマである。几帳面で倹約家、料理好きな弁護士のシロさんと、朗らかで心やさしい美容師のケンジの日常。この数年の間に、家族や友人と食卓を囲む幸せがこんなにも尊いものなのかと、私を含めて気づかされた人は多かったと思う。

何度か軽く感想を記してきたけれど、改めてここにseason2の感想を書きとめておきたい。

(以下、一部内容を含みます)


同年代だからジワジワ共感

年齢を重ねた2人は自分と同年代。老いや親のこと、職場での立場など、彼らを取り巻く環境の変化もまた重なる点が多く、視聴のたびに「私だったら」と想像してしまう。

season1のときよりも、さらに2人のいる世界とつながっている感覚になる。思い返せば、劇場版を観たときからそれは強くなっていた。シロさんが母・久栄と肉団子をつくりながら会話するシーン。血のつながりがなくても受け継がれていくものがあるんだ、自分たちは2人だけじゃないんだと、さまざまなできごとからシロさんが自覚したことを語るシーンが、今でも忘れられない。

私には子どもがいないし、甥っ子も姪っ子もいないので、実家は私たち兄弟の代で「家族終了」となる。実家は数年前に諸事情により引っ越したため、ずいぶん荷物が減って整理は進んでいるが、ドラマでも出てくるお墓や終の住処問題など、家族終了に向けて準備することは山積しているのである。

悲しいかな、歳を取れば取るほど時間はあっという間に過ぎていく。なんなの、このスピード感。ついこないだ大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の最終回を、「小四郎、小四郎……」と号泣しながら観たのに、あのときの政子が今はダメ男3人を養うスーパー万里江に転生しているし、映画館で観たコトー先生が今はダメ夫でふにゃふにゃしているんだから。(違う!) 本当に時が経つのが早すぎる。

これまでの印象的なシーンの数々

そんなわけでseason2に対しては感情移入が激しく、印象的なシーンがたくさんある。これまで、ケンジとの関係を公に知られたくないと思っていたシロさんが、season2ではマンションの管理人さんから「あの男性は筧さんの恋人ですか?」と尋ねられて素直に返答し、自然にやり取りするシーン。シロさんが元・恋人のノブさん(及川光博さん、ハマり過ぎ!)の仕打ちを思い出し、ケンジと暮らす今の幸せに気づいて目に涙をためるシーン。観た人にしか通じない話だけど、そりゃケンジと言えば「玉ねぎ」って思うよね。自分も、あの状態ですぐに玉ねぎを買いに行ける人間になりたかった……。

そして第10話。ケンジの母・峰子が急にシロさんに会いたいと言い出して催された食事会でのシーン。「他人でも身内ってことはあると思うのよ」と話す峰子のことばと、それを聞いたシロさんの表情にジーンとした。人の死は年齢順ではない。いつどうなるか分からない。それをひしひしと感じる昨今だから、余計にこのシーンは胸を打つ。

シロさんの心のなか

他にも、シロさんがケンジの健康を考えて物価高騰のなか魚料理を増やそうと決心したり、2人がお互い多忙になって一人飯が増えると、「つまんねぇな……」とシロさんが呟いたり。season2は、シロさんの心の機微が特に顕著に描かれているように思う。

彼にとって、ケンジはそもそも全然タイプじゃなかった。それがどんどん愛おしくなって、そんな自分の心の声を素直にことばで表すようになったシロさんの変化。これもケンジと過ごしてきたからなんだろうな。

やわらかな発想ができるってすごい

田渕くんと千波ちゃんカップルの変化もとても良かった。しっかり計量してつくるのに、なぜか料理の味が微妙……という千波ちゃん。それが原因で本人がすっかり自信を失くして別れに至ったのだが、田渕くんはここから逆転の発想を展開。真面目で几帳面な千波ちゃんの性格を活かして、計量が命ともいえるお菓子づくりを勧めるのである。

あんなにチャラチャラしている田渕くんが、こんな考え方のできる人だったとは。自己中心的な自分にはできそうにない……。みんながこんなに柔軟性があったら、世の中にはもっと幸せな世界が広がるだろう。

次回は、久しぶりにジルベールと小日向さん登場、そして佳代子さんのお宅についにケンジが訪問。season2もそろそろ終わりが近づいてきたけれど、最後までドラマを楽しみたい。

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