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フィリップ・K・ディック「マイノリティ・リポート」を読む4

カプラン暗殺後のアンダートンは、先述した通り、遠い植民惑星への流刑の旅に出るのだが、後任のウィットワー新長官に、事件の真相を告げる。

これはミステリの真相編みたいで楽しい。
2002年に本作を原作として映画化したスピルバーグも「ノワール」として映画化したと言っている。
そういったSFミステリ的な側面もこの作品にはある。

真相はこうだった。

アンダートンは、全てのプレコグたちの報告を見ることが出来たのだが、プレコグAがアンダートンの暗殺を予知しても、プレコグBはその予知を元にして、アンダートンらが行動を起こし、それによって変わる(アンダートンが暗殺をしない)未来を予知していたのだ。

そして、プレコグCは、Bの予知によって、再び人々が動き、それによって変わる、(やはりアンダートンが暗殺をする)未来を予知していたのだ……。

結局Cの予知通りの未来が到来したのだが、この真相によって、ディックは「未来は決してコンクリートのように固定していない」ことを描きたかったのだと思った。

それはある意味、人に不安定さと恐怖を感じさせるかもしれないが、別の意味では、人間は未来に開かれている、人間は「自由」であるといった哲学的な宣言でもある……と、私には受け取れた。

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